御器谷法律事務所

高齢者の遺産の生前の不正使用


1.問題の所在
 親が高齢者となった場合の財産の管理と相続には注意が必要です。
 親の高齢化に伴い、親自身による自己の財産の管理能力は失われていきます。そこで、子供のうちの一人が、親の面倒をみる一環として親の財産管理を行うケースがよくみられます。この場合、親の面倒をみる子は、預貯金通帳も印鑑も預かり、そこから親の生活費等を支出することになりますが、支出の都度領収証を発行してもらうことは稀であります。また、他の相続人が知らないうちに、財産を管理する子に生前贈与がなされることもあります。
 そこで、親が他界した後、遺産分割とともに生前の財産管理、特に、生前の財産の不正使用が問題となることが多くなるのです。
 遺産分割を正確に行うためには、被相続人たる親の財産を正確に把握する必要があります。そこで、親の財産を管理していた子以外の相続人らは、生前の財産管理の実態を把握すべく、領収証の提出、通帳の開示やその使途の明示等を親の財産を管理していた子に対して求めていくこととなります。

2. 預貯金の調査
 被相続人名義の預貯金通帳等を確認して、被相続人の預貯金を調査します。この場合、通帳の写しを5〜7年前くらいから求めることもあります。通帳の写しを出してもらえない場合には、預金残高証明書、取引明細表を銀行等金融機関に照会することとなります。預貯金の有無が不明であれば、被相続人の生活圏内の各金融機関に照会を行うこととなります。金融機関に照会を行う場合には、被相続人が死亡したこと、依頼者が相続人であることなどの証明が必要となりますので、戸籍謄本などを用意しておきます。
 通帳の写し等を入手しましたら、入出金の明細をつくり、各支出についての、使途を調査します。具体的には領収証の提出を求めることが多くなりますが、上述の通り、領収証は無いことも多いでしょう。また、一部、使途不明金が発生することもあります。
 このような調査結果を踏まえて、話し合い交渉を行うことになります。そして、この話し合いがどうしてもまとまらない場合には、やむを得ず、遺産分割調停に持ち込まれることもあります。

3. 遺産分割調停
 遺産分割は、あくまで、被相続人の死亡時の財産をいかに分割するかという問題でありますので、生前の財産の管理の問題は、本来の遺産分割とは異なる問題といえます。
 しかし、相続人としては、生前の財産管理の問題も遺産分割に付随する問題とはなりますので、一挙に解決したいところです。
 一方、家事調停委員としては、数回調停した後は、生前の財産管理の問題は別問題として処理したいと考えることが多いようです。

4. 生前の財産管理
(1) 被相続人の為の支出
 被相続人の生前の財産が、被相続人の生活費や医療費等、被相続人の為に支出されている場合は、被相続人の同意があれば委任関係、被相続人の同意がなくとも事務管理として、財産を管理する子が適切に支出したことになりますので、特に問題となるところはないと考えられます。
(2) 特別受益
 被相続人の生前のある程度まとまった財産が、被相続人の同意の下、婚姻や生計の資本として、財産を管理する子に贈与された場合、特別受益にあたる可能性があります。
 この場合、かかる生前贈与は、特別受益として、遺産分割調停の中で解決すべき問題となります。
(3) 不法行為・不当利得
 被相続人の生前の財産が、被相続人の同意なく、財産を管理する子が自己の為に支出したような場合は、不法行為としての損害賠償請求や不当利得の返還請求の問題となります。
 他の相続人は、被相続人の損害賠償請求権ないし不当利得返還請求権を、金銭債権として、法定相続分に応じて相続したことを主張して、財産を管理する子に対して請求していくこととなります。
 この場合は、遺産分割調停とは別個の問題として、地方裁判所における損害賠償請求訴訟で解決することになることもあります。
 そして、この訴訟においては、被相続人の生前の収支の明細、子の財産の管理状況、使途の立証、領収証の有無、被相続人の意思の推認、子の生活状況等が問題となることが多いでしょう。
(4) 使途不明金
 使途不明金は、被相続人の死亡時に存在する財産ではないため、原則として遺産分割調停ではこれを考慮することはできず、現存する財産を対象に調停を進めることとなります。
 使途不明金については、その支出の時期と金額が明確な場合、その使途を特定できないため、ある程度まとまった財産につき相続人間で不信の原因となることもあります。
(5) 寄与分
 なお、生前の財産管理とは直接関係しませんが、親の面倒を見ていた財産を管理する子としては、寄与分の主張をすることが考えられます。かかる主張が認められれば、遺産分割の際に、有利に斟酌されることとなります。
 もっとも、寄与分が認められる為には、被相続人の財産の維持、増加につき特別の貢献が認められる必要があります。

 この高齢者の遺産の生前の不正使用につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい

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