御器谷法律事務所

クーリングオフ


1. クーリング・オフの意義
 クーリングオフとは、契約の申込み又は契約の締結をした後であっても、一定の期間内であれば、無条件で、消費者からの一方的な申込みの撤回又は契約の解除を認めることをいいます。
 クーリング・オフの文字通りの意味としては、頭を冷やして考え直すことです。クーリングオフは、消費者に一定期間に限って再考の機会を与える形で、消費者を保護する機能を果たしています。これは、業者主導の不意打ち的かつ強引な勧誘等により、契約意思が不確定なまま、契約の締結等をしてしまった消費者を簡易に救済するためのものです。
 具体例として典型的なものは、法定書面を受領した日から起算して8日を経過するまでの間に認められる、訪問販売に関するクーリング・オフがあります。

2. クーリングオフの対象
 消費者の保護のために認められるクーリング・オフですが、すべての消費者取引がクーリングオフの対象となるわけではありません。業者と消費者との間の情報の偏在や力関係等の諸要素を考慮して、消費者にのみ認められる、一方的な簡易な救済手段であることから、クーリングオフの対象、期間等を予め明確化しておかなければなりません。
(1)  まず、クーリング・オフの対象となるのは、法律で規定されている契約、販売方法等に限られます。
 いくつかの具体例をクーリングオフの期間とともにお示しすると、次のようなものがあります。
1) 「特定商取引に関する法律」に規定されているもの
訪問販売(政令で定める指定商品等について、自宅への訪問販売、電話等で販売目的を告げずに事務所等に呼び出しての販売等)例えば、みそ、しょうゆ、調味料、犬、猫、熱帯魚、観賞用動物等。
詳しくは、指定商品とは
当該契約の申込みの撤回等を行うことができる旨を記載した書面の交付日から8日間(9条)
電話勧誘取引(政令で定める指定商品等について、電話で勧誘し、申込みを受ける販売)例えば、貴金属、時計、家庭用ミシン、電話機、自転車、履物等
詳しくは、指定商品とは
当該契約の申込みの撤回等を行うことができる旨を記載した書面の交付日から8日間(24条)
連鎖販売取引(いわゆるマルチ商法のことであり、個人を販売員として勧誘し、さらに次の販売員を勧誘させる形で、販売組織を連鎖的に拡大して行う販売)
法定書面の交付日から20日間(40条)
特定継続的役務提供(エステ、語学教室、家庭教師、学習塾、結婚情報サービスサービス、パソコン教室という6つの長期的かつ継続的な役務の提供)
法定書面の交付日から8日間(48条)
業務提供誘引販売取引(悪質な内職、モニター商法のことであり、仕事を提供するので収入が得られるが、そのためにはまず、仕事に必要な商品を購入させる取引)
法定書面の交付日から20日間(58条)
2) 「割賦販売法」に規定されているもの
割賦販売に係る指定商品について、販売業者の営業所以外の場所おいて割賦販売の方法による契約。例えば、動物、植物の加工品、真珠、貴石、半貴石、衣服、繊維家庭用品、家具、書籍、時計、写真機械器具、浄水器、自動車、パーソナルコンピューター、化粧品等
詳しくは、指定商品とは
割賦販売業者から申込みの撤回等ができる旨及びその方法の告知を受けた日から8日間(4条の4)
3) 「宅地建物取引法」に規定されているもの
宅地建物取引業者の事務所等以外の場所においてした宅地又は建物の売買契約
宅地建物取引業者から申込みの撤回等ができる旨及びその方法の告知を受けた日から8日間(37条の2)
4) 「ゴルフ場等に係る会員契約の適正化に関する法律」に規定されているもの
ゴルフの会員契約
会員契約締結時の書面を受領した日から8日間(12条)
(2) 法律にクーリングオフの定めがない契約等であっても、日本通信販売協会等の業界団体の自主的な基準においてクーリングオフが規定されている場合には、クーリングオフが可能となります。ただし、かかる業界団体の自主的な基準が適用されるのは、業者が当該業界団体に所属している場合に限られます。
(3) 業界団体の自主的な基準にも、クーリングオフが定められていない場合であっても、当該業者との間の個別的な契約において、クーリングオフについて定めてあれば、クーリングオフが可能となります。

3. 行使の方法

 クーリングオフは、書面で行うものとされています。これは、申込みの撤回等の意思を明らかにし、クーリングオフがなされたことを明確にするためです。
 書面の形式は特に定められていないのですが、クーリングオフを行使したという具体的な証拠が残るように、内容証明郵便を用いることが確実といえます。
 内容証明に記載すべき内容としては、対象となる商品(代金、契約日等も含む。)、契約解除等をする旨、書面作成日、氏名等です。
 なお。契約のときにクレジット会社や信販会社を利用して代金の分割払をしたときは、契約の相手方のみならず、このクレジット会社や信販会社にも同様にクーリングオフの書面を出しておくべきでしょう。

4. 効果
(1) クーリングオフを行うと、業者の同意がないまま、消費者の一方的な意思により、申込みにおいては無条件に撤回されることとなり、契約においては無条件に解除されることになります。
 これにより、消費者が、既に商品を受け取り、また代金を支払っていた場合においても、商品を業者に引き取らせることができるとともに、その支払った代金についても返還を求めることができます。
(2) 効果が生じる時期は、消費者がクーリングオフをする旨の書面を発した時とされています。これは、民法においては、意思表示の効果が生じるのは到達時とされていることに対し、消費者にとって有利な扱いとなっております。

5. 実務上の問題
(1) 書面の不備
 消費者がクーリングオフを行うことの前提として、契約時に業者から書面の交付を受けていることが必要です。かかる書面の交付の日からクーリングオフの期間が起算されることになりますし、クーリングオフの根拠となりうるものだからです。
 しかし、かかる書面の記載に不備があった場合において、クーリングオフが認められないこととなると、かえって悪徳業者の思うつぼという結果になりかねません。
 そこで、個別具体的なケースに応じ、書面の不備が業者の虚偽記載による場合等には、クーリングオフを認める余地があります。
(2) 自営業者の保護
 クーリングオフの制度趣旨が消費者の保護を目的とするものであることから、業者と取引した相手方が個人自営業者である場合に、クーリングオフによる保護の対象となるのかが問題となります。
 個人自営業者であっても、その自ら行っている事業と関連がない業者から商品を購入した場合には、消費者としての側面があることから、クーリングオフを行使できる場合があります。
(3) クーリングオフの対象外となってしまった場合
 クーリングオフの期間を既に経過してしまっている場合等、消費者がクーリングオフの制度によっては、当該契約を解除等できなくなっているときがあります。しかし、かかる場合に、消費者が保護される余地がないとは、一概にはいえません。
 業者の側に契約時に悪質な詐欺的行為等がある場合やクーリングオフの妨害行為等があれば、クーリングオフ制度とは別の法的手段を講じて、消費者を保護することができる場合もあります。

 このクーリングオフにつきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい


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