御器谷法律事務所

ネット上の名誉毀損

1. インターネット上での表現と名誉毀損罪の成否
 インターネット上に表現した記載につき、刑法上の名誉棄損罪が成立するか否かが争われた事案があります。
 事案は、ラーメン店を経営するフランチャイズに対して、インターネットを介して、被告人が開設したホームページ上に、「インチキFC甲粉砕!」、「飲食代の4〜5%がカルト集団の収入になります。」等の虚偽の内容を記載した文章を掲載し、名誉棄損罪に問われたものです。

2. 下級審の判断
(1) 第一審:東京地方裁判所
無罪−被告人個人としては、ネット上の個人利用者として求められる水準の調査をした。
(2)第二審:東京高等裁判所
 有罪:罰金30万円−一審判決は、被害者保護に欠ける。

3. 最高裁判所 平成22年3月15日判決
 本案につき、最高裁判所は、インターネットの個人利用者による表現行為においても、他の場合と同様に名誉棄損罪の成否を決するべきであり、「より緩やかな要件で同罪の成立を否定すべきものとは解されない。」として、下記のとおり判示しました。
 「個人利用者がインターネット上に掲載したものであるからといって、おしなべて、閲覧者において信頼性の低い情報として受け取るとは限らないのであって、相当の理由の存否を判断するに際し、これを一律に、個人が他の表現手段を利用した場合と区別して考えるべき根拠はない。そして、インターネット上に載せた情報は、不特定多数のインターネット利用者が瞬時に閲覧可能であり、これによる名誉毀損の被害は時として深刻なものになり得ること、一度損なわれた名誉の回復は容易ではなく、インターネット上の反論によって十分にその回復が図られる保証があるわけでもないことなどを考慮すると、インターネットの個人利用者による表現行為の場合においても、他の場合と同様に、行為者が摘示した事実を真実でると誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らして相当の理由があると認められるときに限り、名誉棄損罪は成立しないものと解するのが妥当であって、より緩やかな要件で同罪の成立を否定すべきものとは解されない。これを本件についてみると、原判決の認定によれば、被告人は、商業登記簿謄本、市販の雑誌記事、インターネット上の書き込み、加盟店の店長であった者から受信したメール等の資料に基づいて、摘示した事実を真実であると誤信して本件表現行為を行ったものであるが、このような資料の中には一方的立場から作成されたにすぎないものもあること、フランチャイズシステムについて記載された資料に対する被告人の理解が不正確であったこと、被告人が乙株式会社の関係者に事実関係を確認することも一切なかったことなどの事情が認められるというのである。以上の事実関係の下においては、被告人が摘示した事実を真実であると誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らして相当の理由があるとはいえないから、これと同旨の原判断は正当である。

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