御器谷法律事務所

契約―敷金等と競売

1. 問題点
 借家・テナント契約に伴って、賃借人から賃貸人に敷金、保証金、建設協力金などの名目で金銭が差し入れられることがありますが、賃貸借契約の目的となっている不動産が任意売却や競売になった場合、この敷金、保証金、建設協力金の返還義務は新所有者に承継されるでしょうか。

2. 任意売却の場合
(1) 任意売却とは、競売によらず第三者へ売却して担保権の債務履行を行い、競売申し立ての取り下げ等を行おうとする手続きです。任意売却は、通常の売買と性質が同じですので、通常の売買の場合の敷金、保証金、建設協力金の返還債務と同様に考えればよいことになります。
(2) 敷金については、賃貸借関係が存続し、その賃貸借が登記又は借地借家法の規定により対抗力が認められ、賃借人が新所有者に対抗しうる場合、敷金返還債務は新所有者に引き継がれます。
 ただし、引き継がれる敷金返還債務の額は、旧賃貸人の賃借人に対する未払賃料債権等を控除した残額です(最高裁昭和44年7月17日判決)
(3) 保証金については、敷金の性質を有すると考えられるものと、金銭消費貸借契約上の貸金の性質を有すると考えられるものがあり、前者は新所有者に引き継がれますが、後者は新所有者に引き継がれません(最高裁昭和51年3月4日判決)
(4) 建設協力金とは、入居予定者から長期に返済する条件で借り受ける金員であり、法律上は保証金と同一の性質を有します。したがって、建設協力金については、敷金としての性質を有するものは新所有者に引き継がれ、金銭消費貸借契約上の貸金と考えられるものについては新所有者に引き継がれません。
 なお、建設協力金が敷金としての性質を有するか否かの判断基準としては判例上、1)差し入れられた名目、2)賃料額、3)建設協力金の額、4)使用目的、5)契約当時の状況、6)建設協力金が敷金と別に支払われているかなどの事情が考慮されているようです。
(5) 実務の取扱い
 一般の不動産売買契約の場合、敷金や保証金の返還義務が買主に承継され、その分が売買代金から差し引いて処理されることがあります。
 またテナントとしては買主=新所有者の経済状況に不安があることもあり、その場合には売主、買主、テナントの三者契約により敷金や保証金等の承継について合意書を交わすこともあります。

3. 競売の場合
(1) 競売においても、1)賃貸借契約が抵当権設定前に締結され、かつ、賃借人が建物の引渡しを受けているなど賃貸人に賃借権を対抗できる場合、2)賃貸借契約が抵当権設定後に締結されたものであっても、平成15年法第134号による改正前の民法395条の適用のある短期賃貸借で賃貸人に賃貸借を対抗できる場合、敷金、保証金及び建設協力金の返還義務が新所有者(買受人)に承継するか否かは、上記任意売却の場合と同様になります。
(2) 前記記載の法改正により、改正法施行後に契約締結された賃貸借は抵当権者全員が同意するなどの事情がない限り原則として保護されず(民法387条)、敷金返還債務も敷金の登記がされない限り、原則として買受人に承継されないことになりました。したがって、敷金、保証金、建設協力金の返還義務は元の賃貸人が負うことになります。

 この敷金等と競売につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい
      

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