御器谷法律事務所


大津地方裁判所 平成21年2月5日判決


1. 事案の概要−シャトレーゼ事件
Y −菓子の製造販売を業、「シャトレーゼ」の名称で、フランチャイズ方式による菓子店を展開
H16.7.29 → Xに対し、立地調査報告書
年間売上高1億5,100万円、営業利益1,077万円
X・Y−H16.8.3フランチャイズ契約を締結
X −H16.9.29開店(宇治東店)
X −営業に行き詰まり(年売上げ約7,200万円余)、H17.10.20閉店

 本件は、被告のフランチャイジーとして菓子等の販売業に従事していた原告が、被告が1)フランチャイズ契約の締結に当たり、店舗の売上収支予測に関して不正確・不合理な情報を提供し、2)フランチャイズ契約の締結後、原告に対する適切な経営指導を怠ったとして、被告に対し、債務不履行に基づき、損害賠償金7523万円余を請求した事案

2. 争点
(1)売上収益予測に関する情報提供義務違反の有無
(2)経営指導義務違反の有無
(3)原告の損害額
(4)過失相殺の可否及び割合

3. 判旨−3,256万円を認容
(1)争点(1)について−売上収益予測に関する情報提供義務違反の有無
フランチャイズへの加盟契約を締結するか否かを検討している者にとって、通常、最大の関心事は、契約後に店舗経営によってどの程度の収益を得ることができるかにある。そして、フランチャイザーは、多数の店舗展開をする中で膨大な情報と売上予測のノウハウを有しているのに対し、フランチャイジー候補者は通常、乏しい情報しか有しておらず、売上予測や収益予測については、主としてフランチャイザーから提供される情報に依拠することになるから、フランチャイザーがフランチャイジー候補者に対し、フランチャイズ契約の締結に向けた交渉過程において店舗の売上予測を提供した場合、その内容は、フランチャイジー候補者が契約を締結するか否かを決断するに当たって重要な影響力を持つと考えられる。もとより、その予測値について誤差が生じ得ることは、事の性質上避けられないことではあるが、ノウハウを有するフランチャイザーから提供された情報であるだけに、フランチャイジー候補者とすれば、その予測が大幅に外れることはないだろうと信頼するのが通常であり、他方、フランチャイザーとしても、当該店舗でどの程度の収益が得られるかという切実な問題意識を有するフランチャイジー候補者に対し、売上予測等に関する情報を提供する以上、フランチャイジー候補者がそれを信頼性の高い数値と受け止めることを期待していると考えられる。
 したがって、このような両者の関係にかんがみると、フランチャイザーが、フランチャイズ契約に向けた準備段階において、フランチャイジー候補者に対し、売上予測等を提供する場合には、信義則上、十分な調査をし、的確な分析を行って、できる限り正確な売上予測等を提供する義務がある
 以上のとおり、商圏範囲の設定、商圏人口の調査、マーケットサイズの把握においては、被告の検討過程に特段問題があるとはいえないが、シェア率の設定においては、その過程で競合店となり得る店舗の調査を十分せず、合理的根拠を欠いた分析を行って、本件店舗のシェア率として、一次商圏内ではほぼ独占に近い地位を確保でき、二次商圏内でも地域一番店といえる地位を確保できるという過大な設定をしていたものである。そして、本件算出方法では、シェア率を高く設定すれば当然に売上高も大きくなりのであり、本件店舗の実際の売上高が被告の売上予測に遠く及ばない結果に終わったことについては、被告が本件店舗のシェア率を過大に設定していたことが、その一因であったと推認される。そうすると、被告は、過大なシェア率を設定して本件店舗の売上予測を誤り、原告に対しても、この誤った売上予測、さらには営業予測を提供していたものであるから、情報提供義務違反の責任を免れない
(2)争点(2)について−経営指導義務違反の有無
原告は、被告が1)過剰に商品を発注させたこと、2)経営改善策を示さなかったこと、3)原告が平成17年2月に本件店舗の閉店を望んだにもかかわらず、強引に本件店舗の営業を継続するよう迫り、同年5月以降は一切の経営指導を行わなかったことを挙げ、被告がこれらの点で経営指導業務に違反した旨主張するので、以下検討する。
1)について
廃棄ロスを生じることを覚悟で多めに仕入れるということは、来店する顧客との関係では、希望する商品が常に陳列してあるという意味で、顧客の信頼を得ることにつながり、結果として店舗全体の売上増大にもつながるという、いわゆるチャンスロスを防止するという経営戦略に基づくものであり、それ自体不合理であるとはいえない。
2)について
被告は、CやDなどの担当者を本件店舗に派遣し、原告に対し、商品の発注に関する指導をしたり、人件費を削減するためにシフトの組み方について提案したりしている。
 したがって、経営改善策の提示に関して、被告の義務違反があったとする原告の主張を採用することはできない。
3)について
原告は、被告による経営指導を受けることを自ら放棄したといえる。
したがって、被告が同年5月以降、原告に対する経営指導を怠ったとする原告の主張を採用することはできない。
(3)争点(3)−原告の損害額
・成約預託金−409万円
・賃貸借費用−497万円
・店舗工事代金−1,811万円
・原状回復費用−1,534万円
・営業損失−1,681万円
・(弁護士費用−290万円)
(4)争点(4)−過失相殺
原告の代表取締役であるBは、大学を卒業後、融資業務に10年以上携わるなど計27年間銀行員として勤務していたことから、商売を営む経営上の危険性について十分理解し、判断する能力を有していたにもかかわらず、被告から交付された本件報告書に記載された売上予測について、CやDに対して説明を求めず、また、損益計算書を読解する能力を有しながら、本件報告書に記載された本件店舗の損益計算書を検討することもなく、本件店舗を経営することにより、1年間に約1億5100万円の売上が上がり、約1077万6000円の営業利益が計上されると安易に信じて、本件契約を締結することを決意したものである。これは、多額の開業資金を投下して商売を始めようとする者としては、フランチャイザーの言動に寄りかかりすぎた軽率なものであったといわざるを得ない。
 もっとも、原告と被告とでは、フランチャイズ契約に関する知識・経験、情報量、組織的力量など、どれをとっても決定的な差があり、しかも、前記2で認定した被告の情報提供義務違反の態様からすると、被告の責任も大きいというべきであるから、本件における損害賠償額の算定に当たっては、原告の上記過失を斟酌し、50パーセントの過失相殺をするのが相当である。

 この情報提供義務違反につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい

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