御器谷法律事務所

中小企業の内部統制


1. 会社法等と内部統制
 会社法362条4項6号、5項においては、大会社である取締役会設置会社の取締役会は、「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備」を決定しなければならないものとされています。
 また、会社法第348条3項は、大会社である取締役会非設置会社につき(同条1項)、取締役の義務として内部統制体制の整備を規定しています(同条4項)。
 そして、会社法において「大会社」とは、資本金が5億円以上又は負債が200億円以上の株式会社を指します(同法第2条6号)。
 なお、有価証券報告書を提出しなければならない上場企業は、事業年度ごとに、「当該会社の属する企業集団及び当該会社に係る財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するために必要なものとして内閣府令で定める体制について、内閣府令で定めるところにより評価した報告書」=「内部統制報告書」を有価証券報告書と併せて内閣総理大臣に提出しなければならないものとされました(金融商品取引法24条の4の4)。
 従って、中小企業は、会社法や金融商品取引法による内部統制の構築義務は少なくとも法律上はないようにも考えられます。
 しかし、中小企業といってもその内実や規模は千差万別であり、ある程度の規模を有する中小中堅企業においては、内部統制システムをその企業規模なりに構築することは会社法の趣旨からは望ましいものであり、取締役の善管注意義務の一環として捉えることも可能であるとの見解もあります。

2. 中小企業における内部統制のあり方
 内部統制とは、一般的には、企業の組織内において、不正行為や違法行為やミス等がなく、業務が適法、適正且つ有効で能率的に遂行されるよう、各業務が一定の基準や手続に基づき行われる一連のプロセスのことを言います。
 そうすると中小企業においても、企業不祥事がなく法令遵守を行い、且つ業務の能率を向上させる内部統制は、会社経営においても必要不可欠なものと考えられます。
 特に中小中堅企業にあっては、一つの企業不祥事が会社の命取りになるリスクも非常に大きく、又、業務の能率向上もその効果が大きければ目に見えたものとして実感できるものとなるでしょう。
 そして、中小企業においては、企業規模も小さく従業員の数も少ないために、内部統制の実効があげやすいとのメリットが指摘されています。
 しかし、中小企業においては、逆に会社法に則った会社経営が行われていなく法令遵守が難しく、コーポレート・ガバナンスが機能しにくいとのデメリットも指摘されています。
 そうすると中小中堅企業における内部統制の徹底のためには、統制環境特に社長の経営理念やコンプライアンスの意識が決定的に重要な意味を有してきます。
 なお、大会社では、この内部統制の具体的内容として、会社法施行規則第100条に、次のように規定しています。
(1) 取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制
(2) 損失の危険の管理に関する規定その他の体制
(3) 取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制
(4) 使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
(5) 当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制

3. 中小企業における内部統制の留意事項
 中小企業においては経営者が中心となって内部統制につき、その会社の実情に応じた形でこれを作っていくことが必要です。以下では、あくまでも私なりにその留意事項を解説してみます。要は最初から完全なものをめざさず、とらえず一つの宣言やマニュアルを作ることから始めてみては、と思います。なお、別稿コンプライアンスもご参照下さい。
(1) 統制環境
 中小企業においては、経営者の経営理念や法令遵守(コンプライアンス)の意識が極めて重要な要素となります。そして、これらを全社員に対して明確な形で表明し、その徹底を図るように努めなければなりません。
(2) リスクの識別と評価、対応
 全社的及び業務別のリスクを識別し、これをその重要度に応じて評価し、これに対する対応をマニュアル化すべきでしょう。
 そして、その結果を再び内部統制の枠組みにフィード・バックすべきです。この点、PDCAを継続的に行うことを説く見解もあります。Plan→Do→Check→Action→Planのサイクルを念頭におきましょう。
(3) 社長による内部統制体制の意思表明
 法令の遵守や内部統制が企業の存続にとって必要不可欠なものであることを、会社の経営方針として意思表明し、全社員及び従業員がこれを遵守することの必要性を明確にします。
(4) マニュアルの作成
 役員や社員が法令に違反しないためには、どのような行動をしてはならないか、又は、どのような行動をすべきか、を具体的な行動基準として記載するものであり、一読して分かりやすい「マニュアル」として作成される部分です。この行動基準については、一般的な法令遵守や業務の能率化のためのいわば総論的なプログラムの作成が先ず考えられます。
 そして、企業の置かれている業界や各担当部署の実情に応じて、いわば各論的プログラムの作成が考えられます。
(5) 担当部署の決定
 会社として法令遵守を実行し業務の効率をあげるには内部統制体制を会社組織として構築する必要があります。この内部統制体制は会社の規模によっても異なってきますが、社長が自らこれを統轄したり、担当部署を総務部や法務部とし、あるいは内部統制部を設け、一般社員からの相談にも機動的に応ずるシステムが構築されることもあります。
(6) 周知徹底
 プログラムやマニュアルを作成したときは、これを広く社内に周知徹底させる必要があります。社員向けハンドブックを作成しこれを全社員に配布し、社内において研修会を開催し、さらに各部署毎でミーティングを開催する等の工夫が有益です。
 また、企業としてこの内部統制体制を広く社会に周知せしめるにはホーム・ページに記載することも一方法でしょう。
(7) 相談体制
 プログラムやマニュアルを作成しこれを会社の方針として実行するには、一般社員からの相談体制を確立する必要があります。この点会社として担当役員や担当部署を決め一般社員から直接メール等で相談できるシステムの設置も一方法でしょう。この点内部通報制度とのリンクも考えられるでしょう。
(8) 定期的改訂と研修
 プログラムやマニュアルは、毎年定期的に改訂を行い、定期的研修等によりその実効性を確保すべき努力が求められます。

 この中小企業の内部統制につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい
 
企業法務の法律相談へ
     

執務の方針| 弁護士のプロフィール| 取扱事件 | ご案内 顧問契約 |

弁護士費用 | 事務所案内図 | リンク| トップ