御器谷法律事務所

ライブドア事件

ライブドア有価証券報告書虚偽記載事件−東京地裁 平成20年6月13日判決

1.事案の概要

2. 判旨−概要のみ
(1) 有価証券報告書に重要な虚偽記載があったか?−YES
 前記認定によれば、被告は、本件有価証券報告書に掲載された連結財務諸表に、売上計上が認められないライブドア株式の売却益約37億6699万円を売上として計上するとともに、ロイヤル信販に対する架空売上7億円及びキューズ・ネットに対する架空売上8億8000万円を計上しているのであるから、本件有価証券報告書の「重要な事項」について虚偽記載があるものというべきである。
(2) 株式取得との因果関係が必要か?−NO
 被告は、同条項に基づく損害賠償請求権は、不法行為に基づく損害賠償請求権の特則であって、原告らのライブドア株式の取得と本件有価証券報告書の虚偽記載等との間に因果関係が存在する必要があるから、本件有価証券報告書が提出される前にライブドア株式に投資したことがある原告日本トラスティ・サービス信託銀行及び原告日本マスタートラスト信託銀行は、損害賠償を請求することができない旨主張する。しかしながら、有価証券報告書等が公衆の縦覧に供されている間は、証券市場は、その記載内容を基礎として、その有価証券あるいは発行した企業の業績を評価するのであって、取得者は、そのような市場の評価を前提としてその有価証券を取得するのであるから、同条項に基づき損害賠償を請求するには、有価証券報告書等に虚偽記載があった当該有価証券を公衆縦覧期間内に虚偽記載の存在を知らずに取得したことを要するが、実際に有価証券報告書等の記載内容を信用してそれを投資判断の重要な要素としたかどうかは、損害賠償請求権の成否には関係がないものというべきである。
(3)「公表」の主体、方法について
 金商法21条の2第3項は、公表の主体を「業務若しくは財産に関し法令に基づく権限を有する者」と定めている。これは、有価証券報告書等の虚偽記載等を訂正する情報を受けて、投資者が投資判断を行うことによって適正な市場価額が形成されることを期待する趣旨であるから、投資者にとって類型的に信頼できる訂正情報を獲得しそれを証券市場に提供し得る者、すなわち、法令上、報告聴取、検査、調査等の権限を有する者をいうものと解するのが相当である。
 被告は、公表の主体は、検査や報告聴取などに基づいて一定の処分や指示を行うことができる権限を有する者に限られる旨主張するが、上記条項の「公表」は、有価証券報告書等の虚偽記載等による市場価額への影響を排除して、適正な市場価額を回復させる機能を有するものであるから、投資者にとって信頼できる訂正情報を提供できる者であれば足り、必ずしも一定の処分や指示を行う権限を有する者に限定する理由はない。
 したがって、検察官が、司法記者クラブに加盟する複数の報道機関の記者らに対し、それが一般に報道されることを前提として、便宜供与の一環として公式に一定の捜査情報を伝達することは、「公表」に当たるものとして妨げないというべきである。
(4) 金商法21条の2(2)により推定される損害
 本件有価証券報告書の虚偽記載の公表日は、平成18年1月18日であるから、1株当たりの推定損害額は、公表日前1か月間(平成17年12月19日から平成18年1月17日)の平均株価720円と公表日後1か月間(同月19日から同年2月17日)の平均株価135円の差額である585円となる。
(5) 金商法21条の2(5)に基づく裁量による相当な減額−3割
 一般に上場株式の株価の変動には、種々の要因が影響していることから、ライブドア株式の株価の急落にどのような要因が影響しているのかを明らかにすることには困難が伴うが、前記認定によれば、東京地検の検察官から、VCJ(LDM)によるマネーライフ社の買収を巡る偽計・風説の流布の事実が伝達され、それが報道された時点でラブドア株式の株価が下落しており、公表された事実のうち、キューズ・ネットに対する架空売上の事実は本件有価証券報告書の虚偽記載の一部を構成するものの、マネーライフ社買収の際の経済的合理性のない株式交換は、本件有価証券報告書の虚偽記載とは異なる事実であるから、キューズ・ネットに対する架空売上以外の偽計・風説の流布の事実が公表されたことが株価急落の要因の一つであることは否定できない。また、被告の役員が、偽計・風説の流布の容疑で逮捕されたこと、マネックス証券がライブドア株式を信用取引の担保から除外したこと、フジテレビからの提携解消の方針が報じられたこと、東証がライブドア株式を開示注意銘柄に指定し、上場廃止基準に該当するおそれが認められるとして整理ポストに割り当てたことなどがライブドア株式の株価下落の要因であるものと推認することができる(なお、本件有価証券報告書の虚偽記載が公表されたことに関する過剰反応(いわゆるオーバーシュート)部分は、公表日後の1か月の平均株価が損害の算定の基準となっているから、既に考慮済みであるというべきである。)。しかしながら、それらの諸要因による株価下落の程度がどの程度であるかを立証することは著しく困難である。
 そこで、当裁判所は、それらの諸要因の株価形成における重要性の程度、ライブドア株式の変動状況等本件に表れた一切の事情をしん酌して、裁量によって、本件有価証券報告書の虚偽記載以外の事情により生じた株価の値下りを3割程度と見て、原告らの上記推定損害額から3割を減額するのが相当であると判断する。

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