御器谷法律事務所

混合診療への保険の適用の可否


1.混合診療と保険
 患者が病院において保険診療と保険外診療をあわせて利用しようとする「混合診療」に保険が適用されないとの、国の方針である「原則禁止」の是非が争われた訴訟について、最高裁判所は、この国の方針である「原則禁止」は適法とする判断を下しました。
 この訴訟では、平成19年に東京地方裁判所が、混合診療の禁止は違法と判断しました。
 そして、平成21年の東京高等裁判所は、混合診療を原則禁止とすることは適法との判断を示していました。
 これらに対して、最高裁判所は、今般、混合診療を原則禁止とする国の方針を適法と判断しました。
 本件については、保険外併用療養費制度やその運用状況、未承認の先進的医療への対応、海外とのドラッグラグ等の問題もありますが、患者の混合診療への期待を裏切るものではないのか、との疑義を感じる面もあるのではないでしょうか。

2.最高裁判所平成23年10月25日判決のポイン
(1)事案の概要
 本件は,健康保険の被保険者である上告人が,腎臓がんの治療のため,保険医療機関から,単独であれば健康保険法上の療養の給付に当たる診療(いわゆる保険診療)となるインターフェロン療法と,療養の給付に当たらない診療(いわゆる自由診療)であるインターロイキン2を用いた活性化自己リンパ球移入療法(以下「LAK療法」という。)とを併用する診療を受けていたところ,当該保険医療機関から,単独であれば保険診療となる療法と自由診療である療法とを併用する診療(いわゆる混合診療)においては,健康保険法が特に許容する場合を除き,自由診療部分のみならず,保険診療に相当する診療部分(以下「保険診療相当部分」ともいう。)についても保険給付を行うことはできない旨の厚生労働省の解釈に従い,両療法を併用する混合診療を継続することはできないと告げられ,これを断念せざるを得なくなったため,厚生労働省の上記解釈に基づく健康保険行政上の取扱いは健康保険法ないし憲法に違反すると主張して,被上告人に対し,公法上の法律関係に関する確認の訴えとして,上記の混合診療を受けた場合においても保険診療相当部分であるインターフェロン療法について健康保険法に基づく療養の給付を受けることができる地位を有することの確認を求めている事案である。
(2)判決のポイント‐その1
 保険医が特殊な療法又は新しい療法等を行うこと及び所定の医薬品以外の薬物を患者に施用し又は処方すること並びに保険医療機関が被保険者から療養の給付に係る一部負担金の額を超える金額の支払を受けることが原則として禁止される中で,先進医療に係る混合診療については,保険医療における安全性及び有効性を脅かし,患者側に不当な負担を生じさせる医療行為が行われること自体を抑止する趣旨を徹底するとともに,医療の公平性や財源等を含めた健康保険制度全体の運用の在り方を考慮して,保険医療機関等の届出や提供される医療の内容などの評価療養の要件に該当するものとして行われた場合にのみ,上記の各禁止を例外的に解除し,基本的に被保険者の受ける療養全体のうちの保険診療相当部分について実質的に療養の給付と同内容の保険給付を金銭で支給することを想定して,法86条所定の保険外併用療養費に係る制度が創設されたものと解されるのであって,このような制度の趣旨及び目的や法体系全体の整合性等の観点からすれば,法は,先進医療に係る混合診療のうち先進医療が評価療養の要件に該当しないため保険外併用療養費の支給要件を満たさないものに関しては,被保険者の受けた療養全体のうちの保険診療相当部分についても保険給付を一切行わないものとする混合診療保険給付外の原則を採ることを前提として,保険外併用療養費の支給要件や算定方法等に関する法86条等の規定を定めたものというべきであり,規定の文言上その趣旨が必ずしも明瞭に示されているとはいい難い面はあるものの,同条等について上記の原則の趣旨に沿った解釈を導くことができるものということができる。
  (4) 以上のとおりであるから,法86条等の規定の解釈として,単独であれば療養の給付に当たる診療(保険診療)となる療法と先進医療であり療養の給付に当たらない診療(自由診療)である療法とを併用する混合診療において,その先進医療が評価療養の要件に該当しないためにその混合診療が保険外併用療養費の支給要件を満たさない場合には,後者の診療部分(自由診療部分)のみならず,前者の診療部分(保険診療相当部分)についても保険給付を行うことはできないものと解するのが相当である。所論の点に関する原審の判断は,是認することができる。論旨は採用することができない。
(3)判決のポイント‐その2
 健康保険により提供する医療の内容については,提供する医療の質(安全性及び有効性等)の確保や財源面からの制約等の観点から,その範囲を合理的に制限することはやむを得ないものと解され,保険給付の可否について,自由診療を含まない保険診療の療法のみを用いる診療については療養の給付による保険給付を行うが,単独であれば保険診療となる療法に先進医療に係る自由診療の療法を加えて併用する混合診療については,法の定める特別の要件を満たす場合に限り療養の給付に代えて保険外併用療養費の支給による保険給付を行い,その要件を満たさない場合には保険給付を一切行わないものとしたことには一定の合理性が認められるものというべきであって,混合診療保険給付外の原則を内容とする法の解釈は,不合理な差別を来すものとも,患者の治療選択の自由を不当に侵害するものともいえず,また,社会保障制度の一環として立法された健康保険制度の保険給付の在り方として著しく合理性を欠くものということもできない。
 したがって,混合診療保険給付外の原則を内容とする法の解釈が憲法14条1項,13条及び25条に違反するものであるということはできない。
 
 当事務所においても多様な医療事件を担当いたしておりますので、この種問題につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい


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