御器谷法律事務所

ネット通販と法規制

第1 ネット通販とは
 「ネット通販」とは、小売業態のうちの無店舗販売の一つで、インターネット上のウェブサイト等を利用して商品を展示し、そこにアクセスした消費者から注文を受け、商品を販売する電子商取引を意味します。そして、近年、ネット通販による取引が非常に盛んに行われています。これは、事業者側にとって、1)実店舗と比較すると少ない費用で参入が可能であり、2)販売範囲が全国規模に広がり、3)カタログ通販のようなページ数という制限がなく、4)新商品情報をいち早く取り入れることが容易である、というメリットがあることが原因として挙げられます。さらに、消費者側にも、どれ程遠くの販売業者の商品であっても、わざわざお店まで買いに行く必要はなく、自宅にいながら手軽に買い物ができるというメリットがあります。
 しかし一方、消費者は商品の現物を見ることなく、広告表示を唯一の情報源として契約をするため、その内容が不十分あるいは不正確な場合には、販売者と消費者の間で争いになることもあります。
 従って、ネット通販においては、消費者にとって広告に必要な事項が正確に表示されるよう、法律により様々な規制がなされています。

第2 ネット通販に関する法律
 ネット販売を含む通信販売に関する法律は、主として次のように挙げられます。

特定商取引法
 (正式名称:特定商取引に関する法律)
 訪問販売、通信販売、電話勧誘販売、連鎖販売取引、特定継続的役務提供に係る取引並びに業務提供誘引販売取引などを対象とし、無店舗販売の場合を中心に、販売者側に一定の規制を課し、消費者側の保護を目的としている法律です。
 具体的に通信販売に関しては、広告表示事項や、誇大広告等の禁止、承諾をしていない者に対する電子メール広告の提供の禁止等が定められています。さらに、キャッチセールス、アポイントメントセールス等を含む訪問販売に関しては、一度契約を締結しない旨を意思表示した者に対する再勧誘の禁止や、申込みの撤回(クーリングオフ)があった場合に、仮に商品を使用していたとしても、事業者はその対価を原則請求できないことが定められています。

特定電子メール法
 (正式名称:特定電子メールの送信の適正化等に関する法律)
 一時に多数の者に対してされる特定電子メールの送信等を防止する必要性が生じていることにかんがみ、特定電子メールの送信の適正化のための措置等を定めることにより、電子メール利用の良好な環境の整備を図ることを目的とする法律です。
 具体的には、膨大な迷惑メールを防止するため、特定電子メールの送信の制限、送信者の表示義務、送信者情報を偽った送信の禁止、架空電子メールアドレスによる送信の禁止等が定められています。

電子消費者契約法
 (正式名称:電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律)
 消費者が行う電子消費者契約の要素に特定の錯誤があった場合及び隔地者間の契約において電子承諾通知を発する場合に、民法の特例を定める法律です。また、これは、通信販売の中でも特にネット通販を対象としています。
 具体的に第3条では、民法の錯誤の「表意者に重大な過失がある場合、無効主張できない」という例外規定は、次のいずれかに該当する場合は適用しないと定められており、以下が挙げられています。
* 消費者が電子消費者契約の申込み又はその承諾をする意思がなかった場合
* 消費者が電子消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示と異なる意思表示をする意思があった場合

第3 法に基づく様々な規制
 次に、上記第2に挙げた法律の中から、以下の規制に関する観点につき、具体的に検討していきます。

(1) 広告表示事項について
 広告表示事項については、「特定商取引法11条」、さらには「特定商取引法施行規則8条」で定められています。具体的には、1)販売価格・送料、2)代金等の支払い時期・方法、3)商品引渡時期、4)返品特約、5)事業者の名称、住所、電話番号、6)事業者が法人であるネット通販の場合には、販売業者等代表者又は責任者の氏名、7)申込みの有効期限(期限ある場合のみで可)、8)購入者が負担すべき金銭の内容及び額(販売価格、送料以外)、9)商品に隠れた瑕疵がある場合の販売者の責任について定めがあるときは、その内容、10)ソフトウェアの動作環境(取引対象がソフトウェアの場合)、11)商品の販売数量の制限など特別な販売条件、12)請求により書面等を別途送付する際の金額、13)電子広告メール商業広告を送付する場合、事業者のメールアドレス、が挙げられ、全13項目にわたります。
 消費者にとっては、広告が契約を結ぶ際の重要かつ唯一の手掛かりになるため、事業者は消費者の選択に必要なことは、全て表示する義務を負います。

(2) 電子メール広告の規制について
 電子メール広告については、平成21年12月1日施行の改正法で、規制が強化されています。
 従来は、電子メールの受信を拒絶する意思表示を通知した者に対してメール送信を禁止するという「オプトアウト規制」がとられていました。しかしながら、これは、受信拒絶をした者にのみ送信禁止となる規制であるため、無差別かつ大量に広告迷惑メールを送る行為は依然として蔓延し、抜本的な解決には至りませんでした。さらに、受信拒絶メールを送ることによって、そのアドレスが実在することを相手方に認知させることになり、さらなるターゲットとなってしまうことも多くありました。
 そのため、改正では次の3つの規制が強化されました。
@. 消費者があらかじめ承諾、請求した場合を除いて、メール広告送信を原則禁止
A. 電子メール広告業務を一括受託する事業者を、通信販売業者等と同様に規制対象とすること
B. オプトイン規制に違反した場合、行政処分の対象とすること
 以上のように、従来の「オプトアウト規制」から、受信する側が請求したり承諾した場合にのみ送信を認める「オプトイン規制」に転換しました。また、特定電子メール法にも、同様の規制が採用されています。

(3) 前払い式通信販売の規制について
 事業者が商品を送付する前に消費者に商品代金の全部又は一部の支払いをさせる販売方法を、前払い式通信販売といい、「特定商取引法施行規則第12条」に定められています。この販売方法は、消費者が不利な立場におかれるため、代金の送金から商品の引き渡し時期までに時間がかかる際に、一定の必要事項を記載した文書を消費者に対して交付する必要があります。
 具体的には、1)申込みの承諾の有無、2)事業者の氏名又は名称、住所及び電話番号、3)受領した金銭の額等、4)金銭を受領した年月日、5)申込みを受けた商品名及びその数量又は権利若しくは役務の種類、6)申込みを承諾するときは、その商品の引渡時期、の必要記載事項が挙げられます。

(4) 顧客の意に反して売買契約書等の申込みをさせようとする行為について
 ネット通販では、クリックミスや入力ミスをして、別の商品を指定してしまったり、商品の数量を誤って入力してしまうことがしばしば起こり得ます。そして、一度申込み入力をしたら訂正できない場合や、確認画面がなく申込み完了となってしまう場合があると、消費者側にとっては非常に不都合となります。そこで、特定商取引法では、「顧客の意に反して売買契約書等の申込みをさせようとする行為」に当たるとして、以下が禁止対象となっています。
 a.申込みが有料であることを、わかりやすく表示していない
 b.申込み内容入力後に、その内容を確認できる画面が設定されていない
 c.申込み内容をのちに訂正できるようになっていない
 以上のような場合の申込みは、民法第95条「錯誤」により無効とすることができます。電子消費者契約法第3条によれば、この場合に事業者側は、消費者の重過失を理由に錯誤無効に異議を唱えることはできませんが、逆に、申込み内容確認画面があるにもかかわらず、消費者がミスをした場合には、消費者は錯誤を理由に無効を主張することはできないことになります。

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