御器谷法律事務所

原子力損害賠償法

1. 原子力損害賠償法とは、
原子炉の運転等により原子力損害が生じた場合における損害賠償に関する基本的制度を定めた法律です(同法第1条)。
正式名称は、「原子力損害の賠償に関する法律」であり、昭和36年に制定されています。

2. 原子力損害賠償法の概要
(1) 原子力事業者の無過失、無制限の賠償責任−第3条
原子力事業者は、原子力事故により原子力損害を与えたときは、原則として無過失、無制限の賠償責任を負うものとされています。
但し、「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるときは、この限りでない。」ものとされています。
この場合、「異常に巨大な天災地変」がどのような場合を意味するかについては、解釈の余地につき見解が分かれることも考えられます。
(2) 損害賠償措置−第7条
原子力事業者は、損害保険会社と原子力損害賠償責任保険契約を締結し、及び、国と原子力損害賠償補償契約を締結する等により、一事業所あたり原則1,200億円を原子力損害の賠償に充てることができるものとされています。
(3) 国の援助−第16条
政府は、原子力損害が生じた場合において、原子力事業者が損害を賠償する責めに任ずべき額が賠償措置額をこえ、かつ、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、原子力事業者に対し、原子力事業者が損害を賠償するために必要な援助(低利融資、融資のあっせん、補助金等の交付等)を行うものとしています。
この政府の援助は、国会の議決により政府に属させられた権限の範囲内において行われるものとされています。
 また、第3条1項ただし書きの場合には、政府は、被災者の救助及び被害の拡大の防止のため必要な措置を講ずるものとされています(法第17条)。
(4) 原子力損害賠償紛争審査会‐第18条
 文部科学省は、原子力損害の賠償に関して紛争が生じた場合、和解の仲介を行い、自主的な解決に資する一般的な指針を定める等のため、原子力損害賠償紛争審査会を置くことができるものとされています。

3. 原子力損害賠償補償契約に関する法律
この法律においては、政府が、原子力事業者を相手方として、原子力事業者の原子力損害の賠償の責任が発生した場合において、責任保険契約その他の原子力損害を賠償するための措置によってはうめることができない原子力損害を原子力事業者が賠償することにより生ずる損失を政府が補償することを約し、原子力事業者が補償料を納付することを約する「原子力損害賠償補償契約」を締結することができるものとされています。

4. 東北大地震による東京電力福島第1原子力発電所事故
平成23年3月11日に発生した東北大地震及びその後の大津波により東京電力福島第1原子力発電所に大きな事故が発生しました。
この原子力発電所の事故による放射性物質の拡散により、多数の住民が避難を余儀なくされ、農産物や酪農等の出荷停止、工場の操業停止、漁業への影響、人体への影響(特に乳幼児や子供の発育や将来の健康等)、精神的苦痛への慰謝料、風評被害等極めて巨額の損害が問題となっています。
そして、これらの損害と原子力損害賠償法との関連においても、重要且つ困難な様々な問題が考えられます。
例えば、
(1) 原子力事業者の責任を免除する法第3条1項但書の規定にある「異常に巨大な天災地変」に、今回の東北大地震が該当するか否かは、極めて重大な問題です。
(2) 福島原子力発電所の事故と相当因果関係にある損害は、具体的にはどの範囲の、どの損害が、額としてどれだけ認定されうるのかは大きな問題となるでしょう。
(3) 放射能事故による将来への健康被害をどう認定するかも、原子力事故による困難かつ重大な問題となるでしょう。
(4) 今回の原子力事故によって、国がどこ迄の支援をしてその救済にあたるのか、東京電力との責任の分担も、調整を要する大きな問題です。
(5) 東京電力の責任の如何によっては、その会社経営の存立自体が危ぶまれる事態を惹起することも予想され、電力という公共性の高い産業だけにその再建をどのように果たすかも問題と考えられます。

5. 参考例‐東海村JCO臨界事故
(1) この事故は、平成11年9月30日、茨城県の東海村で発生したJCOの核燃料加工施設で起きた臨界事故で、原子力損害賠償法が初めて適用となった事例とされています。
JCOの従業員2名が死亡し、他の従業員や救急隊員や周辺の住民等が被ばくし、避難要請や屋内退避勧告がなされました。
また、農産物等に風評被害も出たとされています。
(2) 科学技術庁の委託により原子力損害調査研究会が設置され、損害の範囲や損害額についての報告がなされ、結果的には、補償の対象は約7,000件、金額は合計約150億円となったとされています。
JOCは、賠償措置額が当時10億円であったので、これを保険から支払い、その余の約140億円は親会社の住友金属鉱山が支援したとされているようです。
(3) また、JOCの東海事業所長等は、業務上過失致死罪で起訴され、JCOは労働安全衛生法違反等で起訴されたものとされています。

 この原子力損害賠償法につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい

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