御器谷法律事務所

原子力損害調査研究会、最終報告書

1. 原子力損害調査研究会・最終報告書とは、
 平成11年9月30日に、株式会社JCO東海事業所において発生した臨界事故について、原子力損害賠償法が初めて適用されました。
 その際、科学技術庁は、平成11年10月27日、「原子力損害調査研究会」を設置し、本件事故による各損害項目について相当因果関係の範囲と損害認定に関する基本的な考え方を整理・集約して、平成12年3月29日にその最終報告書をまとめました。
 その概要は、同最終報告書の結論を引用し、次のとおりとなります。原子力損害を考える際の指針として参考となりますので、御紹介いたします。
 詳細は、同最終報告書をご参照下さい。

2. <はじめに>について、
 なお、以下の指針は、必ずしも請求者の損害として認められる範囲の上限を画するものではなく、これを超える請求であっても、請求者側から「原子力損害」発生の事実(すなわち、本件事故による放射線の作用等と 相当因果関係にある「損害」であること)が立証された場合には、その賠償まで否定する趣旨のものではない。
 また、逆に、原賠法に基づく賠償制度は、他の法令等に基づく損害賠償と同じく、原子力事業者が惹起した原子力事故の放射線の作用等により生じた損害を金銭評価して填補するものであり、損失の公平かつ適正な分担を図る見地からしても、過大請求や重複請求等のいわゆる不当請求が排除されるべきことは当然である。

3. 「身体の傷害」について
 (指針)
 請求者の身体における傷害が、請求者側の立証により、本件事故によって放出された放射線又は放射性核種による放射線障害(急性放射線障害又は晩発性放射線障害)であると認められる場合には、当該請求者が被った損害は賠償の対象と認められる。
(備考)
 原子力安全委員会健康管理検討委員会の検討によると、JCOの周辺住民等に対する本件事故の放射線影響は、いわゆる確定的影響(ガン及び遺伝的影響以外の影響)が発生するレベルではないうえ、いわゆる確率的影響(ガン及び遺伝的影響)についても発生の可能性が極めて低いと考えられるものとされている。
 したがって、作業員3名以外の者からの放射線の作用等による身体の傷害を理由とする請求については、当該請求者の側から、本件事故により放出された放射線又は放射性核種による放射線障害であることが立証された場合に限り、その損害の賠償が認められるべきである。

4. 「検査費用(人)」について、
 (指針)
 本件事故の発生(平成11年9月30日午前10時35分)から避難要請の解除(同年10月2日午後6時30分)までの間のいずれかの時点に茨城県内に居た者(通過した者も含む。)が、身体の傷害の有無を確認する目的で、平成11年11月末までに受けた検査につき検査費用を支出した場合には、請求者の損害と認められる。

5. 「避難費用」について
(指針)
 請求者が現実に支払った以下の実費分が、損害と認められる。
 I) 屋内退避勧告がなされた区域内に居住する者が、避難するため現実に支出した交通費、行政措置の解除(平成11年10月2日)までに現実に支出した宿泊費及びこの宿泊に付随して支出した費用。
 II)上記区域内に住居を有している者が、屋内退避勧告がなされた区域外に滞在することを余儀なくされた場合には、現実に支出した宿泊費及びこの宿泊に付随して支出した費用。
(備考)
 但し、上記の指針により損害と認められる避難費用であっても、その賠償額は合理的・平均的な範囲内のものに限られ、過度に遠方に避難した場合や著しく高額な施設に宿泊した場合の損害額は、出捐額の全額ではなく、合理的・平均的な範囲に減縮された額とされるべきである。

6. 「検査費用(物)」について、
(指針)
 当該財物が本件事故の発生当時茨城県内にあり、当該財物の性質等から、検査を実施して安全を確認することが必要かつ合理的であり又は取引先の要求等により検査の実施を余儀なくされたものと認められ、平成11年11月末までに検査を実施した場合には、請求者が現実に支払った検査費用は損害と認められる。

7. 「財物汚損」について、
(指針)
 現実に発生した以下のものについては、損害と認められる。
I) 動産については、当該動産が本件事故の発生当時茨城県内にあり、その種類、性質及び取引態様等から、平均的・一般的な人の認識を基準として、本件事故により当該財物の価値の全部又は一部が失われたものと認められる場合には、現実に価値を喪失し又は減少した部分について損害と認められる。
II) 不動産については、
i) 売却予定のない所有不動産の価値が下落したことを理由とする請求については、現実の損害発生を認めることはできず、賠償の対象とは認められない。
ii) 不動産売買契約の解約、不動産を担保とする融資の拒絶又は売却予定価格の値下げを理由とする請求については、請求者の側が、当該不動産が屋内退避勧告のなされた区域内にあること、その不動産取引について既に売買契約等が締結されているか締結の可能性が極めて高い状況であり、対価額等も確定しているか確定しつつあること、平成11年11月末までに生じた解約や値下げであり、これらに応じざるを得なかった相当な事由があったこと、更に解約の場合には当該不動産を緊急に売却処分せざるを得なかった相当な事由があったこと、その解約や値下げが本件事故を理由とするものであること、当該請求の合理性(損害の発生と損害額)を立証した場合には、賠償が認められる余地がある。
iii) 賃料の減額を行ったこと又は本件事故後に賃貸借契約を解約されたことを理由とする請求については、請求者の側が、当該賃貸不動産が屋内退避勧告のなされた区域内にあること、現に賃貸借契約が締結されていたこと、平成11年11月末までに賃貸借契約の解約又は賃料の減額がなされ、これらに応じざるを得なかった相当な事由があったこと、賃料の減額又は解約が本件事故を理由とするものであること、当該請求の合理性(損害の発生と損害額)を立証した場合には、賠償が認められる余地がある。

8. 「休業損害」について、
(指針)
 屋内退避勧告がなされた区域内に居住地又は勤務先がある給与所得者、アルバイト及び日雇労働者について、行政措置により就労が不能となった場合には、就労不能の状況が解消された時点まで(避難要請が解除された平成11年10月2日から合理的期間経過後まで)に生じた給与等の減収が、請求者の損害と認められる。

9. 「営業損害」について、
(指針)
I) 茨城県内で収穫される農畜水産物及びこれらに関連する営業であり、広く茨城県県外を商圏とするものについては、生産あるいは営業の拠点が茨城県内にあり、取引の性質から相手方等が取引拒絶等の行動に及ぶこともやむを得ないものと認められ、現実に減収のあった取引について、事故調査対策本部の報告(平成11年11月4日)及び住民説明会(同年11月13,14日)等によって、正確な情報が提供され、かつこれが一般国民に周知されるために必要な合理的かつ相当の時間が経過した時点(同年11月末)までの期間に生じた減収分(売上高から売上原価を控除した売上総利益=粗利益の額)が損害と認められる。
II) 上記I)以外の営業については、営業の拠点が屋内退避勧告のなされた区域内にあり、取引の性質から相手方等が取引や利用の拒絶等の行動に及ぶこともやむを得ないものと認められ、現実に減収のあった取引について、事故調査対策本部の報告(平成11年11月4日)及び住民説明会(同年11月13,14日)等によって、正確な情報が提供され、かつこれが一般国民に周知されるために必要な合理的かつ相当の時間が経過した時点(同年11月末)までの期間に生じた減収分(売上高から売上原価を控除した売上総利益=粗利益の額)が損害と認められる。
(備考)
 さらに、上記要素を満たさない場合においても、請求者による個別・具体的な立証の内容及び程度如何では、相当因果関係が肯定される場合がある。

10. 「精神的損害」について、
(指針)
 本件事故において、身体傷害を伴わない精神的苦痛のみを理由とする請求については、損害の発生及び金額の合理性について請求者側に特段の事情がない限り、損害とは認められない。

 この原子力損害調査研究会、最終報告書につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい

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