御器谷法律事務所

人材派遣の判例

 労働者派遣や人材派遣に関する判例につき、実務上参考となると思われるものを挙げてみました。
 
1. 東京地判 平成9年12月26日
派遣労働者の無断欠勤による派遣会社の債務不履行責任と顧客企業の過失相殺7割

 労働者の派遣を受ける企業にとっては、派遣される労働者が、その私生活に乱れがあり、これがゆえに頻繁に職場放棄をするような責任感を欠如しているような労働者でないことは、その知識・経験・技術といった事柄以前の問題であり、最低限の条件である。特に、派遣を受ける企業は、当該労働者を短期間に即戦力として使用するため、自社の業務の内部に即時に入らせ、その執行を相当程度委ねる以上、信頼が大切であり、人間性・責任感に問題がないことは絶対的に必要な要件であるというべきである。
 原告は、人間性や私生活にわたる事柄は労働者の私生活・プライバシーの問題として会社は容喙し得ないなどと主張するが、労働者の派遣に対する世間一般の理解と異なる見解であり、賛成することはできない。労働者の派遣を受ける企業の期待が過度の期待又は誤解であるというのであれば、その旨を契約条件で明らかにすべきであり、パンフレットや契約書にその旨の注意書きをすべきである。
 そこで、原告が甲の右のような私生活に起因する問題を派遣業者として知り得たかについて検討するに、前記事実によれば、甲は以前に複数回にわたって給料の前借りをしたことがあるというのであるから、派遣業者としては、前借りの理由を子細に問い質し、借財の状況などについて解明すべきであり、そうすれば、甲のおかれた状況を多大な困難を伴うことなく知ることができたものということができる。使用者が自己の従業員が多重債務者かどうか、債務者から追及されて精神的に異常を来しているか否かなどを調べることは、右2に述べたように、会社として決して越権ではなく、許容されるべき事柄である。
 そうすると、原告は、被告に対し、本件労働者派遣契約に基づいて問題のある甲という労働者を派遣したことによって被告が被った損害を賠償する責任があるものというべきである。
 しかしながら、被告が甲の勤務不良によって損害を受けたことについては、被告代表者の供述によれば、被告会社に技術者が被告代表者のほかに配置されておらず、コンピューターソフト開発に注文があると、これを人材派遣会社に技術者の派遣を依頼し、当該依頼者に任せ切りにし、その業務の執行について指導監督をほとんどしておらず、甲のケースも同様であったことが認められ、このため、甲の私生活の乱れについて、日常接触のより多い被告こそがいち早く発見すべきであったのに、発見できなかったことなどを考えると、甲の勤務不良による損害の発生には、被告は原告よりもはるかに大きく起因していたものというべきであり、被告の被った損害の全額の賠償を肯認するのは余りにも不公平であり、その三割に相当する六三万円をもって原告に対し損害賠償を請求し得るにすぎないものというべきである。
 
2. 東京地判 平成8年6月24日
派遣労働者の横領と派遣会社の使用者責任(認容)

 争点(3)については、右のとおり被告甲の本件現金取扱い業務が本件契約に基づく業務内容であること、同人は、被告会社に雇用されて原告へ派遣され、同会社から給与の支払いを受けていたこと、同会社の派遣担当のAが定期的に原告を訪れ、被告甲の仕事振りを見て監督していたこと、実質的な派遣料(派遣料から同人への給与を控除した額で給与の約半額にも及ぶ)は、被告会社による派遣労働者の指導監督の対価の意味もあると考えられること、同会社は、原告から被告甲の住民票の提出の要請があったのに拒んだこと、本件契約第七条で損害補償を規定すること等からすると、同人の本件領得行為は、本件契約に基づく派遣業務としての被告会社の職務の執行につきなされたものと解される。
 争点(4)については、以上認定し検討した結果及び左記5に照らすと、被告会社において、被告甲の選任及びその職務執行の監督について相当の注意を尽くしているとは到底言えない。
 争点(5)については、前記認定事実によれば、被告甲の前記内訳書への転記が正確になされているかについて、同人の派遣先の上司であるB等の監視、確認がその都度厳格になされていれば、本件領得を未然に防げた可能性が高いと考えられるけれども、他方、各種給付金は、社内従業員が支給の額や時期を予測できるものが多いため、領得された場合ほどなく苦情が出されることから(本件領得も受給該当者の苦情が発覚の端緒となった)一定の監視が及んでいると言えること、前記内訳書への記載も経理担当者が隣にいる机の上で作成されていること、過去において各種給付金の領得の事故はなかったこと、右事情において、故意に各種給付金を領得した被告甲に対する本件損害賠償請求につき原告の過失相殺を認めるのは相当でないところ、被告会社は、被告甲から住民票の提出も受けないで雇用して原告に派遣し、派遣後は右3のとおり被告甲を監督し派遣料を得ていたことに照らすと、被告会社に対する損害賠償請求につき原告の過失相殺を認めるのも相当でない。

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