御器谷法律事務所

親事業者の11の禁止事項

 親事業者は、下請事業者に対し、次の11項目に該当する行為をしてはなりません(下請法第4条)。この親事業者の11項目の禁止事項は、たとえ下請事業者の同意があっても、又、親事業者に違法性の認識がなくても、これに違反すると下請法違反となりますので十二分に留意しなければなりません。

第1 受領拒否(下請法第4条1項1号)
  1. 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の受領を拒むことをいいます。 この規定の趣旨は、下請事業者の納入物は転売できないものが多いので、受領拒否を禁じることによって下請事業者の利益を守ることにあります。

  2. 「下請事業者の責に帰すべき理由」とは、下請事業者が、注文内容と異なる給付をした場合や、給付内容に瑕疵がある場合、又は納期までに給付されなかったことによって不要になった場合をいいます。ただし、後者に関して、納期が親事業者によって一方的に決定された場合などは除かれます。

  3. 「受領」とは、親事業者が、下請事業者からの納入物品を事実上の支配下に おくことをいいます。検査の有無は問いません。

  4. 次の点は要注意です。
    (1)親事業者が、発注の取消しや納期の延期、仕様変更、販売先の売れ行き不振、在庫調整等を理由に受領しないことや、下請業者が契約内容どおりに作成したにもかかわらず、注文と異なるとすることも受領拒絶に当たります。ただし、納期前は親事業者に受領義務がないので、納期前であれば受領拒絶にはなりません。
    (2)役務提供委託の場合には、受領がないため、受領拒否にはなりませんが、後述の「不当な給付内容の変更」に当たる場合があります。
    (3)業種によっては、親事業者が在庫調整するために必要なときに、必要な分量だけ生産するジャスト・イン・タイム生産システムを採用している会社があります。このシステムでは、親事業者が、注文書で納入日、納入数量を決定した後に、生産調整のために納入指示カードによって微調整することになります。
     この微調整によって、納入日が遅れたり、納入日ごとの納入数量が少なくなったことによって、下請事業者に保管や運送費等の費用が発生した場合には、親事業者はこれを全額負担しなければ、受領拒否又は不当な給付内容の変更となる可能性があります。また、親事業者の一方的な都合によって生産を変更、取消し、打切りした場合には、下請事業者が既に生産した納入物をすべて受領しなければ同様の問題が生じます。
    (4)放送番組の製作委託において、下請事業者が製作を完了した後、親事業者が指定した番組出演者の不祥事が発覚した場合に、当該番組を放送できなくなったことを理由として受領を拒否することはできません。

第2 代金の支払遅延(下請法第4条1項2号)
  1. 親事業者が、下請事業者から給付を受領した日又は役務を提供された日から60日以内に定められた支払期日までに、下請代金を支払わないことをいいます。
     この規定の趣旨は、下請代金の支払は、下請業者の資金繰りや賃金の支払、仕入代金の支払等にとって極めて重要な意義を有するので、代金支払を確保することにあります。

  2. 支払期日には、次の3パターンがあります。
    (1)支払期日が受領日から60日以内に設定されている場合は、その支払期日までに支払われないとき。
    (2)支払期日が受領日から60日を越えて設定されている場合は、受領日から60日以内に支払われないとき。
    (3)支払期日が設定されていない場合は、受領日に支払わないとき。

  3. この代金の支払遅延については、次の諸点は要注意です。
    (1)納入物品を受領すれば、検収の有無に関係なく支払期日は確定するので、親事業者は、検査に必要な期日を見込んで支払期日を設定する必要があります。ただし、情報成果物作成委託においては、親事業者が、その情報成果物が一定の水準に達しているかを確認するために一時的に支配下におくことは、一般的には受領したことにはならないでしょう。確認の時点で受領とする旨の事前の合意を要すると思われます。
    (2)役務提供委託の場合には、役務の提供がなされた日が支払期日の起算日となります。
    (3)締切の制度を採っている場合には、60日以内といっても実務上は「2ヶ月以内」として運用されています。例えば、月末締めの翌月末日払いの約定のときは、61日〜62日となっても下請法の違反とはされていません。
    (4)月末締めの翌月末払いという運用をしている場合には、締切後30日(1ヶ月)以内に支払うということになります。支払をさらにその翌月にずれ込ますことはできません。
    (5)下請事業者の責に帰すべき理由によって、やり直しをさせる場合は、やり直し後の納品を受領した日が起算日となります。
    (6)支払期日を毎月の特定日に設定している場合などに、金融機関の休業日にあたることがあります。その場合には、あらかじめ親事業者と下請事業者との間で、支払期日を金融機関の翌営業日に順延する旨を合意し、書面化してください。この場合に、60日を超えることは問題ありません。
    (7)下請事業者からの請求書がなくても、支払期日は受領後60日以内となります。請求書がない場合は、親事業者は下請事業者に対し、速やかに提出するよう督促してください。
    (8)支払遅延が生じた場合には、親事業者は下請事業者に対し、受領後60日を経過した日から支払をする日までの期間、年率14.6%の遅延利息の遅延利息を支払う義務が生じます。

第3 代金の減額(下請法第4条1項3号)
  1. 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、発注後に下請代金の額を減ずることをいいます。一般的に下請業者は立場が弱く、発注後に減額を要請され、断りきれないことがあるので、それを防止する趣旨の規定です。

  2. 「下請事業者の責に帰すべき理由」は、上述の「受領拒否」の場合と同様です。この場合には、客観的に相当と認められる金額をその給付に係る下請代金の額を減じることは許されます。また、給付物の価値の低下が明らかな場合にも客観的に相当な額を減額することは許されますし、親事業者が給付物の瑕疵を自ら修補した場合に、要した費用を減額することも許されます。

  3. 次の点は要注意です。
    (1)下請事業者の責に帰すべき理由なく下請代金から減額することは、歩引き、リベート、システム利用料などの名目、方法いかんを問わず、本規定に反する可能性があります。これは、たとえ下請事業者の同意があっても、不当減額となります。
    (2)この規定は強行法規であるため、下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、行為の外形から客観的に減額と判断される場合には、たとえ下請業者の合意があっても、本規定に反することになります。例えば、遡及値引きや、協力値引き、金利引きもその率によっては、不当減額となることがあります。
    (3)いわゆるボリュームディスカウントにおける割戻金については、その内容が書面化され、3条書面にも反しないときは、許容されうると考えられます。

第4 返品(下請法第4条1項4号)
  1. 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付を受領した後下請事業者にその給付物を引き取らせることをいいます。この規定の趣旨は、下請事業者の給付物は転売不可能なものが多いので、返品を防止することによって、下請事業者の利益を守ることにあります。

  2. 「下請事業者の責に帰すべき理由」とは、「受領拒否」の場合と同様、下請事業者が、契約内容と異なる給付をなした場合や、給付内容に瑕疵がある場合をいいます。「受領拒否」の場合には、納期までに給付されなかったことによって不要になったことを理由として受領拒否をすることが可能でしたが、本規定においては、一旦受領し、給付が注文内容と異ならず、瑕疵がなかった場合には、同じ理由があっても返品することはできません。

  3. 以下の点は要注意です。
    (1)通常の検査で直ちに発見できる瑕疵があった場合には、遅滞なく返品する必要があります。
    (2)通常の検査で直ちに発見できない瑕疵があった場合には、受領後6ヶ月以内に返品しなければなりません。但し、一般消費者に対して、6ヶ月を超えて品質保証期間を設定している場合において、その保証期間が1年以内であれば、返品することが可能です。

第5 買いたたき(下請法第4条1項5号)
  1. 下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し、通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金を不当に定めることをいいます。「買いたたき」は発注段階に生じるという意味で、発注後の「下請代金の減額」と区別されます。この規定の趣旨は、親事業者がその地位を利用して、下請代金を不当に低廉な価格で設定することを防止し、下請事業者の利益を保護することにあります。

  2. 「通常支払われる対価」とは、当該下請事業者の属する取引地域において一般に支払われる対価、すなわち、市場価格のことをいいます。市場価格が判断できない場合には、従来からの取引価格によって判断されます。

  3. 「著しく低い下請代金を不当に定める」に該当するか否かは、通常支払われるべき対価と実際の下請代金との乖離状況、原材料等の価格動向、下請代金の額の決定に当たり、下請事業者と十分な協議が行われたかどうか等の対価の決定方法、あるいは他の下請事業者と比べて差別的であるかどうかなど対価の決定内容を斟酌して判断されます。

  4. 以下の点は要注意です。
    (1)大量の発注を前提とした単価を、少量の発注の場合にもこの単価を基準に下請代金を設定することは、「買いたたき」に当たる可能性があります。
    (2)情報成果物作成委託において、たとえ通常の対価が設定されていた場合でも、給付の内容に知的財産権が含まれているにも拘らず、当該知的財産権の譲渡対価を含めなかったときには、「買いたたき」に当たる可能性があります。

第6 強制購入、強制利用(下請法第4条1項6号)
  1. 親事業者が下請事業者に対し、自社製品や原材料など自己の指定する物を強制して購入させ、又はサービスなどを強制して利用させることをいいます。但し、下請事業者の給付の内容を均質にし、又はその改善を図るため必要がある場合その他正当な理由がある場合を除きます。このような行為は、立場の弱い下請事業者の利益を不当に害するため、禁止されます。

  2. 下請事業者が親事業者の要請に任意に応じて購入した場合には、本規定には該当しないですが、実際には下請事業者は要請を断ることが困難な場合が多々あります。そこで、「強制」にあたるか否かは親事業者の依頼の状況など、客観的事実から実質的に判断されます。

  3. 以下の点は要注意です。
    (1)下請事業者と直接取引している親事業者の担当者が、購入及び利用を要請した場合は、「強制」に当たる可能性があります。
    (2)下請事業者ごとに、目標額や目標量を設定していた場合には、「強制」に当たる可能性があります。

第7 報復(下請法第4条1項7号)
  1. 下請事業者が公正取引委員会又は中小企業庁に対し、禁止事項にあたる事実を知らせたことを理由として、親事業者が、取引の数量を減じ、取引を停止し、その他不利益な取扱いをすることをいいます。この規定の趣旨は、親事業者の報復を禁じることによって、下請事業者の申告を促進するとともに、公正取引委員会及び中小企業庁の実効的な監督行政を実現することにあります。

第8 原材料等を購入させた場合の早期決済(下請法第4条2項1号)
  1. 親事業者が、下請事業者に給付に必要な半製品、部品、付属品又は原材料(以下、「原材料等」という。)を自己から購入させた場合において、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、この原材料等を用いる給付に対する下請代金の支払期日より早い時期に、原材料等の対価を支払わせたり、下請代金から控除することをいいます。この規定の趣旨は、上述の「支払遅延」と同様、下請代金の額が減り、下請事業者の資金繰りが悪化するといった不利益を防止することにあります。

  2. 本規定の適用は自己から購入させた場合に限定されます。上述第6の「強制購入」の場合とは、第三者からの購入を含む点で異なります。

  3. 「下請事業者の責に帰すべき理由」とは、下請事業者が支給された原材料等を毀損、損失したため、親事業者への給付が不可能となった場合や、支給された原材料等を使って不良品や注文と異なる給付をなした場合などをいいます。

  4. 以下の点は要注意です。
    (1)下請事業者の要望によって、親事業者が下請事業者の代わりに原材料等を調達した場合であっても、早期決済はできません。
    (2)親事業者が、向こう数か月分の原材料等を一度に支給し、下請事業者が毎月一定数を納品する場合において、最初の支払時に支給した分全額を控除することはできません。納品した分に要した原材料等の数量に応じた額を控除できるに留まります。

 第9 一般の金融機関による割引が困難な手形の交付(下請法第4条2項2号)
  1. 下請代金の支払いにつき、当該下請代金の支払期日までに一般の金融機関による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付することをいいます。この規定の趣旨は、親事業者が、下請事業者に対する支払代金の決済として、一般の金融機関による割引が困難な手形を交付は、下請事業者の資金繰りを悪化させる危険性があるので、これを防止し、もって下請事業者の利益を保護することにあります。

  2. 「一般の金融機関」とは、預金または貯金の受入れ及び資金の融通を業とする者をいい、銀行、信用金庫、信用組合、商工組合中央金庫などがこれに含まれます。いわゆる街の貸金業者はこれに含まれません。

  3. 「割引が困難な手形」とは、一概には確定できませんが、公正取引委員会及び中小企業庁の見解によれば、実務の運用として、手形期間が繊維業で90日、それ以外の業種で120日を越える手形が、これに当たることになります。

第10 不当な経済上の利益の提供(下請法第4条2項3号)
  1. 親事業者が自己のために、下請事業者に金銭、役務、その他の経済上の利益を提供させることをいいます。この規定の趣旨は、立場の弱い下請事業者が、協賛金や従業員の派遣など契約内容にない経済上の利益を提供させられることを防止することにあります。

  2. 「金銭、役務、その他の経済上の利益」には、協力金や協賛金などの拠出や労働者の派遣等、名目のいかんを問わず含まれます。

  3. 以下の点は要注意です。
    (1)「自己のために」とは、親事業者の子会社に対して経済上の利益を提供させることも含まれます。
    (2)「提供させる」というのは強制的要素が含まれますが、その判断に当たっては客観的事実が斟酌されます。下請事業者と直接取引している親事業者の担当者が、下請事業者に対し、金銭あるいは労働力などの提供を要請した場合や親事業者が下請事業者ごとに金銭あるいは労働力の提供の目標額や目標量を設定していた場合には、本規定に反する可能性があります。

第11 不当な給付内容の変更、やり直し(下請法第4条2項4号)
  1. 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の内容を変更させ、又は下請事業者の給付を受領した後に、給付をやり直させることをいいます。親事業者が再び受領することを拒む「返品」とは区別されます。下請事業者が契約内容に即した給付をしたにも拘わらず、親事業者が増加費用の負担もなしに給付内容を変更し、またはやり直しをさせることは下請事業者の利益を害するので、これを防止する趣旨の規定です。

  2. 給付の受領後であっても、注文内容と異なる場合や給付に瑕疵がある場合には、「下請事業者の責に帰すべき理由」があるとして、給付内容の変更及びやり直しをさせることは可能です。受領前であれば、注文内容と異なることや給付に瑕疵があることが、合理的に判断される場合に、給付内容の変更あるいはやり直しをさせることが可能です。また、下請事業者から自発的に給付内容を変更することも可能です。

  3. 以下の点は要注意です。
    (1)通常の検査では注文内容と異なること又は給付に瑕疵があることを発見できなかった場合でも、受領後1年を経過すれば、給付内容の変更及びやり直しをさせることはできません。ただし、親事業者がユーザに対し、1年を超える保証期間を設定した場合において、下請事業者のとの間でも受領前に同じ期間の瑕疵担保期間を設定した場合には、当該期間内において給付内容の変更及びやり直しをさせることは可能です。
    (2)発注後に当初の発注数量を増加させた場合には、給付内容の変更ではなく、新たな発注となるので、別途3条書面の交付が必要です。

 この親事業者の11の禁止事項につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい

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