御器谷法律事務所

出版、販売の禁止

○出版、販売等禁止の仮処分とは、
 一般的には、個人の名誉権やプライバシーを侵害する書籍や雑誌、ビラなどの出版、頒布、販売等を禁止する裁判所の仮処分命令のことを指します。
 民事保全法上の仮の地位を定める仮処分の一類型とされています。
 具体的には、「債務者は、別紙〜の書籍につき、〜頁から〜頁までの「 〜 」に関する記事を切除又は抹消しなければこれを販売したり配布、第三者に引き渡してはならない。」、「債務者は、〜書籍の占有を解いて、これを〜裁判所執行官に引き渡さなければならない。」、「執行官は、〜の書籍を保管しなければならない。」等の主文があります。
 憲法は、出版の自由を表現の自由として尊重する一方、個人の名誉やプライバシーも個人の尊厳として保護しているだけに、個人の名誉やプライバシーを侵害する出版等に対して、その事前の差し止めが認められるか否かにつき重大な問題が存します。
 この問題につき最高裁判所は、北方ジャーナル事件につき、一つの回答をしています。

○問題点
 北方ジャーナル事件について最高裁判決は、その問題点を次のように整理しています。
(1) 出版禁止の仮処分は、憲法§21・(2)前段の「検閲」に該当するか?
(2) 名誉権に基づく差止め請求の可否?
(3) 出版物の頒布等の事前差止めは許されるか?
(4) 例外的に事前差止めが許される要件は何か?

○最高裁判所昭和61年6月11日判決
−北方ジャーナル事件−
(1) について
 仮処分による事前差止めは、表現物の内容の網羅的一般的な審査に基づく事前規制が行政機関によりそれ自体を目的として行われる場合とは異なり、個別的な私人間の紛争について、司法裁判所により、当事者の申請に基づき差止請求権等の私法上の被保全権利の存否、保全の必要性の有無を審理判断して発せられるものであって、右判示にいう「検閲」には当たらないものというべきである。
(2) について
 人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価である名誉を違法に侵害された者は、損害賠償(民法710条)又は名誉回復のための処分(同法723条)を求めることができるほか、人格権としての名誉権に基づき、加害者に対し、現に行われている侵害行為を排除し、又は将来生ずべき侵害を予防するため、侵害行為の差止めを求めることができるものと解するのが相当である。けだし、名誉は生命、身体とともに極めて重大な保護法益であり、人格権としての名誉権は、物権の場合と同様に排他性を有する権利というべきであるからである。
(3) について
 出版物の頒布等の事前差止めは、このような事前抑制に該当するものであって、とりわけ、その対象が公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等の表現行為に関するものである場合には、そのこと自体から、一般にそれが公共の利害に関する事項であるということができ、前示のような憲法21条1項の趣旨に照らし、その表現が私人の名誉権に優先する社会的価値を含み憲法上特に保護されるべきであることにかんがみると、当該表現行為に対する事前差止めは、原則として許されないものといわなければならない。
(4) について
 ただ、右のような場合においても、その表現内容が真実でなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものでないことが明白であって、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるときは、当該表現行為はその価値が被害者の名誉に劣後することが明らかであるうえ、有効適切な救済方法としての差止めの必要性も肯定されるから、かかる実体的要件を具備するときに限って、例外的に事前差止めが許される。
(5) 本件の具体的判断
 北海道知事選挙に重ねて立候補を予定していた被上告人の評価という公共的事項に関するもので、原則的には差止めを許容すべきでない類型に属するものであるが、・・・同被上告人に対することさらに下品で侮辱的な言辞による人身攻撃等を多分に含むものであって、到底それが専ら公益を図る目的のために作成されたものということはできず、かつ、真実性に欠けるものである・・・北海道知事選挙を二ヶ月足らず後に控えた立候補予定者である同被上告人としては、本件記事を掲載する本件雑誌の発行によって事後的には回復しがたい重大な損失を受ける虞があった。

この出版、販売の禁止につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい

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