御器谷法律事務所

マンションの建替え

第1 マンションの建替え
マンションの建替えとは、現に存在している分譲マンションを取り壊して、新たな分譲マンションを建築することをいいます
 日本では、昭和40年頃から、マンションの普及が急速に進みました。それ以降マンションの供給は高い水準で推移しており、現在においてもマンションの戸数は着実に増加しています。
 その一方で、マンションの老朽化が社会問題として取り上げられるようになってきました。マンションの建替えの目安は築年数が30年を超えた場合とされています。昭和40、50年代に建築されたマンションは築後30年を超えており、老朽化に対応する必要があります。
 しかしながら、マンションは一戸建て住宅と異なり、いわば個々の住宅の集合体であり、人的結合関係があります。したがって、マンションの老朽化に対応すべく、建替えを行うか否かは、区分所有者全員で決すべき問題であり、建替え実施に当たっては一定割合の区分所有者の承認が必要となります。そこで、マンションの建替えにあたっては、区分所有者間のマンション建替えに関する合意形成が重要なポイントとなっています。

第2 建替えの手続き
1 建替え手続きの概略図
一般的なマンションの建替えのプロセスを大まかに図式化すると下記のようになります。
建替えの必要性の発生
    
管理組合に建替え検討・推進組織を設置
    
建替え推進の総会決議
    
建替え計画委員会の設置、事業協力者の選定
    
建替え決議
    
建替組合設立
    
権利変換計画の認可
    
新マンション建設工事着工
    
新マンション竣工
2 各手続の概要
 (1) 管理組合内に建替え検討・推進組織の設置
 建替えを発意した有志によって構成される建替え検討・推進組織を理事会の諮問機関として設置し、建替えに関する基礎情報を収集し、建替えに関する基本的事項を検討します。この際、建替え決議が必要な建替えか、通常の決議で足りる修繕であるかを判断することになります。老朽化したマンションについて修繕で足りるのか、建替えが必要なのか、その判断基準は一義的に定まっておりませんが、国土交通省から発表されている「マンションの建替えか修繕かを判断するためのマニュアル」等を参考に費用対改善効果を検討し、判断されることになります。
 (2) 建替え推進の総会決議
 理理事会への建替えの必要性や建替え計画を策定する必要があることの提言を経たうえで、管理組合総会で建替えを計画すること、そのための予算や検討組織などを決議します。
 法律上要求される手続きではないので、普通決議で決議を行うことができますが、ここで大多数の賛成が得られない場合には、建替え決議で必要とされる区分所有者数の5分の4以上および議決権総数の5分の4以上の賛成を得ることは困難でしょう。ここで大多数の賛成を得るためにも、建替えについての入念な調査・検討が必要といえます。
 (3) 建替え検討委員会の設置、事業協力者の選定
 総会決議を経て、建替え計画の検討を行う委員会を設置することになります。そのうえで、検討委員会が専門家や事業協力者を選定し、それらの者に建替え事業の進め方の助言を受けたり、具体的な建替え計画の作成を依頼したりします。
 ここで、策定された建替え計画について、建替え決議を得ることになります。
 (4) 建替え決議
 建替えを行うためには、区分所有法に定められた手続きに従って、建替えを行うことの総会決議を経なければなりません。建替え決議は区分所有者に重大な影響を及ぼすので、その手続きは慎重なものになっており、決議要件は加重されています。
 建替え決議については、金銭的負担の観点や、仮住居を探すことが煩わしい、建替えの時期尚早といった理由で、建替えに反対する区分所有者が存在することも多く、建替え決議で承認された場合においても、承認決議の有効性が争われる場合が見受けられます。
 また、建替え決議内容に反対し、建替え決議の内容による建替えに参加しない区分所有者等に対しては、後記の建替組合から時価による区分所有権の売り渡し請求をなすことができます(建替え円滑化法第15条)が、この際、時価の算出方法が争われる場合が見受けられます。
ア 建替え決議の手続き
建替え決議をなす場合、通常の総会と違って、招集通知に以下の事項を記載・添付して、決議の2か月前に通知しなければなりません(区分所有法第62条第4項、第5項)。また、通知した事項について、総会の1か月前までに説明会を開催しなければなりません(区分所有法第62条第7項)。
1) 会議の目的
2) 議案の要領
3) 建替えを必要とする理由
4) 建替えをしないとした場合における建物の効用の維持および回復に要する費用の額および内訳
5) 修繕契約の内容
6) 修繕積立金の額
イ 建替え決議で定める事項(区分所有権法第62条第2項)
1)新たに建築する建物の設計の概要
2)建築費用の概算額
3)建築費用の分担に関する事項
4)再建築物の区分所有権等の帰属
ウ 議決要件
区分所有者総数の5分の4以上および議決権総数の各5分の4以上の賛成を必要とする(区分所有法第62条第1項)。
 (5) 建替組合設立
 建替え決議がなされると、次は建替え円滑化法に従って、建替えを進めることになります。
 まずは、建替えに賛成した5人以上の発起人が共同して、マンション建替組合の運営ルールを定める「定款」及び建替え計画をまとめた「事業計画」を策定します(マンション建替え円滑化法第7条、第9条、第10条)。
 そして、建替え賛成者の4分の3以上の同意を得て、マンション建替え組合成立の申請を都道府県知事に対して行います(建替え円滑化法第9条)。
 この建替組合が、法人格を持った組織として、建替え事業の施行者となり、建替えに関する各種手続きを行うことになります。
 (6) 権利変換計画の認可
 権利変換とは、建替え前のマンションの区分所有権を建替え後のマンションの区分所有権に移行させることをいいます。建替え組合において、権利変換計画を策定し、決議をしたうえ(建替え円滑法第57条第2項)で、都道府県知事の認可を得なければなりません(建替え円滑化法第57条第1項)。権利変換計画の認可を受けた後、工事請負契約の締結や区分所有権者の仮住まいへの転居が行われ、新マンション建設工事が着工されることになります。

第3 建替えに関する裁判例
(1) 建替え決議の有効性が否定された裁判例(東京高裁平成19年9月12日判決)
「建替え決議は、建物を取り壊し、『当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地』に新たに建物を建築する旨の決議である(区分所有法62条1項)から、再建建物の敷地は決議事項そのものであって、建替え決議に際して、敷地が特定されている必要がある。控訴人らは、本件議案添付の図面等からすれば、再建建物の敷地は、十分に明らかであると主張するが、同図面は、再建建物の1階平面図であって、方位や道路等は記載されているものの、同図面からは、敷地の地番や正確な範囲は判明しないから、同図面が添付されていることをもって、本件建替え決議において、敷地が特定されているということはできない
 また、区分所有建物の建替えは、多額の費用負担を伴い、反対者にとっては区分所有建物の売渡しが強制される場合がある(区分所有法63条4項)など、極めて重大な効果を生じさせるものであり、区分所有法62条2項が、建替え決議において、同項1号から4号までに掲げる建替え計画の概要を定めなければならないと規定する趣旨は、区分所有者が賛否の意思決定をするために、建替え計画の概要が開示される必要があること及び建替え決議が単なる取壊しの手段として利用されることがないようにすることにあることからすれば、同項に規定する建替え計画は、実現可能性があるものでなければならず、かつ、区分所有者がこの点について判断できるだけの具体性がなければならないというべきである。さらに、同項1号の『再建建物の設計の概要』は、建築に要する費用の算定等の決定が可能な程度に設計の内容の特定が必要なところ、敷地が特定されなければ、再建建物の建ぺい率、容積率、日影規制、高度規制などの諸規制の適用関係が明らかではなく、再建建物の建築面積、延床面積、地上階数等も具体的に定まらないことになるから、建替え計画の実現可能性の検討も、建築に要する費用の算定も困難である。
 以上によれば、本件議案は、再建建物の敷地の特定がされていない点において、区分所有法62条2項1号の要件を満たしていないものというべきである。
 ・・・ところで、本件マンションの敷地利用権は地上権であるから、同敷地上に再建建物を建築する場合には、建替えに際して、地上権を更新するのか否か、更新するとすれば、その際の更新料、承諾料、更新後の地代、又は更新せずに権利返還等により地上権を解消し、新たな敷地利用権等を取得するとすれば、その具体的な手法及び費用等を明らかにしない限り、建替え計画の実現可能性の検討も、建築に要する費用の算定も困難であり、本件議案は、これらの点について定めていない点において、区分所有法62条2項1号の要件を満たしていないというべきである。」
(2) 区建替えに参加しない者に対して売渡請求権が行使された場合の時価を算定した裁判例(大阪地裁平成11年3月23日判決)
本件団地の敷地全体の更地価格が97億3900万円で、一戸あたり3580万円と算定されていること、建物価格は300万円程度であると認められること、建物及び土地の合計額(基準時平成8年4月1日)が4076万5000円と算定されていることを総合考慮すると、区分所有建物価格は、少なくとも一戸あたり4080万円を下ることはないと認められる。
 よって、非参加者らは買受指定者に対し、各金4080万円の支払いを受ける(なお、区分所有権の共有者は不可分債権として同額の代金債権を取得するものと解される)のと引き換えに、各区分所有建物につき、前記売渡し請求権の意思表示到達日売買を原因とする所有権移転登記をなすべき義務を負担し、かつ、建物明渡しをすべきである。」

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