御器谷法律事務所

食のリコール


1. 食のリコールとは、
 食のリコールとは、食品に不良や欠陥があるか、またはその疑いがある場合に、事業者が自発的に、もしくは主務大臣等に命じられて強制的に、その食品を流通過程及び消費者から回収することを指します。
 回収を行なうことによる事業者の負担は、小さいとは言えません。しかし、回収を怠ったために具体的被害が生じた場合や、法律違反であることを知りながら放置していたことが明らかとなった場合の事業者の負担は、回収を行なうことによる負担とは比べものにならないほど大きなものです。事業者の責務として、速やかな対応を取ることが重要と考えます。

2. 食のリコールの理由
 では、どのような場合に食のリコールが問題となるのでしょうか。
(1) 有害物質
 まず、食品に病原体や異物等の有害物質が含まれていた場合が考えられます。この場合には、食品衛生法6条に違反する可能性があり、同法第54条に基づいて、厚生労働大臣又は都道府県知事(保健所を設置する市・区の場合には、市長・区長、同法第66条)から、問題の食品の廃棄又は食品衛生上の危害を除去するために必要な処置をとることを命じられることがあります。この命令に従わない場合、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられます(同法第71条)。
 有害物質を含むおそれのある食品を扱っている場合には、まず管轄する保健所に相談することが望ましいと考えられます。保健所に相談することで、直ちにリコールをしなくてはならないというわけではなく、保健所によって問題の食品の安全性が確認された場合には、必ずしもリコールの必要はないとされています。
(2) 不当表示
 次に、産地偽装や賞味期限の改ざん等、食品表示に誤りがあった場合が考えられます。
 食品を販売する事業者は、食品衛生法やJAS法等によって定められた基準に従って、必要な表示を行わなければなりません。
 食品衛生法第19条は、公衆衛生の見地から、厚生労働大臣は食品等に関する表示につき基準を定めることができ、事業者はその基準に従わなければならないことを定めています。この規定に違反した場合、同法第55条により営業許可の取消等が命じられることがありますが、食品の回収に関する直接の規定はありません。
 JAS法第19条の13の2は、食品表示に対する消費者の信頼を確保するため、事業者に対して、品質表示基準の遵守義務を定めています。品質表示基準とは、同法第19条の13に基づき内閣総理大臣が個別に定めるものです。原則として、この遵守義務に違反した場合には、立入検査(同法20条2項)又は任意調査の後に公表及び指導を受けることがあり、従わない場合には農林水産省、地方農政局又は都道府県による改善指示(同法第19条の14第1項)を受け、それにも従わない場合には農林水産大臣による改善命令(同法第19条の14第3項)を受け、それにも従わない場合には、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(法人の場合には1億円以下の罰金)に処せられます(同法第24条第8号、第29条第1項第1号)。例外として、原産地について虚偽の表示をした事業者は、上記の流れを経ずに、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金(法人の場合には1億円以下の罰金)に処せられます(同法第23条の2、第20条第1項第1号)。JAS法違反や違反のおそれのある事実を発見・確認した場合には、食品表示に対する消費者の信頼を確保するためにも、速やかに農林水産省へ自主申告することが望ましいとされています。
 また、不正競争防止法により、不当表示が問題となることがあります。
(3) 無認可添加物
 そして、食品に無認可添加物を使用していた場合にも、リコールの問題が考えられます。
 食品添加物は、食品衛生法第10条により指定制がとられ、厚生労働大臣が人の健康を害するおそれがないと認めたもの以外は、原則として製造も使用も販売も禁止されています。この規定に違反した場合、同法第54条に基づき、厚生労働大臣又は都道府県知事(保健所を設置する市・区の場合には、市長・区長、同法66条)から、問題の食品の廃棄又は食品衛生上の危害を除去するために必要な処置をとることを命じられることがあります。この命令に従わない場合、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられます(同法第71条)。

3. 近時の食のリコールに関する事例
(1) 有害物質
ア 2008年1月30日、ジェイティーフーズ株式会社は、中国から輸入・販売した冷凍餃子について、消費者が嘔吐・めまい等を伴う重大な健康被害を訴え、警察の検査により有機リン系殺虫剤のメタミドホスが検出されたため、商品を回収し、返金することを公表しました。
イ 2009年12月15日、富士貿易株式会社が輸入したフランス産のブルーベリージャムから、食品衛生法の基準を超える放射能が検出されたため、横浜市は同社に対し、食品衛生法第54条に基づく回収命令を行いました。
ウ 2009年4月20日、コストコホールセールジャパン株式会社は、アメリカから輸入・販売したピスタチオについて、製造者であるセットンピスタチオ社の報告によりサルモネラ菌汚染の恐れがあることが判明したため、商品を自主回収し、返金することを公表しました。
(2) 不当表示
ア 2007年8月15日、石屋製菓株式会社は、自主検査によって、販売している「白い恋人」のうち、「30周年キャンペーン限定商品」を再包装するにあたって、本来の賞味期限より1ケ月間伸長していたことが発覚したため、回収することを公表しました。
イ 平成20年8月29日、サンライズフーズ株式会社は、うなぎの蒲焼きの産地を偽装するという不適正表示に対する措置として、農林水産省からJAS法第19条の14第3項の規定に基づく改善命令を受けました。
(3) 無認可添加物
ア 2003年9月、株式会社ダスキンが運営するミスタードーナツにおいて、無認可の食品添加物TBHQを使った肉まんを、食品衛生法違反であることを知りながら2000年10月から販売していた事件で、大阪府警はダスキン本社と近くのミスタードーナツ本部の2か所を食品衛生法違反容疑で捜索し、ミスタードーナツは、食品衛生法第23条違反として、罰金20万円に処せられました。その後、株主代表訴訟を提起され、TBHQの混入が判明した時点で、直ちにその販売を中止し在庫を廃棄すると共に、その事実を消費者に公表するなどして販売済みの商品の回収に努めるべき社会的な責任があったとして、担当取締役に対して53億、その他の取締役及び監査役に対して5億5805万〜2億1122万の請求が認められました(大阪高判平成18年6月9日)。
イ 2009年12月22日、株式会社イマイは、ブラジルより輸入した「Bauducco ウエハースショコラッテ165g」から、食品衛生法に定めのない酸化防止剤TBHQが検出されたため、回収を行うことを公表しました。
ウ 2009年12月15日、有限会社フェディラルトレーディングカンパニーが輸入した「ミルクジャム DOCE DE LEITE MUMU」から、当該食品への使用が禁止されている添加物ソルビン酸が検出されたため、浜松市は同社に対し、食品衛生法第54条の規定に基づく回収命令を行いました。

 この食のリコールにつきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい


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