御器谷法律事務所

三井住友銀行金利スワップ事件


1. 三井住友銀行金利スワップ事件とは、
 三井住友銀行が、自己と融資取引関係にある、取引上の地位が自行より劣っている事業者に対して、金利スワップの購入を提案し、金利スワップを購入することを融資の条件である旨、又は、金利スワップを購入しなければ融資の際不利な取扱いをする旨を明示又は示唆することによって、金利スワップの購入を要請し、この購入を余儀なくさせた、との事件です。
 公正取引委員会は、平成17年12月2日、この三井住友銀行の行為を、独占禁止法上の不公正な取引方法の優越的地位の濫用(一般指定第14項1号)に違反するものとして、排除措置の勧告を行いました。
 また、金融庁は、平成18年4月27日、三井住友銀行に対し、金利スワップによる独禁法違反につき、一部業務停止命令を出しました。

2. 問題点
(1) 金融業に対する独占禁止法違反が問題となった例は、次の通りです。
1) 日本興業銀行事件−公取委昭和28年11月6日勧告審決
「興銀は、日本冶金に対する協調融資銀行団の実質上の幹事銀行として、協調融資に際し役員の選任については、あらかじめ自己の指示に従うべきことおよびその範囲は社長以下常務取締役全員におよぶべきことを条件とするものであって、かかる行為は金融機関の債権保全の見地からする正当な行為とは認められぬものであり、…不公正取引方法の9に該当し、同法第19条の規定に違反するものであり、更に日本冶金と現に競争関係にある鴨川化工の役員を日本冶金役員として兼任せしめるとともに興銀側から2名の代表取締役を選任せしめることは、融資に際して日本冶金に対する自己の優越せる取引上の地位を利用して金融機関の通常の債権保全の目的ならびに限度に照し不当に不利益な条件を付するものでありしたがって同告示第11号により指定した不公正取引方法の10に該当し同法第19条の規定に違反するのである。」
2) 岐阜商工信用組合事件−最高裁昭和52年6月20日判決
実質的な貸付金額を超過する貸付金について即時両建預金とした事案につき、優越的地位の濫用を認め、実質金利が利息制限法を超過する部分につき違法とした。
(2) 金融業、特に銀行に対する公取委の独禁法違反に基づく法的措置としては、この 三井住友銀行金利スワップ事件は随分と久し振りのものとの感じがします。
 しかし、銀行の優越的地位の濫用に苦しんでいる中小企業や個人は多数に及ぶものと考えられ、今回の公取委の排除措置は氷山の一角ではないかとも思われます。
 金融業においてもコンプライアンスが重視される時代において、銀行もこの優越的地位の濫用行為が行われないよう十分留意しなければならないでしょう。

3.三井住友銀行金利スワップ事件−公取委平成17年12月2日排除措置勧告の概要
(1) 排除措置の概要
1) 三井住友銀行は、前記金利スワップの購入の要請の行為を取りやめること。
2) 三井住友銀行は、前記(1)に基づいて採った措置及び今後、前記2の行為を行わない旨を融資取引関係にある事業者に周知するとともに、自行の行員に周知徹底すること。
3) 三井住友銀行は、今後前記2の行為を行わないこと。
4) 三井住友銀行は、今後前記2の行為を行うことのないよう
次の事項を含む独占禁止法の遵守の観点からの金利スワップの取扱いに関する内部規定の整備
(ア) 自行と融資取引関係にある事業者であって、その取引上の地位が自行に対して劣っているものに対して、金利上昇リスクのヘッジをする手段として金利スワップの購入を提案する際には、金利スワップの想定元本及び契約期間を、当該事業者が金利上昇リスクのヘッジの対象とする借入れの元本及び契約期間に対して必要な範囲内で設定すること
(イ) 自行と融資取引関係にある事業者であって、その取引上の地位が自行に対して劣っているものに対して、金利スワップを販売する際には、当該金利スワップの購入が融資を行うことの条件となるものではない旨及び当該金利スワップを購入しなくとも融資に関して不利な取扱いをしない旨を当該事業者に明確に知らせること
各地域に所在する法人営業部の行員に対する前記内部規定及び独占禁止法 の遵守に関する定期的な研修並びにその遵守に関する法務担当者による定期的な監査
(2)勧告の理由の概要
 三井住友銀行からの融資に代えて、三井住友銀行以外の金融機関からの融 資等によって資金手当てをすることが困難な事業者(以下「融資先事業者」という。)が存在する。融資先事業者は、三井住友銀行から融資を受けることができなくなると事業活動に支障を来すこととなるため、融資取引を継続する上で、融資の取引条件とは別に三井住友銀行からの種々の要請に従わざるを得ない立場にあり、その取引上の地位は三井住友銀行に対して劣っている。
 金利スワップの想定元本又は契約期間が、金利上昇リスクのヘッジの対象となる借入れの元本又は契約期間を上回る設定(金利スワップの想定元本が契約期間中に金利上昇リスクのヘッジの対象とした借入れの元本を上回ることになる設定も含む。以下「オーバーヘッジ」という。)となる金利スワップの購入を提案し、販売している場合がある。
 三井住友銀行は、平成14年、借入れの大部分を同行から受けており、定期的に生じる資金需要に係る融資を受けるために融資枠の更新を申し込んだ事業者に対して、当該事業者における個別の借入れの内容について十分に検討することなく、オーバーヘッジとなる金利スワップの購入を提案した。
 三井住友銀行は、当該事業者が、金利スワップを必要としておらず、また、金利スワップに係る支払いによる金銭的負担も大きいと考え、複数回にわたる金利スワップの購入提案に応じなかったにもかかわらず、金利スワップを購入しなければ融資枠の更新に関して不利な取扱いを行う旨明示し、担当者に管理職である上司を帯同させるなどして重ねて金利スワップの購入を要請した。これにより、当該事業者は、融資枠の更新を受けるためには金利スワップを購入せざるを得ないと考え、金利スワップを購入することを余儀なくされた。
 三井住友銀行のこれらの行為の結果、金利スワップの購入を余儀なくされた融資先事業者は、融資に係る支払金利に加えて、当該金利スワップの契約期間において金利スワップに伴う固定金利と変動金利の差額を支払い続けなければならず、また、当該金利スワップを契約期間中に解約しようとするには一括して所要の解約清算金を支払わなければならず、融資に係る支払金利以外の金銭的負担を強いられることとなっている。
 融資先事業者の取引上の地位は三井住友銀行に対して劣っているところ、三井住友銀行が、融資先事業者に対して、融資に係る手続を進める過程において、金利スワップの購入を提案し、金利スワップの購入が融資を行うことの条件である旨又は金利スワップを購入しなければ融資に関して不利な取扱いをする旨明示又は示唆することにより、融資先事業者に金利スワップの購入を余儀なくさせる行為を行っていることは、自己の取引上の地位が融資先事業者に対して優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、融資先事業者に対し、融資に係る商品又は役務以外の金利スワップを購入させているものであり、これは、不公正な取引方法の第14項第1号に該当し、独占禁止法第19条の規定に違反するものである。

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