御器谷法律事務所

中小企業と事業承継


1. 中小企業とは、
 経営の規模(年商や従業員等)が大会社に及ばない企業を言います。
 会社法では、大会社とは資本金5億円以上又は負債200億円以上の株式会社を言います。
 中小企業基本法では、中小企業とは次の事業者(会社、個人)を言うものとされています。
(1) 製造業、建設業、運輸業等
 資本金が3億円以下、従業員が300人以下
(2) 卸売業
 資本金が1億円以下、従業員が100人以下
(3) サービス業
 資本金が5000万円以下、従業員が100人以下
(4) 小売業
 資本金が5000万円以下、従業員が50人以下
 中小企業(会社と個人営業)は、数のうえでは日本で約9割超(4百数十万社)、従業員では全労働者の約7割位をしめているとも言われています。
 中小企業においては、オーナー社長を中心として対従業員、対取引先、対顧客、対銀行等における信用が築かれており、社長の高齢化とともにその後継者がいるか否か、誰を後継者とするか等につき深刻な問題となっている例を多く見受けます。
 中小企業は、後継者問題に失敗すると即廃業や倒産という例もあり、非常に重要は問題となってきます。

2. 中小企業における事業承継のパターン
 企業が永続性を有するというのは、現実の様々な企業を見ているとイリュージョンにしかすぎないのではないかと思うことが度々あります。あの老舗企業があんなにもろく倒産や廃業に追い込まれることもあり、事業継承は決して容易なものではありません。
 中小企業における事業継承をみていると、いくつかのパターンがあるのではないかと思います。例えば、
(1) 子供への事業承継
 オーナー社長がその子に会社を譲るのは、最もよく見かける事業承継のパターンです。
 しかし、この場合にはオーナー社長が有している株式を如何に子である後継者に譲渡するかが問題となってきます。
 相続分の指定や相続税の負担を考えると、事前の準備が必要です。
 特に公正証書遺言の作成が必要なことが多いでしょう。また、生前贈与等も問題となってくるでしょう。
(2) 番頭、従業員への事業承継
 中小企業においては、オーナー社長の子は親の苦労を目の当たりにし、又、大企業に入社したり等すると親のあとは継ぎたくないという例を多く見かけます。
 そんなとき、社長から見れば、以前から働いていた番頭格の役員や信頼のおける従業員に事業を承継させようと考えるのも徐々に出てきたところです。
 取引先や顧客にとっても従来からの番頭さんや従業員が会社のあとを継げば一安心でしょう。
 この場合には、オーナー社長から番頭や従業員へ譲渡する株式の株価が問題となるでしょう。
 また、近時は「MBO」により経営陣が会社の経営権を取得することもあります。
(3) 第三者への事業承継
 中小企業のオーナー社長にとっては、一定の年齢になったときは早期にハッピー・リタイアを考えている経営者もいます。そのような経営者は、規模は大きくなくても優良な企業を立ち上げ、これを高い価格で市場で売却し、他の事業への進出を図ったり、趣味やNPO事業を行おうという人もいます。
 そうするとそのようなオーナー社長としては、自分が立ち上げた企業を広く第三者に売却するために、M&Aを利用することとなります。この点は別稿の「中小企業とM&A」をご参照下さい。

3. 事業承継の工夫
 中小企業における事業承継の仕事を行う上で、気付く点は事業承継も様々なパターンがあり、その手続も複雑なことから、早期に信頼のおける専門家に相談をすることです。
 弁護士や会計士や事業承継のコーディネーターやアドバイザー等様々な専門家がいますが、気が合う信頼のおける専門家を自らの目で選ぶことが必要でしょう。
 そして、中小企業における事業承継の際必要なことは、株式をいかにスムーズに後継者に集中させるか、という点です。そのために考えられる事業承継の方法の工夫をいくつか解説してみましょう。
(1) 株式の生前贈与、売買
 オーナー社長から後継者への株式の生前贈与や売買においては、株価の合理的算定、贈与税や譲渡所得税等が問題となるでしょう。
 この点、いわゆる相続時精算課税制度の適用も検討されるべきでしょう。
(2) 公正証書遺言の作成
 オーナー社長の株式につき相続時の遺産分割争いを避ける見地からは、公正証書遺言の作成は有用なものと考えられるでしょう。
 この点は、別稿の「遺言書の作成」をご参照下さい。
(3) 譲渡制限株式の利用
 譲渡制限株式とは、株式の譲渡につき株式会社や取締役会の承認を要する旨を定めている株式のこと(会社法2条17号、107条1項1号)。
 この譲渡制限株式を利用して、会社にとって好ましくない株主を排除することができます。
(4) 金庫株の利用
 金庫株とは、会社自体が自己株式を取得した場合のその株式を言います。
 金庫株を利用して事業承継に役立てる方法も検討の一つでしょう。
(5) 議決権制限株式の利用
 議決権制限株式とは、株主総会において議決権を行使できる事項について制限のある種類株式のことです(会社法115条)。
 この議決権制限株式を利用して、事業の後継者に議決権を集中させることも検討事項でしょう。
(6) 黄金株の利用
 黄金株とは、株主総会において一定の決議事項につき拒否権をその株主が有する場合における当該株式のことを言います(会社法108条1項8号、323条)。
 M&Aのうちでもいわゆる敵対的買収の際にこれを拒否するために買収防衛策の一環としての利用も考えられています。
(7) 相続人等に対する売渡し請求
 会社法(第174条以下)は、相続その他の一般承継により当該会社の譲渡制限株式を取得した者に対し、当該会社にその株式を売り渡すことを請求できる旨を定款で定めることができるものとしました。
 しかし、この制度によるとオーナー社長や後継者において先に相続が発生した場合において、如何に対処しうるか否かにつき慎重な配慮を要する場合もありうるところでしょう。

 この中小企業と事業承継につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい
      

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