御器谷法律事務所

ソフトウェアと独禁法


1. 独占禁止法21について
(1) 独占禁止法21条
 独占禁止法21条は、「この法律の規定は、著作権法、特許法、実用新案法、意匠法又は商標法による権利の行使と認められる行為にはこれを適用しない」と規定しています。
 では、いかなる行為が「著作権法、特許法・・・による権利の行使と認められる行為」にあたるのでしょうか。
(2)公正取引委員会「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」
 この独占禁止法21条の解釈として、公正取引委員会は、「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」において、次のように述べています。
1) そもそも権利の行使とは認められない行為には独占禁止法が適用される。
2) 外形上権利の行使と認められる行為についても、実質的に権利の行使とは評価できない場合は、独禁法の規定が適用される。すなわち、権利の行使と認められる行為であっても、行為の目的、態様、競争に与える影響の大きさも勘案した上で、事業者に創意工夫を発揮させ、技術の活用を図るという、知的財産制度の趣旨を逸脱し、又は同制度の目的に反すると認められる場合は、法第21条に規定される「権利の行使と認められる行為」とは評価できず、独占禁止法が適用される。

(3)ソフトウェアの知的財産法上の位置付けについて
 ソフトウェアにはさまざまな定義がありますが、ハードウェアと対比されるコンピュータプログラムのことを指したり、デジタルコンテンツ等を含むものとしたりすることもあります。
 ソフトウェアは著作物として著作権法による保護が与えられることもあり、物の発明として特許法による保護が与えられることもあります(特許法2条3項1号、4項)。
 著作権は登録制度がなく保護期間が長期にわたる点が特徴ですが、特許権は登録制度があり登録を受ければ排他的独占的に技術を実施できるという強い効力が与えられる点が特徴です。

2. 審決例
 これを踏まえて、具体的に公正取引委員会から出された代表的な審決について見ていきましょう。
(1) 平成10年12月14日勧告審決(マイクロソフト事件)
1) 事案の概要
 平成5年当時、表計算ソフトについては、A社(マイクロソフト社)の「エクセル」が市場占拠率第1位であり、平成6年当時、ワープロソフトについては、A社の「ワード」よりもB社のソフトの方が人気があり、B社のソフトが市場占拠率第1位であったところ、A社は、平成7年1月以降、国内の主要パソコン製造販売業者であるC社らに対して、「エクセル」と「ワード」を併せてパソコン本体に搭載して出荷する権利を許諾する契約を締結することを受け入れさせた。
 また、A社は、平成9年3月以降、契約交渉を行ったパソコン製造販売業者すべてに、「エクセル」、「ワード」及びスケジュール管理ソフト「アウトルック」を併せてパソコン本体に搭載又は同梱して出荷する権利を許諾する契約を締結させた。
 A社の前記行為に伴い、平成7年以降、ワープロソフトの市場における「ワード」の市場占拠率が拡大し、平成9年度には第1位を占めるに至っている。また、平成9年度には、スケジュール管理ソフトの市場において、「アウトルック」が第1位を占めるに至っている。
 公正取引委員会は、A社に対して、勧告を行ったところ、A社はこれを応諾したので、同趣旨の勧告審決をしたものである。
2) 審決内容
 「A社は、取引先パソコン製造販売業等に対し、不当に、表計算ソフトの供給に併せてワープロソフトを自己から購入させ、さらに、取引先パソコン製造販売業者に対し、不当に、表計算ソフト及びワープロソフトの供給に併せてスケジュール管理ソフトを自己から購入させているものであって、これは、不公正な取引方法の第10項に該当し、独占禁止法第19条の規定に違反するものである。」
3) まとめ
 ライセンサーがライセンシーに対してライセンシーの求める技術等以外の技術等についても、一括してライセンスを受ける義務を課す行為は、ライセンシーの技術等の選択の自由が制限され、競争技術等が排除される効果を持ち得ることから、不公正な取引方法に該当する場合があるといえます。

(2) 平成13年8月1日審判審決(SCE事件)
1) 事案の概要
 D社(ソニー・コンピュータエンタテインメント)は、当時テレビゲーム業界で圧倒的優位にあったE社が採用していたソフトの方式及び流通政策を見直し、次のような販売方針を採用してテレビゲーム市場に新規参入することを決めた。
 ・値引き販売禁止
小売業者に対して、ソフトの希望小売価格が従来のゲームソフトに比べて低廉に設定されており希望小売価格どおりの価格で十分販売できることを強調し、利益が出るような小売価格の設定をするように促すなどした。また、卸売業者に対して、取引先の小売業者に同様の価格設定をすることを指導するように求めた。
 ・中古品取り扱い禁止
小売業者に対して、中古ソフトの取り扱いをしないように求めた。また、卸売業者に対して、取引先の小売業者に中古ソフトを取り扱わないことを指導するように求めた。
 ・横流し禁止
小売業者に対して、一般消費者に対してのみ販売するように義務付けた。また、卸売業者に対して、取引先の小売業者に一般消費者にのみ販売することを指導するように義務付けた。
2) 審決内容
 公正取引委員会は、A社の著作物再販適用除外制度が適用されるべきとの主張を、ゲームソフトは指定商品にはあたらず、再販売価格維持行為は原則として違法であり指定商品以外に例外を認めることはできないとして排斥した上で、「A社は・・・取引先小売業者に対し、希望小売価格を維持させる条件を付けてPSソフトを供給していたものであり、これは、一般指定第12項第1号に該当し、・・・取引先卸売業者に対し、同卸売業者をしてその取引先である小売業者に希望小売価格を維持させる条件を付けてPSソフトを供給していたものであり、これは、同項第2号に該当し、・・・取引先小売業者及び卸売業者に対し、販売先を制限する条件を付けてPSソフトを供給するとともに、取引先卸売業者に対し、同卸売業者をしてその取引先である小売業者に販売先を制限させる条件を付けてPSソフトを供給しているものであり、これは取引先小売業者及び卸売業者の事業活動を不当に拘束する条件を付けて当該相手方と取引しているものであって、一般指定第13項に該当し、いずれも独占禁止法第19条の規定に違反するものである。」(なお、中古品取り扱い禁止行為については、単独では公正競争阻害性を認定できないとした。)
3) まとめ
 ライセンサーがライセンシーに対して、ライセンス技術等を用いた製品に関して、販売価格又は再販売価格を制限する行為や、販売の相手方を制限する行為は、不公正な取引方法に該当する場合があるといえます。

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