御器谷法律事務所

特別受益の意義

1.特別受益とは、
 遺産分割に際して、共同相続人中に被相続人から遺贈を受け、又は、婚姻、養子縁組、生計の資本として贈与を受けた者があるときに、被相続人が相続開始時に有した財産の価額に、贈与の価額を加えた(持戻し)ものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分の中から、その遺贈又は贈与の価格を控除した残額をもって、その者の具体的な相続分とするもの(民法第903条1項)。
(相続開始時の財産+生前贈与分)×法定相続分−特別受益分(遺贈、贈与)=特別受益者の具体的相続分

2. 特別受益の趣旨
 特別受益の制度は、生前贈与や遺贈により遺産の前渡しをした被相続人の意思を尊重しつつ、遺産の前渡しの実質を有する生前贈与や遺贈の持戻しをすることにより、法定相続分に修正を加え、もって共同相続人間の実質的衡平を図ろうとしたものです。

3. 特別受益は、審判事項か、訴訟事項か?
 審判事項説と訴訟事項説の争い
(1) 最判平成7年3月7日(民集49−3−893、判時1562号50頁)
                               −実務上の争いが決着
  • 特定の財産が特別受益財産であることの確認を求める訴えは、不適法として却下
     「ある財産が特別受益財産に当たるかどうかの確定は、具体的な相続分又は遺留分を算定する過程において必要とされる事項にすぎず、しかも、ある財産が特別受益財産に当たることが確定しても、その価額、被相続人が相続開始の時において有した財産の全範囲及びその価額等が定まらなければ、具体的な相続分又は遺留分が定まることはないから、右の点を確認することが、相続分又は遺留分をめぐる紛争を直接かつ抜本的に解決することにはならない。また、ある財産が特別受益財産に当たるかどうかは、遺産分割申立事件、遺留分減殺請求に関する訴訟など具体的な相続分又は遺留分の確定を必要とする審判事件又は訴訟事件における前提問題として審理判断されるのであり、右のような事件を離れて、その点のみを別個独立に判決によって確認する必要もない。
     以上によれば、特定の財産が特別受益財産であることの確認を求める訴えは、確認の利益を欠くものとして不適法である。」
(2) 最判平成12年2月24日(民集54−2−523、判時1703号137頁)
  • 「具体的相続分は、このように遺産分割手続における分配の前提となるべき計算上の価額又はその価額の遺産の総額に対する割合を意味するものであって、それ自体を実体法上の権利関係であるということはできず、遺産分割審判事件における遺産の分割や遺留分減殺請求に関する訴訟事件における遺留分の確定等のための前提問題として審理判断される事項であり、右のような事件を離れて、これのみを別個独立に判決によって確認することが紛争の直接かつ抜本的解決のため適切かつ必要であるということはできない。
     したがって、共同相続人間において具体的相続分についてその価額又は割合の確認を求める訴えは、確認の利益を欠くものとして不適法であると解すべきである。」
4. 遺産分割調停における特別受益の扱い
(1) 第1回〜第3回:遺産の範囲、評価につき中間合意調書。
前提問題の争いは訴訟で。
付随問題は、合意ない限り別問題。
(2) その後第6回位迄、特別受益や寄与分につき、双方から具体的主張と立証を求める。
(3) 複雑、長期間、感情的な特別受益については、調査官調査へ。
期日出席→期日間調査→調査報告書の提出へ。
(4) 適宜、第1回、調停当日等に審判官と評議。
1年位(9回位)での調停成立を目指す。
(5) 主張、立証−審判を見越した対応が必要
(主張書面、甲号証、乙号証−事前提出→調停期日は実質的な調整の場へ)
(6) 審判官−調停において特別受益の認否について判断へ
(審判における方向性に言及)

5. 特別受益の計算
(1) 一般的場合
・夫没−8000万円の遺産
・長男−生前贈与:800万円
・長女−婚姻支度金:400万円
・二男−遺贈:600万円
・二女−贈与も遺贈もなし

 1) みなし相続財産:8000万+800万+400万=9200万円
 2) 具体的相続分の算出
      妻 : 9200万×1/2=4600万円
      長男:9200万×1/2×1/4−800万=350万円
      長女:      同     −400万=750万円
      二男:      同     −600万=550万円
      二女:      同     −   0=1150万円
                          計  7400万円

(2) 超過特別受益者がいる場合−第903条2項
・夫没−6000万円の遺産    ・長男−生前贈与:1800万円
・二男−遺贈:1200万円

1) みなし相続財産:6000万+1800万=7800万円
2) 具体的相続分の算出
     妻: 7800万×1/2=3900万円
    長男:7800万×1/6−1800万=−500万円→§903.(2)により“0”
    長女:    同   −  0  =1300万円
    二男:    同   −1200万=100万円
                    計 5300万円
 しかし、5300万+1200万=6500万円と500万円オーバーしてしまう。
3) 共同相続人の中に超過特別受益者がいる場合の具体的相続分の算出については審判例が別れています。

  • @)岡山家裁審判昭和55年8月30日(家裁月報33巻8号80頁)
     超過特別受益者は存在しないものとみなして、他の相続人であらためて具体的相続分を算出。
     「超過特別受益者がある場合の具体的相続分の算定方法については多様な考え方があるが、当裁判所はいわゆる超過特別受益者不存在擬制説つまり超過特別受益者がいないものとして他の共同相続人間で法定相続分に従いその取得額を按分算出する方法を採る(ちなみに本件に則していえば、具体的相続取得分基準説ないしは本来的相続分基準説を採ると特別受益の種類とその額を確定することなどに更にかなりの調査と費用を要することにもなり、本件遺産分割の対象物件が一筆の不動産のみであることに照らしてもそれは当事者の本意にももとることになろう。)」
            ・みなし財産:6000万円+0=6000万円
            ・妻:6000万×1/2=3000万円
            ・長男:0
            ・長女:6000万×1/2×1/2−0=1500万円
            ・二男      同      −1200万=300万円
                             計    4800万円

  • A)大阪家裁審判昭和51年2月16日(家裁月報28巻12号171頁)
     「相手方は自己の相続分を金598万2463円超える遺贈を受けているから、この超過特別受益はそれ以外の者が各自の相続分額の割合に応じて負担すべきものと解すべきである」
     なお、超過特別受益者を除く、共同相続人間の相続分の算定については、各相続人の具体的相続分の計算につき複数の説あり(詳細は新版注釈民法(27)の236頁以下)。
    なお、下記のはその一例による。

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