御器谷法律事務所

特定商取引法


1. 意義
 特定商取引法(正式名称「特定商取引に関する法律」)とは、消費者トラブルを生じやすい特定の商取引を対象に、トラブルを未然に防ぐためのルールを定め、事業者による不公正な行為を取り締まることにより、消費者が被る損害を防止し、商品の流通及び役務の提供を適正・円滑にするための法律です。
 本法律は、クーリングオフ制度を明確化している他、販売目的の明示義務などを規定しています。1976年制定の「訪問販売等に関する法律(訪問販売法)」が改訂され、2000年に特定商取引法となっています。
 そして、本法律は、高齢者を狙った次々販売被害やネット通販のトラブル等を受けて、2008年に大幅に改正されました。改正のポイントは、1)規制の抜け穴の解消、2)訪問販売規制の強化、3)インターネット取引規制の強化です。1)について、改正前の法律では、訪問販売・通信販売・電話勧誘販売について、「政令で指定された商品」にかかる取引のみ規制対象とされていたため、悪徳業者は、規制対象となっていない取引類型に着目し、新たな不正行為を考え出して、それに対応して法律を改正して規制対象を広げる、というイタチごっこの状態が続いていました。そこで、2008年の改正では、政令指定商品・政令指定役務の制度を廃止し、特定商取引法の規制がふさわしくないものを政令で除外するという、原則と例外を入れ替えた制度となりました。2)と3)については、以下の規制の概要において詳述します。

2. 規制の概要
(1) 規制の対象
  本法律が規制対象としているのは、次の6つの取引類型になります。
  1. 訪問販売:特定商取引法では、その取引が、事業者の営業所など以外の場所で行なわれた場合の取引のことを「訪問販売」と呼びます。2008年の改正前までは、購入した商品やサービスが「政令で指定された商品、役務(サービス)、権利」であることが必要でしたが、現行法ではこの制度を廃止し、原則として、全ての商品・役務について訪問販売の規制が及ぶことになりました。

  2. 電話勧誘販売:事業者が電話をかけて勧誘を行い、その電話の中で消費者からの申込み(または契約の締結)をした場合だけでなく、電話を一旦切った後、郵便、電話等により消費者が申込みを行った場合であっても、電話勧誘によって消費者の購入意思の決定が行われた場合は該当することになります。さらに、事業者が、欺瞞的な方法で消費者に電話をかけさせて勧誘した場合も該当します。2008年改正によって、訪問販売同様、政令指定商品・政令指定役務の制度は廃止されました。

  3. 通信販売:特定商取引法では、事業者が郵便等の通信手段で、消費者から契約の申込みを受けて行う商品や権利の販売または有償の役務の提供のことを「通信販売」と呼びます。2008年改正によって、訪問販売や電話勧誘販売と同様、政令指定商品・政令指定役務の制度は廃止されました。

  4. 連鎖販売取引(マルチ商法):マルチ商法やネットワークビジネスと呼ばれるもので、1)物品の販売(または役務の提供など)の事業であって、2)再販売、受託販売もしくは販売のあっせん(または役務の提供もしくはそのあっせん)をする者を、3)特定利益が得られると誘引し、4)特定負担を伴う取引(取引条件の変更を含む。)をするものです。

  5. 特定継続的役務提供:継続的なサービス契約をまとめて契約させるものですが、規制を受けるのは政令で指定されたものに限られ、現在、エステティックサロン、語学教室、家庭教師、学習塾、結婚相手紹介サービス、パソコン教室の6つの役務が対象となっています。

  6. 業務提供誘引販売取引(内職商法):1)仕事を提供すると誘引し、2)仕事をするために必要な商品やサービスを購入する必要があるとして、教材を買わせたり、通信講座などの契約をさせるものです。

(2) 規制の内容
  ア.行政規制
本法律においては、事業者に対して、消費者への適正な情報提供等の観点から、各取引類型の特性に応じて、以下の規制を行っています。これに違反すると、改善指示、業務停止の行政処分 または罰則の対象となります。
   ※従来からある制度
氏名等の明示の義務づけ:勧誘開始前に事業者名や、勧誘目的であることなどを消費者に告げるよう業者に義務付けています。

不当な勧誘行為の禁止:虚偽の説明や価格・支払い等の重要事項を故意に告知しなかったり、消費者をおどして困惑させたりする勧誘行為を禁止しています。

広告規制:業者が広告をする際には、重要事項を表示することを義務付け、虚偽・誇大な広告を禁止しています。

書面交付義務:事業者に対して、契約締結時等に、重要事項を記載した書面を交付することを義務付けています。
   ※2008年改正によって設けられた新制度
再勧誘の禁止:訪問販売者の中には、断られても執拗に繰り返し訪問して、消費者を根負けさせて契約させてしまう者もいます。改正法では、訪問販売を断られた場合の再勧誘を禁止する規定を設けました。この規定に違反した場合は、行政処分の対象となります。

過量販売の禁止:近年、高齢者などに付け込んで、住宅リフォームやふとんなどを次々と契約させる悪徳業者が多発していました。そこで、改正法では、訪問販売で、日常生活において通常必要とされる分量を著しく超える商品の売買契約の勧誘をすることなど、顧客の財産の状況に照らし不適当と認められる行為を禁止する規定を設けました。

電子メールの規制:近年、事業者が一方的に送りつけてくる迷惑メールがどんどん増加し、特に携帯電話の利用者を困らせてきました。改正前においても、再送信を拒絶してきたアドレス宛に同一業者が広告メールを再送信することは禁止されていたのですが、別業者がそのアドレス宛に送信することは禁止されていなかったため、迷惑メールは減少しませんでした。そこで、改正法では、広告メールを送信するにあたっては、消費者の事前の同意が必要となりました。同様に、メールマガジンの送信についても事前の同意が必要となりました。
  イ.民事上の規制
消費者と事業者の間のトラブルを防止し、その救済を容易にする等の機能を強化するため、以下のような制度を定めています。
   ※従来からある制度
クーリング・オフ:申し込み又は契約後に法律で決められた書面を受け取ってから一定の期間(訪問販売・電話勧誘販売・特定継続的役務提供では8日間、連鎖販売取引・業務提供誘引販売では20日間)、消費者が冷静に当該契約について考え直す期間を与え、無条件で解約することが出来ます。なお、通信販売では、法律上クーリング・オフに関する規定はありません(なお、通販カタログなどで、「○日以内なら返品が可能」というような返品制度がある場合がありますが、これはその業者が独自に取り入れているものであって、法律上のものではありません。)。

意思表示の取消:事業者が不実の告知等の違法行為を行ったことにより、消費者が誤認し、契約の申し込み又はその承諾の意思表示をしたときには、その意思表示を取り消すことが出来ます。
損害賠償等の額の制限:消費者が契約を中途解約する時などに事業者が請求できる損害賠償額に上限を設けています。
   ※2008年改正によって設けられた新制度
過量販売の解除制度:高齢者を狙った次々販売等を規制するため、改正法では、通常の生活で必要な量を超えて契約させた場合には、契約を締結した時から一年間はその契約を解除できる制度が導入されました。

返品制度:通信販売における返品特約は、事業者によって扱いが異なり、中には返品特約の表示がない違法な広告も出回っており、事業者が返品に応じない等の被害が多発していました。そこで、改正法では、通信販売において、広告に返品に関する表示がない場合、原則として商品が届いた翌日から8日間の返品制度(返品費用は消費者負担)が導入されました。ただし、広告で返品できないことが明示されている場合にはこの制度は適用されません

 この特定商取引法につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい


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