御器谷法律事務所

税務国家賠償請求の可否

名古屋高等裁判所 平成21年4月23日判決(判例時報2058号37頁)
課税処分固有の不服申立手続を経ずに、課税処分の違法を理由とする国家賠償請求をすることが許されるとされた事案

《事案の概要》
Xら(冷凍倉庫所有者)がY(名古屋市)に対し、冷凍倉庫について冷凍倉庫用の経年減点補正率を適用せずに過大に固定資産税を徴収したと主張して国家賠償請求(国家賠償法1条1項)を求めた事案です。

               国家賠償請求
Xら(冷凍倉庫所有者・控訴人)   →   Y(名古屋市・被控訴人)
   ・請求X₁‐2108万2000円 X₂‐703万2400円
   ・認容X₁‐2048万8300円 X₂‐686万2000円
    (訴訟提起より20年以上前の分は除斥期間の経過のため消滅)

《争点及び判旨の概要》

・課税処分固有の不服申立手続を経ずに、課税処分の違法を理由とする国家賠償請求をすることができるか-原則肯定
「取消訴訟は、行政処分の効力の否定を目的としているのに対し、国家賠償訴訟は、民法上の不法行為責任制度の特則として違法な国・公共団体の活動により生じた損害の賠償を目的としているのであって、行政処分の法的効果を直接否定するものではない。このように、両制度は、その目的、効果(処分の遡及的取消しに対し、事後的金銭による補填)、期間制限等を異にしているから、両立しうるのであって、原則として、行政処分の取消しが国家賠償のための要件となるものではなく、このことは課税処分においても異なるところはないというべきである。

ただし、「課税処分の違法と国家賠償という場合には、後者の損害が前者の取消しの結果生じる不当利得金と同一となることもあるから、そのような表裏の関係にある場合において、課税処分が例えば出訴期間を過ぎたために取り消すことができなくなったときに、取消しの結果得られる不当利得金と同額の賠償請求金の支払を認容することは、制度趣旨に反することにもなりかねないという結果が生ずることもあり、その場合には、侵害行為の態様及びその原因、あるいは、当該課税処分発動に対する被害者側の関与の有無・程度等に照らし、権利の濫用等の法理によって、国家賠償請求がゆるされないとされる場合もありうるとすることで均衡が保たれるように解すべきである。

 「過誤納金の還付等の制度は、民法上の不当利得返還制度の特則としての意義を有すると解されるところ、国家賠償法制度とは、趣旨や目的、要件及び効果を異にする別個の制度であるというべきであり、また、一般の行政処分の場合にはその違法を理由とする国家賠償訴訟は取消訴訟を経ることなく提起することが原則として許されているのであり、課税処分の効果と損害の内容が実質的に同一であるからといって、課税処分にだけ国家賠償がおよそ排除されるとするのは適当ではなく、課税処分が違法である場合には、その取消判決がないことの一事をもって、当該納税者に損害を甘受させる合理的な理由は見出し難い。」
 以上の次第で、地方税法所定の救済手続を経ることなく、本件課税処分の違法を理由とする国家賠償請求をすることは、原則として許されるというべきである。

《判例の立場》
行政処分の取消訴訟と国賠訴訟との関係について、判例は、違法相対説に立つものとされており(最判平5.3.11民集47巻4号2863項)、行政処分の取消等を経ずに国家賠償を請求することを認めます(最判昭36.4.21民集15巻4号850項)。本判決もこれに依拠するものするものです。

《理論上の問題点-不服申立前置主義との関係》
租税に関する行政処分についての取消訴訟は、原則として課税庁に対する不服申立てや国税不服申立てを経なければなりません(不服申立前置主義)。その趣旨は、租税の徴収が毎年大量に行われ、課税についてはその専門性・技術性が高いことから税務行政段階で審理を行い、裁判所に大量の訴訟事件が継続することを回避しようとする点にあります。
 課税処分について取消訴訟を経ずに国家賠償請求を認めてしまうと、この不服申立前置主義を骨抜きにしてしまうのではないかという問題が生じます。
本判決は、取消訴訟を経ずに国家賠償請求をすることを原則として認めながらも、国家賠償請求が取消訴訟を経たうえでの不当利得金と同一となる場合に国家賠償請求を制限することで、この問題を回避しようとするものと考えられます。もっとも、本判決は、過誤納金の還付請求という、課税による効果と損害の内容が実質的に同一である場合であったにもかかわらず国家賠償請求を認めており、実際にどのような場合に国家賠償請求が制限されるのかについては、不明確な点を残しています。
実務にあたっては、取消訴訟の代わりとして国家賠償請求を用いることは、本判決の立場からすると制限されるおそれがありますので、取消訴訟の期間制限等には依然として留意する必要があるものと思われます。

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