御器谷法律事務所

ストックオプション課税

1.ストックオプションとは、
 株式会社の役員や従業員において、あらかじめ決められた価格でその会社の株式を購入することができる権利のこと。「自社株購入権」等とも呼ばれています。
 会社の業績が向上し株価が上昇したときに、この権利を行使すると株価上昇分の利益を取得することができ、これが勤労のモチベーションとなることから、アメリカで広く普及し、日本でもこの制度を採用する企業があります。

2. ストックオプションへの課税問題
 このストックオプションの権利を行使することによって得る利益についての税務上の処理については、次のような経緯があります。
(1) 1997年から1998年(平成9年から平成10年)以前については、一時所得としての課税が行われていたようです。
(2) 1998年から1999年(平成10年から平成11年)には、給与所得としての課税が行われるように取扱いが変更となりました。
 また、国税局は、2002年(平成14年)には、ストックオプションにつき給与所得とする通達を出しました。
 しかし、給与所得の税率は一時所得の税率のほぼ2倍であるため納税者の大きな反感をかいました。
 しかも、この取扱いの変更にともなって、追徴課税等がなされ、ストックオプションの課税に関する多数の訴訟が提起されました。

3. 判決
(1) 最高裁平成17年1月25日判決
−ストックオプションにつき給与所得と認定−
 本件ストックオプション制度に基づき付与されたストックオプションについては、被付与者の生存中は、その者のみがこれを行使することができ、その権利を譲渡し、又は移転することはできないものとされているというのであり、被付与者は、これを行使することによって、初めて経済的な利益を受けることができるものとされているということができる。そうであるとすれば、米国アプライド社は、上告人に対し、本件付与契約により本件ストックオプションを付与し、その約定に従って所定の権利行使価格で株式を取得させたことによって、本件権利行使益を得させたものであるということができるから、本件権利行使益は、米国アプライド社から上告人に与えられた給付に当たるものというべきである。本件権利行使益の発生及びその金額が米国アプライド社の株価の動向と権利行使時期に関する上告人の判断に左右されたものであるとしても、そのことを理由として、本件権利行使益が米国アプライド社から上告人に与えられた給付に当たることを否定することはできない。
 ところで、本件権利行使益は、上告人が代表取締役であった日本アプライド社からではなく、米国アプライド社から与えられたものである。しかしながら、前記事実関係によれば、米国アプライド社は、日本アプライド社の発行済み株式の100%を有している親会社であるというのであるから、米国アプライド社は、日本アプライド社の役員の人事権等の実権を握ってこれを支配しているものとみることができるのであって、上告人は、米国アプライド社の統括の下に日本アプライド社の代表取締役としての職務を遂行していたものということができる。そして、前記事実関係によれば、本件ストックオプション制度は、アプライドグループの一定の執行役員及び主要な従業員に対する精勤の動機付けとすることなどを企図して設けられているものであり、米国アプライド社は、上告人が上記のとおり職務を遂行しているからこそ、本件ストックオプション制度に基づき上告人との間で本件付与契約を締結して上告人に対して本件ストックオプションを付与したものであって、本件権利行使益が上告人が上記のとおり職務を遂行したことに対する対価としての性質を有する経済的利益であることは明らかというべきものである。そうであるとすれば、本件権利行使益は、雇用契約又はこれに類する原因に基づき提供された非独立的な労務の対価として給付されたものとして、所得税法28条1項所定の給与所得に当たるというべきである。

(2) 最高裁平成18年10月24日判決
−ストックオプションにつき1997年ころ申告した一時所得について、給与所得として修正申告させた事例につき過少申告加算税の課税処分を取り消しました。

(3) 最高裁平成18年11月16日判決
上告人がその平成11年分の所得税につき本件権利行使益を一時所得として申告し、本件権利行使益が給与所得に当たるものとしては上記所得税の税額の計算の基礎とはされていなかったことについて、真に上告人の責めに帰することのできない客観的な事情があって、過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお上告人に上記所得税に係る過少申告加算税を賦課することは不当又は酷になるというのが相当であり、国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるものというべきである。前記のとおり、同年分の所得税の申告は、上告人が同10年分の所得税につきストックオプションの権利行使益が給与所得に当たるとして増額更正を受けた後にこれをしたものであるが、この事実を考慮しても、上記判断は左右されない。


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