御器谷法律事務所

税務調査への対応

1.税務調査とは、
 税務署の職員や国税局の職員等が、納税義務者等に対して、税務申告が適正に行われているか否かにつき確認ないし点検する制度です。
 そして、税務署や国税局の職員は、税務調査に際して必要があるときは、納税義務者等に対して質問し、帳簿書類等の物件を検査する権限を有しています(所得税法第234条、法人税法第153条等)。これを一般的には租税職員の「質問検査権」と呼んでいます。
 この租税職員の質問に対して答弁しなかったり、偽りの答弁をしたり、又租税職員の検査を拒んだり、これを妨げたり、忌避したときは、1年以下の懲役や20万円以下の罰金等の刑罰が課されます(所得税法第242条8号、法人税法第162条2号等)。
 従って、納税義務者等は、税務調査に際して、このような租税職員の質問、検査権の行使に対してこれを受忍する義務があるとされています。
 なお、この租税職員の質問、検査権の行使の相手方は、納税義務者のみならず、これと取引関係にある第三者をも含むとされています。つまり、租税職員は、納税義務者の取引先や銀行等に対しても調査することができ、これを「反面調査」と呼んでいます。

2. 税務調査の種類
(1) 主体による区別
国税局調査- これは国税局の職員が行う税務調査であり、一般的には、資本金が1億円以上の法人や特に悪質・多額の脱税事案等につき行われるものとされています。
税務署調査- これは税務署の職員が行う税務調査であり、一般的には、資本金が1億円未満の法人や個人営業主等につき行われるものとされています。

(2) 任意か、強制か、による区別
任意調査- これは、納税義務者等の同意をえて、租税職員が納税義務者等に質問をしたり、その経理帳簿書類等を検査したりすることです。
強制調査- これは、犯則事件を調査する必要があるときに、収税官吏が裁判所の令状を得て捜索、差押等するものであり(国税犯則取締法第2条)、悪質な巨額脱税事件等で用いられ、一般的には「査察」とか「マルサ」とかとも呼ばれています。

3. 税務調査後の手続
修正申告- これは、税務調査により問題点が指摘されたとき、納税義務者が自らの意思により申立の誤り等を認め、納税申告書の修正を行うものです(国税通則法第19条)。租税職員は、税務調査の結果申告に問題点等があったときは、税務署等が更正処分を行う際の手続上の時間や処理等を考慮し、納税義務者に修正申告の提出を求めることが多くあります。
更 正- これは、税務調査により申告内容の誤りがあったときに、税務署長が職権で申告書に係る課税標準や税額等を是正する行政処分です(国税通則法第24条)。

4. 税務調査への対応-任意調査の場合
(1) 税務署から税務調査の連絡が入ったときは、
税務調査の日時、場所、目的、理由、担当者名、人数、調査予定日数、対象の期間等を、極力具体的に確認しましょう。
日時については、当方の都合を言い、調整をすることができるでしょう。
(2) 税理士や弁護士の立会い
申告時に依頼している税理士に立会いを求めた方が安心でしょう。
なお、税理士と税務調査への対応を事前に打合せをしておくべきでしょう。
また、税務当局との意見の相違が予想されるとき等には、弁護士が立会うこともあります。
(3) 社内の担当者、責任者の決定
税務調査に対する社内の担当者ないし責任者としては、通常は社長や経理部長等が考えられるでしょう。顧問の税理士と事前に対応を協議しておくべきでしょう。また、税務当局との意見の相違が予想されるとき等には、弁護士が立会うこともあります。
(4) 税務調査への心構え
税務署や国税局が来てうれしいと思う人はいないでしょう。しかし、税務調査はいつか必ず来るものですので、平常心でこれに対処するより仕方がありません。
物事には完璧ということがありません。これでいいと申告していたときでも税務当局と見解が相違することがあるかもしれません。自分なりの見解を毅然と主張すべきは主張すべきでしょう。
徒に卑屈になることもなく、又、喧嘩ごしになることもなく、対等のスタンスで落着いた対応を心掛けるべきでしょう。
(5) 準備しておくべきもの
一般的な税務調査の場合には、直近3期分から5期分位の経理帳簿は準備しておくべきでしょう。
会社であれば、定款、議事録、各種契約書、現金出納帳、総勘定元帳、補助簿、請求書綴、領収書綴、給与台帳、源泉徴収簿、通帳、納品書等・・・。
(6) 税務調査当日は
先ず、税務署職員である旨の身分証明書を確認して下さい。税務署職員の質問や検査に対しては、税理士の立会いのもと、簡潔に且つ要領よく回答して下さい。
余計な雑談はせず、要点をしぼった受け答えを心掛けるべきでしょう。その場で即答できないことは、追って調査のうえ確実な内容を回答すべきでしょう。
(7) 税務署からの問題点の指摘に対して
税務署から申告上の問題点を指摘されたときは、税理士ともよく検討して、反論の主張をすべきか、修正申告に応ずべきかを考慮すべきでしょう。
なお、税務署の更正処分に対しては、異議申立で争うことができます。

5. 質問検査権に関する判例
(1) 川崎民商事件-最高裁昭和47年11月22日判決
「国家財政の基本となる徴税権の適正な運用を確保し、所得税の公平確実な賦課徴収を図るという公益上の目的を実現するために収税官吏による実効性のある検査制度が欠くべからざるものであることは、何人も否定しがたいものであるところ、その目的、必要性にかんがみれば、右の程度の強制は、実効性確保の手段として、あながち不均衡、不合理なものとはいえない」。
「憲法35条1項の規定は、本来、主として刑事責任追及の手続における強制について、それが司法権による事前の抑制の下におかれるべきことを保障した趣旨であるが、当該手続が刑事責任追及を目的するものでないとの理由のみで、その手続における一切の強制が当然に右規定による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。しかしながら、・・・諸点を総合して判断すれば、旧所得税法70条10号、63条に規定する検査は、あらかじめ裁判官の発する令状によることをその一般的要件としないからといって、これを憲法35条の法意に反するものとすることはでき」ない。
「憲法38条1項の法意が、何人も自己の刑事上の責任を問われるおそれのある事項について供述を強要されないことを保障したものであると解すべきことは、当裁判所大法廷の判例」であり、その保障は、「純然たる刑事手続においてばかりではなく、それ以外の手続においても、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続には、ひとしく及ぶ」。「しかし、旧所得税法70条10号、12号、63条の検査、質問の性質が上述のようなものである以上、右各規定そのものが憲法38条1項にいう『自己に不利益な供述』を強要するものとすることはでき」ない。
(2) 荒川民商事件-最高裁昭和48年7月10日判決
所得税法234条1項の規定は、国税庁、国税局または税務署の調査権限を有する職員において、当該調査の目的、調査すべき事項、申請、申告の体裁内容、帳簿等の記入保存状況、相手方の事業の形態等諸般の具体的事情にかんがみ、客観的な必要性があると判断される場合には、前記職権調査の一方法として、同条1項各号規定の者に対し質問し、またはその事業に関する帳簿、書類その他当該調査事項に関連性を有する物件の検査を行なう権限を認めた趣旨であって、この場合の質問検査の範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定めのない実施の細目については、右にいう質問検査の必要があり、かつ、これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまるかぎり、権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられているものと解すべく、また、暦年終了前または確定申告期間経過前といえども質問検査が法律上許されないものではなく、実施の日時場所の事前通知、調査の理由および必要性の個別的、具体的な告知のごときも、質問検査を行なううえの法律上一律の要件とされているものではない。

 この税務調査につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい

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