御器谷法律事務所

移転価格税制

1.移転価格税制とは、
 典型的には、日本の会社が海外の子会社に対して一般的な取引よりも低い価格や高い価格で販売すると、正常な価格により取引した場合と比較し、納税のアンバランスが生じ、これを是正するために正常な一般的価格による取引に引き直して課税しようとの税制をいいます。
 この移転価格税制は、多国籍企業が税率の低い国へ所得移転する租税回避等のために子会社等との取引価格を意図的に移動することへの対処を目的としていることから、Transfer Pricing (略してT.P)の直訳的表現とも言われています。
 アメリカでは、このT.Pについて、内国歳入法で規定しています。
 条約としては、OECDモデル租税条約第9条や日米租税条約第11条等が指摘されています。
 そして、日本では、昭和61年改正により、租税特別措置法第7節の2「国外関連者との取引に係る課税の特例」として第66条の4に、この移転価格税制を規定しています。

2. 租税特別措置法第66条の4
 この規定によれば、法人が、国外関連者(外国法人で、50%以上の出資を直接又は間接に保有する等の特殊な関係にあるもの)との間で、資産の販売や購入、役務の提供等の取引を行った場合に、その対価の額が独立企業間価格に満たないとき又は同価格を超えるときは、その法人の法人税については、その取引は独立企業間価格で行われたものとみなされることとなります(同第1項)。
 そして、この独立企業間価格とは、独立価格比準法、再販売価格基準法、原価基準法等により算定されます。この独立価格比準法は、特殊の関係にない売手と買手が、同様の取引段階、取引数量により売買した取引における通常の対価の額とされています(同第2項)。
 そして、日本又は国外関連者の存在する国外においてこの移転価格税制が適用され課税処分がなされると、場合により日本と国外の双方において課税される事態が生じます。これを「国際的二重課税」の問題と呼ぶことがあります。
 この場合には、日本と国外の課税処分庁とのいわゆる「二国間協議」を求め、その協議が成立すればこの国際的二重課税問題を是正すべき措置としていわゆる「対応的調整」を行うこともあるとされています。
 なお、多国籍企業においては、このような移転価格税制による税務上のリスクを事前に予防するために、海外子会社等と取引をする際に事前に課税当局とこの取引価格につき確認することがあり、これを「事前確認制度」やAdvance Pricing Agreement(APA)と呼ぶこともあります。

3. 移転価格税制の問題点と今後の展望
(1) この移転価格税制の適用をめぐっては、課税逃れか、あるいは正常な国外取引かにつき、企業と税務当局との見解が相違することがあり、多国籍企業が巨額の申告漏れを指摘された例が多くあります。
(2) 企業としては、このような課税リスクを回避する見地からも、平素よりその価格決定のメカニズムを文書化し、その正当性を立証する準備をしておくことは、内部統制上も必要なことでしょう。
 これは、税務調査においても要請されるところです。
(3) そのような見地から、企業が海外子会社との取引をする際に予め「事前確認制度」を利用し、APAにより事前のいわゆるお墨付きを確保しておくことは極めて有益なものと考えられます。
 但し、この事前確認については、相当な時間を要することが指摘されています。
 また、前述のいわゆる「二国間協議」においても長期間を要することが指摘されています。
(4) そこで移転価格税制に関する課税処分についても、企業としてこれに不服があるときは、異議申立てや国税不服審判所への審査請求、そして、難件となることが多いのですが、最終的には課税処分等の取消訴訟を典型とする税務訴訟で争うことができます。
(5) なお、移転価格税制の運用基準のより明確化が望まれるところです。

 この移転価格税制につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい

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