御器谷法律事務所

三 角 合 併

1. 意義
 三角合併とは、存続会社が消滅会社の株主に対して、存続会社自身の株式ではなく、存続会社の親会社の株式を交付する合併方法をいいます。
 従来、消滅会社の株主に交付する合併対価が原則として存続会社または新設会社の株式に限られていたため、親会社株式を交付する三角合併はできませんでした。しかし、新会社法で合併対価が柔軟化され、同規定が平成19年5月1日から施行されることを受け、親会社株式を交付する三角合併が可能になります(吸収合併につき、会社法749条1項2号ホ、751条1項3号ロ、附則4項)。
 日本の会社は従来型の株式交換ができるため三角合併を利用する必要性は限定的ですが、親会社が外国会社である場合は、三角合併を新たな企業再編の手段として活用できます。外国親会社による三角合併は対日投資の増加につながり、経済の活性化も期待できます。
 また、持株会社傘下の事業子会社と同業の事業会社を合併させる場合、三角合併を用いることにより、事業子会社を持株会社の完全子会社としたまま企業再編を行うことも可能になります。
 このように、三角合併は新たな企業再編の手段として柔軟な企業再編を可能にするとともに、投資の増加など新たな経済効果を生み出す効果が期待できます。

2. 手続き
 以下では、外国親会社Aの日本子会社Bが消滅会社C社と吸収合併する場合を例として、三角合併の手続きの概要を述べます。

(1) 完全子会社が日本にない場合は、親会社Aが日本国内に100%出資の子会社B社を設立します。既に完全子会社が存在する場合は(2)から始まります。
(2) B社とC社が合併契約を締結します。BCの商号・住所、合併対価及びその割当てに関する事項、効力発生日などを定めます(748条)。
(3) BC社の手続き
 1) B社の手続き
  • 吸収合併契約等備置開始日(794条2項)から合併の効力発生日後6か月を経過する日までの間、合併契約に関する書面または電磁的記録を本店に備置き、B社の株主及び債権者への閲覧に供します(794条)。
  • 効力発生日の前日までに株主総会の承認を得ます(795条)。原則として特別決議、すなわち、定款で特別の定めを置いた場合を除き、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上による賛成が必要です(309条2項12号)。
  • その他、会社債権者保護手続(799条)、反対株主等の株式買取請求(797条)など。
 2) C社の手続き
  • 吸収合併契約等備置開始日(合併契約承認に関するC社株主総会日の2週間前)から合併の効力発生日までの間、合併契約に関する書面または電磁的記録を本店に備置き、C社の株主及び債権者への閲覧に供します(782条)。
  • 効力発生日の前日までに株主総会の承認を得ます(783条)。原則として特別決議が必要です(309条2項12号)。
  • その他、会社債権者保護手続(789条)、反対株主の株式買取請求(785、786条)など。
 ※ (3)は他の項目と順序が入れ替わることがあります。

(4) 子会社B社が対価として交付するための親会社A社株式を有していない場合、A社はB社に対し、C社株主に交付するための合併対価として、A社株式を募集株式割当て(199〜209条)などの方法により付与します。なお、C社株主に交付する範囲内であれば、親会社株式取得・保有制限の規定は適用されません(800条1項、2項本文)。
(5) C社は合併により、解散と同時に消滅し(471条4号、475条1項括弧書き)、その権利義務は個々の移転行為を経ることなく当然に一括してB社に移転します。C社株主は、B社からA社株式を交付され、新たにA社株主となります。
(6) 合併登記(921条)、事後の開示手続き(801、施行規則200条)など。

3. 問題点 
(1) 敵対的買収のおそれ
 合併は当事者の契約であり、取締役会の決議や株主総会の承認が必要なため、直ちに敵対的買収と結びつくわけではありません。しかし、予め消滅会社(C社)発行済み株式の1割ほどを購入した上で株主提案権を行使し、他の株主を取り込んで議決権を確保するなどした上で三角合併により吸収するといった具合に、敵対的買収の一環として三角合併が用いられるおそれもあります。

(2) 許認可の承継や再取得手続きが必要な場合があること
 合併により消滅会社の権利義務は包括的に存続会社(B社)に承継されますが、消滅会社が得ていた許認可によっては、再取得手続きが必要な場合があります。特に、海外の許認可は手続きに注意する必要があります。

(3) 合併比率の問題
 会社法では、消滅会社の株式に対して対価(A社株式)がどの程度支払われるかという合併比率について、特に規制は設けられておらず、合併比率が不公正となる場合もあります。この場合、C社の反対株主はC社に対し株式買取請求権を行使できますが、A社株式を取得できないため、A・B社が合併により得たシナジー効果を享受できないことになります。合併比率の著しい不公正が合併無効事由になるかという点については、議論が確立していません(828条1項7号など参照)。

(4) 税務上の問題
 課税猶予措置として、C社株主が外国親会社(A)株式を取得する際には課税されず、取得したA社株を市場で売却した場合に、譲渡益が課税対象となります。しかし、節税目的など不正利用防止のため、外国会社が日本に設立したペーパーカンパニーと日本企業が統合する場合などには、課税猶予措置は適用されません。このため、外国会社が三角合併のため日本に設立した買収準備会社(B)がペーパーカンパニーと認定されるなど、課税猶予措置が適用されずC社株主が反対するのではないか、といった問題もあります。

(5) その他
 更に、外国親会社株式の内容について合併契約にどのような内容を記載すべきかという問題や、親会社(A社)の手続をどうするのか、といった問題も残されています。後者は、事前備置書類として親会社の計算書類などを備置く必要はないのか、また、効果が類似する株式交換に総会決議が必要なこととの均衡から三角合併についても親会社株主総会の承認が必要ではないか、といった問題であり、今後の実務の運用に委ねられています。

 この三角合併につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい

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