御器谷法律事務所

名誉毀損における真実相当性の立証

1. 問題の所在
 刑法においては、名誉棄損罪が成立する場合においても、その行為が「公共の利害に関する事実」(公共性)にかかわり、且つ、「その目的が専ら公益を図る」(公益性)ことにあった場合、「真実であることが証明」(真実性)されたときは、処罰されないものとされています(刑法第230条の2)。
 そして、最高裁判所昭和44年6月25日判決は、「刑法230ノ2の規定は、人格権としての個人の名誉の保護と、憲法21条による正当な言論の保障との調和をはかったものというべきであり、これら両者間の調和と均衡を考慮するならば、たとい刑法230条ノ2第1項にいう事実が真実であることの証明がない場合でも、行為者がその事実を真実であると誤信し、誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるときは、犯罪の故意がなく、名誉毀損の罪は成立しないものと解するのが相当である。」と判示しています。この「行為者がその事実を真実であると誤信し、その誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるとき」のことを、「真実相当性の立証」ということがあります。
 では、民事上の責任である不法行為においても、このような公共性、公益性、真実性ないし真実相当性の立証というものがありうるのかが問題となってきます。
 この点、民法上の条文はないものの、判例や実務はこれを認めています。
 
2. 最高裁判所昭和41年6月23日判決
 上記1の民事上の問題につき、本最高裁判所の判決は、次のとおりその適用を認めています。
(1) 民事上の不法行為たる名誉棄損については、その行為が公共の利害に関する事実に係りもっぱら公益を図る目的に出た場合には、摘示された事実が真実であることが証明されたときは、右行為には違法性がなく、不法行為は成立しないものと解するのが相当であり、もし、右事実が真実であることが証明されなくても、その行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときには、右行為には故意もしくは過失がなく、結局、不法行為は成立しないものと解するのが相当である(このことは、刑法230条の2の規定の趣旨からも十分窺うことができる。)。
(2) 上告人は昭和30年2月施行の衆議院議員の総選挙の立候補者であるところ、被上告人は、その経営する新聞に、原判決の判示するように、上告人が学歴および経歴を詐称し、これにより公職選挙法違反の疑いにより警察から追及され、前科があった旨の本件記事を掲載したが、右記事の内容は、経歴詐称の点を除き、いずれも真実であり、かつ、経歴詐称の点も、真実ではなかったが、少なくとも、被上告人において、これを真実と信ずるについて相当の理由があったというものであり、右事実の認定および判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、十分これを肯認することができる。
 そして、前記の事実関係によると、これらの事実は、上告人が前記衆議院議員の立候補者であったことから考えれば、公共の利害に関するものであることは明らかであり、しかも、被上告人のした行為は、もっぱら公益を図る目的に出たものであるということは、原判決の判文上十分了解することができるから、被上告人が本件記事をその新聞に掲載したことは、違法性を欠くか、または、故意もしくは過失を欠くものであって、名誉毀損たる不法行為が成立しないものと解すべきことは、前段説示したところから明らかである。

 この名誉毀損における真実相当性の立証につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい

執務の方針| 弁護士のプロフィール| 取扱事件 | ご案内 顧問契約 |

弁護士費用 | 事務所案内図 | リンク| トップ