御器谷法律事務所

新「信託法」

1. 信託法とは、
 新信託法は、従来施行されていた旧信託法を、社会経済の発展に的確に対応した信託法制を整備するという観点から、抜本的に改正したものです。
 これまで施行されてきた旧信託法は、大正11年(1922年)に制定され、80年以上も実質的改正がなされませんでした。その一方、近年わが国では、社会・経済活動の多様化に伴い,各方面で信託の利用が進み,旧信託法が制定された当時には想定されていなかった形態での信託の活用も図られるようになってきました。
 そこで、時代の変化と社会の要請にこたえ、より円滑に信託業務を遂行するために、新信託法を制定することになり、平成18年12月15日に公布されました。なお、施行日については、公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日とされています。

2. 信託法の内容
 新信託法の内容について、以下、従来の旧信託法との違いを中心に、大きく4つに分けて説明します。
(1)私的自治の範囲の拡大
 旧信託法は、制定時の社会状況を反映して、受託者を規制するための取締法規的性格が強いものでした。しかし、法律と実務の乖離が近年生じるようになったため、信託の利用形態に柔軟に対応できるようにすべく、各規定を原則任意規定化し、当事者の意思を尊重することにしました。
 具体的には、信託行為の定めにより受託者の善管注意義務の程度を軽減または加重することができ(同法29条2項但書)、受託者の分別管理義務についても、原則として分別管理の方法について信託行為に定めをおいておけばそれに従うここととされています(同法34条1項但書)。また、受託者の利益相反行為に関しても、事前に受益者の承認を得ていれば許容することとされています(同法31条2項2号、32条2項2号)。
(2)受益者の権利行使の強化
 旧信託法では、信託が受益者の利益のための制度であることが法文上明確には規定されておらず、受益者が受託者を監視・監督する権利についても十分には規定されているとはいえませんでした。そこで、新信託法は、信託が受益者の利益のための制度であることを前提に、受益者の権利や利益を保護、強化するための規定を整備しました。
 具体的には、受託者の帳簿等の作成,保管等に関する規定(同法37〜38条)を整備するほか,違法行為差止請求の制度の創設(同法44条),受益者の多数決での意思決定の許容(同法105条),受益者に代わって受託者を監視・監督する信託監督人制度の創設(同法131〜137条)などの措置を講じることにより受益者の権利の強化を図っています。
(3)新たな信託類型の創設
 旧信託法においては、信託を「財産権の移転その他の処分を為し他人をして一定の目的に従い財産の管理又は処分を為さしむる」と定義し、個人の財産管理等の伝統的な信託を念頭においていました。しかし、近年、信託の使われ方が変化し、多様化してきたため、新信託法はこのような実務に対応すべく信託の定義を改めました。
 具体的には、新信託法は、信託を「次条各号に掲げる方法のいずれかにより、特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいう」と定義しています(同法2条1項)。そして、「次条各号に掲げる方法」とは、(1)信託契約を締結する方法、(2)遺言をする方法、(3)信託宣言(自己信託)をする方法、の3つです(同法3条)。
  このように定義されたことによって、担保権を設定するための信託を設定できることが法律上明確になり、セキュリティ・トラスティ(担保権の管理を信託の方法を用いて行うもの)の設定が可能であることも明らかにされました。
 また、旧信託法では、消極財産について信託できないとするのが通説でしたが、新信託法では委託者の債務の信託も可能であるということが明確に規定されましたので(同法21条1項3号)、債務を含む事業の信託も可能になりました。
 さらに、新信託法では,旧信託法の下で,個別法に基づいて限定的に認められていた受益権の有価証券化を一般的に許容することとしています。
(4)倒産隔離機能の強化
 旧信託法においては、受託者に信託財産とそれ以外の財産との分別管理義務があったものの、信託財産とそれ以外の財産(別の信託財産も含む)での識別不能状態が生じた場合の規定は特に設けられていませんでした。そこで、新信託法は、このような識別不能状態が生じた場合には、識別できなくなった当時の価格の割合に応じて、各財産の共有持分がそれぞれに帰属するとし(同法18条)、この共有状態を前提とした共有物分割手続を設けました(同法19条)。このような規定により、受託者からの倒産隔離を強化しています。
 これに関連して、新信託法では、前述のように自己信託が認められたため、自己信託制度を悪用した財産隠し等の債権者詐害の問題が出てきます。この点について、新信託法では、自己信託については簡便な手続きでの強制執行等を認め(同法23条)、裁判所による信託終了命令の制度を設けています(同法166条)。

3. 新「信託法」の全体の構成
第1章 総則:第1条〜第13条
第2章 信託財産等:第14条〜第25条
第3章 受託者等:第26条〜第87条
第1節 受託者の権限
第2節 受託者の義務等
第3節 受託者の責任等
第4節 受託者の費用等及び信託報酬等
第5節 受託者の変更等
第1款 受託者の任務の終了
第2款 前受託者の義務等
第3款 新受託者の選任
第4款 信託財産管理者等
第5款 受託者の変更に伴う権利義務の承継等
第6節 受託者が2人以上ある信託の特例
第4章 受益者等:第88条〜第144条
第1節 受益者の権利の取得及び行使
第2節 受益権等
第1款 受益権の譲渡等
第2款 受益権の放棄
第3款 受益債権
第4款 受益権取得請求権
第3節 2人以上の受益者による意思決定の方法の特例
第1款 総則
第2款 受益者集会
第4節 信託管理人等
第1款 信託管理人
第2款 信託監督人
第3款 受益者代理人
第5章 委託者:第145条〜第148条
第6章 信託の変更、併合及び分割:第149条〜第162条
第1節 信託の変更
第2節 信託の併合
第3節 信託の分割
第1款 吸収信託分割
第2款 新規信託分割
第7章 信託の終了及び清算:第163条〜第184条
第1節 信託の終了
第2節 信託の清算
第8章 受益証券発行信託の特例:第185条〜第215条
第1節 総則
第2節 受益権の譲渡等の特例
第3節 受益証券
第4節 関係当事者の権利義務等の特例(受益証券発行信託の受託者の義務の特例)
第9章 限定責任信託の特例:第216条〜第247条
第1節 総則
第2節 計算等の特例
第3節 限定責任信託の登記
第10章 受益証券発行限定責任信託の特例(会計監査人の設置等):第248条〜第257条
第11章 受益者の定めのない信託の特例(受益者の定めのない信託の要件):第258条〜第261条
第12章 雑則:第262条〜第266条
第1節 非訟
第2節 公告等
第13章 罰則:第267条〜第271条
附則

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