御器谷法律事務所

更新料の実務、相場


1. 借地、借家の更新料とは、
 借地契約や借家契約において、その賃貸借契約が期間満了によって終了するときに、その契約を更新するために、更新のいわば対価として賃借人から賃貸人に対して支払われる一時金である、と一般的には言われています。
  この更新料については、借地借家法においてこれを直接規定する条文はありません。
 更新料は、第二次大戦後において東京や横浜において貸家や貸地が不足したため、主にこれら都市部において更新料が授受されるようになったとの指摘もあります。つまり、更新料は、地域性が強く、都会において、しかも東京を中心として主に授受されるようになったとの指摘があります。
 従って、更新料については、地方と東京では全く違う感覚を実際に経験したことがあります。
 以下では、主に東京を中心とした更新料についてコメントいたします。

2. 更新料支払の慣習の有無
 借地における更新料支払の慣習の有無については、最高裁判所昭和51年10月1日の判決があります。つまり、その判旨は、
 「宅地賃貸借契約における貸借期間の満了にあたり、賃貸人の請求があれば当然に賃貸人に対する賃借人の更新料支払義務が生ずる旨の商慣習ないし事実たる慣習が存在するものとは認めるに足りないとした原審の認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして、是認することができ」る。

3. 更新料支払の実務
(1) 更新料を支払う旨の特約
 借地や借家に関する賃貸借契約書において更新料を支払う旨を特約することがあります。この場合においては、更新料の額が相当なものであると考えられる場合には、借地借家法第9条の規定にかかわらず、一方的に賃借人に不利なものとは考えられず、有効なものと考えられます。
(2) 更新料支払の実務の取扱い
 東京においては、借地の賃貸借契約書において更新料が明記されていない場合においても、地主と借地人において今後の賃貸借契約関係を円満に進める見地からその合意に基づいて相当額の更新料の授受をすることを多く見かけます。
 また、この観点から当事者間に話し合いがまとまらない場合において、民事調停の申立てによりこれを解決することもあります。

4. 更新料の相場
(1) 借地の更新料の相場
 この点は、東京においても、その土地の面積、山手か下町か、地価上昇の傾向、現況地代と適正地代の差、金利の傾向等により一概に言うことは困難でありますが、強いて借地の更新料の相場を言うと、借地権価格の3%〜5%〜10%位という指摘があります。
(2) 借家の更新料の相場
 借家の更新料は、賃貸借契約書に明記されることが多く、賃貸借の契約期間が2年の場合には更新料は新家賃の1ヶ月分とする例を多く見ています。

5. 借家の更新料は、有効か、無効か?
  1. 2つの高裁判決
     借家の更新料特約が有効か、無効かにつき、2つの高等裁判所が無効と有効との判断が分かれています。
     主に消費者契約法第10条や民法第90条の公序良俗違反の有無が問題とされています。
     借家の更新料については、東京都・神奈川県・千葉県では相当な高い割合で更新料を取っています。これに対して、大阪や京都では余り更新料を取っていない事例も多く、地域間で差が顕著とも言えます。
     今後の最高裁判所の判決が注目されます。

  2. 大阪高等裁判所平成21年8月27日判決−更新料は無効
    (1)事案の概要
     居住用建物の借家契約、賃料月4万5,000円、1年の賃貸借期間、更新料10万円を支払う特約あり
    (2)判旨
     本件更新料約定の下では、それがない場合と比べて控訴人に無視できないかなり大きな経済的負担が生じるのに、本件更新料約定は、賃借人が負う金銭的対価に見合う合理的根拠は見出せず、むしろ一見低い月額賃料額を明示して賃借人を誘引する効果があること、被控訴人側と控訴人との間においては情報収集力に大きな格差があったのに、本件更新料約定は、客観的には情報収集力の乏しい控訴人から借地借家法の強行規定の存在から目を逸(そ)らせる役割を果たしており、この点で、控訴人は実質的に対等にまた自由に取引条件を検討できないまま当初本件賃貸借契約を締結し、さらに本件賃貸借契約に至ったとも評価することができる。
     このような諸点を総合して考えると、本件更新料約定は、「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」ということができる。
     以上のとおりであるから、本件賃貸借契約に定められた本件更新料約定は、消費者契約法10条に違反し、無効であるというべきである。
     したがって、控訴人が平成14年から平成17年までの毎年8月末の更新時期とされる時期に被控訴人に支払った毎回10万円合計40万円の更新料は、法律上の原因なくして支払われたといわなければならない。

  3. 大阪高等裁判所平成21年10月29日判決−更新料は有効
    (1)事案の概要
     居住用建物の借家契約、賃料月5万2,000円、2年の賃貸借期間、更新料は旧賃料の2ヶ月分を支払う特約あり。
    (2)判旨
     賃貸人が賃貸借契約を締結するにあたり、賃借人に対し、賃貸借期間の長さに応じた賃借権設定の対価の支払いを求めようとすることには一定の必要性と合理性が認められ、法的に許されないものでもない(賃借人としては、それに納得できないのであれば、契約を締結しなければよいのであって、これを契約条項の押し付けであるとは認められない。)ことを併せ考えると、更新料支払条項によって支払いを義務付けられる更新料が、賃貸借契約の締結時に支払うべき礼金の金額に比較して相当程度抑えられているなど適正な金額にとどまっている限り、直ちに賃貸人と賃借人の間に合理性のない不均衡を招来させるものではなく、仮に、賃借人が、賃貸借契約の締結時において、来るべき賃貸借契約の更新時において直面することになる更新料の支払いという負担について、それほど現実感がなかったとしても、そもそも更新料を含めた負担額を事前に計算することが特段困難であるとはいえないのであるから、更新料の金額及び更新される賃貸借期間等その他個別具体的な事情によっては、賃借人にとって信義則に反する程度にまで一方的に不利益になるものではないというべきである。
     以上のような観点から、本件について検討すると、前記認定事実(前記第二の三において補正及び追加した原判決記載の前提事実)によれば、本件賃貸借契約の契約締結時に定められた賃貸借期間は2年であり、その際に支払うべき礼金は20万円(当時の月額賃料5万2000円の4か月分弱)とされ、2年後に賃貸借期間を2年更新する場合の更新料を旧賃料の2か月分とし、その後も同様とする旨の本件更新料支払条項が定められたというのである。
     そうすると、本件更新料支払条項により、賃貸人である被控訴人としては、賃貸借期間の長さに相応した賃借権設定の対価を取得することができる一方で、賃借人である控訴人は、2年後の更新時において、賃貸借期間をさらに2年延長するにあたり、旧賃料の2か月分の更新料の支払義務が生じることになるものの、支払うべき更新料は、礼金よりも金額的に相当程度抑えられており、適正な金額にとどまっているということができるのであって、賃貸借契約書(甲1)を精査しても、賃貸借契約の更新という名の下で実質的に新たな賃貸借契約を締結させられるような事情があったとは到底認めることができない。そして、仮に、本件更新料(10万4000円)を事実上の賃料として計算すれば、実質的な月額賃料は約5万6333円([10万4000円+5万2000円×24か月])÷24か月≒5万6333円)になるところ、賃貸借契約書(甲1)に記載された月額賃料である5万2000円と比較しても、その差額は1か月あたり5000円未満であって、更新料支払条項を設定したことによって上記程度の金額差が生じたからといって、名目上の賃料を低く見せかけ、情報及び交渉力に乏しい賃借人を誘引するかのような効果が生じたとは認められないというべきである。しかも、本件事案において、仮に、本件更新料が存在しなかったとすれば、月額賃料は当初から高くなっていた可能性があるところ、これと比較して、本件更新料が存在しなかったことの方が、果たして賃借人である控訴人にとって実質的に利益であったといえるのかは疑問である(上記のとおり、更新料支払条項が法的に許されないことになれば、月額賃料が増額される可能性が高くなるというのであるから、例えば、本件事案において、本件更新料が元々存在しなかったとしても、その分、月額賃料が5000円高くなっていたとすれば、全体的な負担はかえって重いことになる。)ことからすると、本件更新料支払条項が設定されていたことによって、賃借人である控訴人が、信義則に反する程度にまで一方的に不利益を受けていたということはできない
     そうすると、控訴人が、本件賃貸借契約を締結した当時、24歳の会社員であったことを併せ考えれば、本件更新料支払条項が控訴人の無知あるいは錯誤等に乗じて設定されたものとは到底認められないところ、前記判示のとおり、本件更新料の趣旨及び金額(特に礼金及び月額賃料との比較)等に照らせば、本件更新料支払条項によって、賃借人である控訴人が信義則に反する程度に一方的な不利益を受けることになるものではないから、本件更新料支払条項が暴利行為に該当するものと認める余地はなく、民法90条に反して無効と解することはできない


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