御器谷法律事務所

株式の評価

税務訴訟においても非上場会社の株価の評価が問題となることがあります。下記の旺文社事件はこれが争われた一例としてご紹介いたします。
東京高等裁判所 平成19年1月30日判決
旺文社事件
取引相場のない非上場会社の株式の評価につき時価純資産価額方式を採用した事案

・事案の概要

・判旨
  1. 法人税法第22条2項「無償による資産の譲渡」の適用の可否

     上記事実によれば、被控訴人は、アトランティック社に対する持株割合を激減させ、アスカファンド社の持分割合を九三・七五%とすることによって、アトランティック社の株式二〇〇株に表章されていた同社の資産価値の大部分を対価を得ることなく、アスカファンド社に移転させることを意図したものということができ、そして、上記事実関係に基づけば、本件新株発行は、被控訴人、アトランティック社、センチュリー文化財団及びアスカファンド社の各役員が意思を相通じて行ったものと推認することができるから、アスカファンド社としても、被控訴人の上記のような意図を了解して、上記資産の移転を受けたものということができる。
     そこで、アトランティック社の株式に表章された資産価値は、被控訴人において支配し、処分することができたところ、被控訴人は、このような利益をアスカファンド社との合意に基づいて同社に移転したものということができる。すると、この資産価値の移転は、被控訴人が意図し、アスカファンド社が了解したところが実現したものということができるから、法二二条二項の取引、すなわち「無償による資産の譲渡」に当たるということができる。

  2. 文化放送株式の評価について

     財産評価基本通達(平成12年課評2−4、課資2−249による改正前のもの)185は、企業の継続を前提とした場合においても、1株当たりの純資産価額の算定に当たり法人税額等相当額を控除することとしており、これは、平成7年2月当時において、一般に通常の取引における当事者の合理的意思に合致するものとして、法人税基本通達(平成12年課法2−7による改正前のもの)9−1−14(4)にいう、「1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」に当たるというべきである。そして、このような価額によって株式の価額を評価し、これを前提に法人の収益の額を算定することは、法人税法の解釈として合理性を有するといい得る。そこで、本件においては、関係法人が文化放送株式について法人税等相当額を控除しない方式で評価する方が適切であると認識していたことを窺い知る証拠はないから、文化放送の1株当たりの純資産価額の評価においては、法人税額等相当額を控除すべきである。

  3. 全国朝日放送株式の評価について

     以上のような事実によれば、アトランティック社が単に配当を期待して全国朝日放送株式を保有していたと解するのは相当ではなく、アトランティック社は、全国朝日放送の事業経営につき上記持株割合に基づく影響力を有していたと推認するのが相当であり、しかも、被控訴人と株式会社旺文社メディアは、平成七年三月一三日に全国朝日放送の株式一二四二株を一株五四〇万円で売買したのは、同株式を配当還元方式で評価するよりも時価純資産価額方式(法人税等相当額を控除しない。)による方が適切であることを認識していたものということができ、被控訴人の一〇〇%出資の子会社であるアトランティック社も同様の認識であったと推認することができる。したがって、全国朝日放送株式を配当還元方式で評価すると著しく不合理な結果を生じさせて課税上の弊害をもたらすということができ、そして、上記のように、全国朝日放送株式は非上場株式であり、気配相場や独立当事者間の適当な売買実例がなく、その公開の途上になく、同社と事業の種類や収益の状況等において類似する法人がなかったから、同社の株式は時価純資産価額方式によって評価するのが相当である。

  4. 結論

     そして、アトランティック社の資産価値のうち、三二〇〇株分の三〇〇〇株相当額からアスカファンド社の本件増資払込額一億七六二七万二七二五円を控除した残額二二一億九八二三万五〇一五円が被控訴人からアスカファンド社に移転したというべきであり、被控訴人は、本件事業年度において、同額の収益を得るとともに、アスカファンド社に対して同額の寄附金を支出したこととなる。
     したがって、被控訴人の納付すべき税額は、別紙三のとおり八二億七〇三五万五四〇〇円となる。また、これに対する過少申告加算税を国税通則法六五条一、二項に従って算出すると、一二億〇〇八二万六五〇〇円となる。

 この株式の評価につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい

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