御器谷法律事務所

就業規則

1. 就業規則の意義
 就業規則とは、労働者の労働条件や服務事項等について、使用者が作成する書面をいいます(労働基準法第9章、第89条から第93条)。就業規則には事実上、以下の2つの意味が認められます。
 第1に、労働基準法は、常時10人以上の労働者(アルバイト等も含む)を使用する使用者に、事業場ごとに就業規則を作成し、労働者代表の意見書を添付して労働基準監督署に届け出ることを義務付けています(労働基準法89条、90条)。したがって、就業規則の制定は、労働基準法に定められている就業規則作成義務の遵守という意味を有します。
 第2に、就業規則の制定は、労働契約法で定める労働条件の画一的かつ明確な設定としての意味を有します。これは就業規則で定める合理的な労働条件が、使用者と労働者の労働契約の内容になるということであり、企業内の使用者と労働者との間の労働条件に関する権利義務関係を定めるという意味をもつことであります(労働契約法7条)。

2. 就業規則の内容
(1)記載事項
・必要的記載事項
・絶対的必要的記載事項(労働基準法89条1号から3号)
…必ず就業規則で定めなければならない事項です。
始業及び終業の時刻、休憩、休日、休暇、交代制における就業時転換に関する事項
賃金の決定、計算支払方法、賃金の締切及び支払時期、昇給に関する事項
退職に関する事項(解雇事由を含む)
・相対的必要的記載事項(労働基準法89条3号の2から10号)
…使用者が制度を設けている場合は必ず記載しなければならない事項です。
退職手当に関する事項
臨時の賃金、最低賃金額等に関する事項
労働者の負担となる費用等に関する事項
安全衛生に関する事項
職業訓練に関する事項
災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
表彰、制裁に関する事項
その他事業場の全労働者に適用される定めに関する事項
・任意的記載事項
…労働基準法上記載を義務付けられていない事項です。
(2)注意点
就業規則の内容は、法令又は労働協約に反することはできません(労働基準法92条)。
就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、就業規則で定める水準にまで引き上げられます(労働基準法93条、労働契約法12条)。
労働条件を現状より低下させる不利益変更は原則として認められません。合理性がある場合に限って認められます。合理性は、不利益の程度、変更の必要性、変更後の内容の相当性、労働組合等との交渉状況、その他の事情を要素に判断されます(労働契約法10条本文)。このことは判例でも確認されています(秋北バス事件・最高裁判決昭和43年12月25日)。

3. 就業規則の制定手続
1) 必要的記載事項を含む就業規則を書面により作成します(労働基準法89条)。
内容については上述の通りです。
2) 労働者の代表からの意見聴取をします(労働基準法90条)。
従業員の過半数で組織される労働組合、かかる労働組合がない場合には従業員の過半数を代表する者の意見を聴くことが必要となります。
 「意見を聴く」ことが要求されているにすぎませんので、協議したり、同意を求めたりする必要はありませんが、無視するような態度は実務上好ましいものではありません。
 なお、労働者の代表は、使用者に対して自主性を有する立場にあることが要求されるので、原則として管理監督者でないことが必要となります(労働基準法規則6条の2第1項1号、労働基準法41条2号)。
3) 意見書を添付して労働基準監督署へ届出をします(労働基準法89条)。
2)で聴取した労働者の代表の意見を記載した書面を添付して、その事業場を管轄する労働基準監督署に届出をします。
4) 就業規則を労働者に周知させます(労働基準法106条1項)
周知は、使用者が就業規則を、労働者が常時見やすい場所に掲示する、備え置く、労働者に交付する、もしくは記憶媒体に記録し労働者が常時確認できる機器を設置する方法で行う必要があります(労働基準法106条1項、労働基準法規則52条の2)。
なお、就業規則の変更の場合にも同様の手続きをとる必要があります(労働基準法89条1項)。

4. 企業の労働問題と就業規則
(1)解雇
 解雇を巡るトラブルは、企業にとっては大きな問題です。解雇は、労働者にとり重大事項でありますから、合同労組なども参入する大々的な争いに発展することも少なくありません。
 集合的な雇用契約の機能を果たす就業規則に合理的な規定を置くことにより、かかるリスクを軽減することが可能となります。
(2)残業代
 退職者からの未払残業代請求が社会的にも大きな問題となったことがあります。未払残業代が明らかになりますと、罰則を持った労働基準法により支払が強制されます(労働基準法119条1号・37条)。未払残業代の支払いは請求者だけではなく、他の従業員についても生じ得るものであり、過去2年分に遡って算定されますし(労働基準法115条)、付加金も生じることがありますので(労働基準法114条)、使用者に大きな打撃を与え得るものとなります。
 このような問題は、就業時間や残業代の計算方法等について合理的な就業規則を制定することにより、軽減することが可能となります。
(3)セクシャル・ハラスメント
 男女雇用機会均等法は、いわゆるセクハラの防止について、就業規則等に規定し、周知・啓発することを義務付けております。
 かかる規定を設置していない場合、セクハラが生じた場合に、使用者の責任が問われる可能性が高くなります。
(4)パワー・ハラスメント
 精神障害等に係る労災認定基準の見直しにより、労災認定要件の要素に職場でのいじめ等が加わりました。
 使用者としては、いわゆるパワハラについても、リスク管理の見地から、セクハラ防止の場合同様の規定を就業規則等に取り込む必要があるといえます。

5. 就業規則制定の利点
 合理的な就業規則の制定は、使用者による、従業員の統一的、画一的、効率的な管理を可能にすると同時に、職場の規律と秩序の維持を可能にします。
 また、従業員が守るべき義務と責任を明確にし、近代的な労使関係を形成することができるという利点もあります。

 この就業規則についても遠慮なく当事務所にご相談下さい

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