御器谷法律事務所

不当な取引制限の要件としての「意思の連絡」


1. 意思の連絡とは、
 不当な取引制限(法§2・(6))が成立するには、客観的に複数の事業者の行為の結果が外形的に一致するのみならず、主観的にも事業者間における契約、協定、合意、申合せ等の主観的要件が必要とされています。
 この、共同行為成立のための契約、協定、合意、申合せ等の主観的要件を一般的には「共通の意思の連絡」ないしは「意思の連絡」と呼んでいます。

2. 「意思の連絡」の具体的内容とその立証
 カルテルが今日その違法性については広く理解されていることから、カルテルの成立要件である「意思の連絡」を直接証拠によって認定することは極めて困難なことが多いでしょう。
 従って、「意思の連絡」の具体的内容もその立証や認定方法によってこれを如何に合理的に考えてゆくかが重大な問題となっていると言えるでしょう。

3. 黙示の合意で足りる
 「意思の連絡」は、契約、協定等の明示の合意のみならず、黙示の合意でも足りるとされています。
 新聞販路協定事件東京高判昭和28年3月9日
「原告ら新聞発行本社の主張に対する判断において示したとおりであって、原告ら新聞販売店を含む東京都内の新聞販売店相互間に新聞販売の販路及び顧客の制限を内容とする本件地域協定が暗黙に形成された

4. 入札談合と「意思の連絡」
 入札談合においては、別稿「談合」において記載のとおり、(1)事前に受注予定者の決定に関する基本ルールを入札参加者間において合意しておく=基本合意と、(2)個々の入札ごとに受注予定者を決めていく合意=個別調整合意が必要とされています。
 しかし、この基本合意の成立を立証することが困難な場合があり、そのような場合には個別調整の事実を積み重ねこれらを間接事実として、談合の基本合意を推認する手法が採られることがあります。
 協和エクシオ事件公取委審判審決平成6年3月30日
「話合いによって受注予定者が決定するまでもなく、いわば無競争で日電インテクが受注予定者になることが多かったとしても、それは本件基本合意の認定の妨げにならず、各社の本件27物件についての対応は本件基本合意の存在を推認する事実といえる。」
 「話合いの当事者は、原則として「かぶと会」会員であり、入札に参加する同業者が集まって受注予定者を決める話合いをする本件のような場合には、当事者は、おのずから通常考えられる具体的な方法については、おおよそのことを予想し理解しているものと解され、話合いの方法等が決められていないものであっても、当然に一般的かつ通常予想される具体的な方法等は、上記合意の具体的な内容に含まれるものと解すべきである。」

5. 協調的価格引上げによる「意思の連絡」の認定
 大手企業においては明示の「意思の連絡」の直接証拠が乏しく、そのため事前の会合や連絡の存在、その具体的内容、行動の一致という間接事実から「意思の連絡」という直接事実を推認しようという手法が採られることがあります。
 東芝ケミカル事件東京高判平成7年9月25日
「ここにいう『意思の連絡』とは、複数事業者間で相互に同内容又は同種の対価の引上げを実施することを認識ないし予測し、これと歩調をそろえる意思があることを意味し、一方の対価引上げを他方が単に認識、認容するのみでは足りないが、事業者間相互で拘束し合うことを明示して合意することまでは必要なく、相互の他の事業者の対価の引上げ行為を認識して、暗黙のうちに認容することで足りると解するのが相当である(黙示による『意思の連絡』といわれるのがこれに当たる。)。」
「特定の事業者が、他の事業者との間で対価引上げ行為に関する情報交換をして、同一又はこれに準ずる行動に出たような場合には、右行動が他の事業者の行動と無関係に、取引市場における対価の競争に耐え得るとの独自の判断によって行われたことを示す特段の事情が認められない限り、これらの事業者の間に、協調的行動をとることを期待し合う関係があり、右の『意思の連絡』があるものと推認されるのもやむを得ないというべきである。」

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