御器谷法律事務所

企業と法律 「株主代表訴訟」

1.
株主代表訴訟とは、

6ヶ月前よりの株主が、会社に代って、取締役の会社に対する責任を追及する損害賠償請求訴訟(旧商法§267・会社法847条)。

2. 趣旨
(1) 会社においては、取締役の会社に対する責任を追及することが行なわれにくい現実を踏まえて、株主が直接取締役に対して訴訟を提起できるものとして、株主による会社ないし取締役への監視・監督機能を強化充実し、もって会社運営の適正を期そうとした。
(2) 特に6ヶ月前から株式を有する株主であれば、低額の訴訟手数料(1万3,000円)で訴訟を提起できるようになり活発化した。
(3) 現実には、中小企業等における経営権の争いの場合等においても株主代表訴訟が多く提起されるようになり、同族会社においても法に従った(コンプライアンス)会社運営が強く求められる反面、悪意による訴訟提起として担保提供命令の可否が争われることも多くあらわれてきました。

3. 要件
(1) 原告は、6ヶ月前より引続き株式を有する株主であること
(2) 取締役が会社に対して責任を負う事実があること
旧商法§266・(1)の各事実。特に法令違反事実が問題となります。新会社法では、任務懈怠として問題となります(会社法423条1項)。
@) 取締役の具体的法令違反
商法、独禁法、証取法等の違法行為
A)取締役の忠実義務違反
経営判断の誤り−経営者としての合理的裁量の範囲の逸脱の有無
 「経営判断の原則」
取締役は、退任後もその在職中の行為につき問題とされる余地があります。
被告となる取締役は、実際業務執行を行なった代表取締役のみならず、監視・監督義務を怠った他の取締役も問題とされることが多くあります。
(3) 会社に損害が発生したこと
(4) 上記(2)と(3)との間の相当因果関係の存在
(5) なお、新会社法では「責任追及等の訴えが当該株主若しくは第三者の不正な利益を図りまたは当該株式会社に損害を加えることを目的とする場合」には請求できないとの規定が新設されました(会社法847条1項ただし書)。

4. 手続
(1) 株主は、先ず会社(監査役又は取締役会が定める者)に対して書面にて取締役の責任を追及する訴訟の提起を請求します。
会社が上記請求より60日以内に訴訟を提起しないときは、株主は株主代表訴訟を提起することができます。
(2) 株主代表訴訟の提起が悪意に基づくときは、取締役の請求により裁判所は相応の金額の担保提供命令を下すことができます。
悪意とは、株主の主張そのものが十分な事実上、法律上の根拠に基づかない場合であり、具体的には株主が不当な個人的な利益を追求するときや、取締役の困惑を目的とするとき、取締役への嫌がらせを目的とするとき等が考えられます。
(3) 株主は会社に対して訴訟告知をし、会社はその旨を公告し株主に通知するものとし、又、会社は訴訟参加することも認められます(旧商法§268、会社法849条)。
また、株主代表訴訟において和解をするときは、裁判所は和解内容を会社に通知することになります(同条、会社法850条)。

5. 責任の軽減
取締役の責任の軽減については、別稿の「商法改正Q&A」の「平成13年12月改正」をご覧下さい。

6. 役員賠償責任保険
会社の取締役を対象とし株主代表訴訟等に備えた「役員賠償責任保険」への加入も行なわれています。
この保険については、対象となる行為の範囲や、その保険料につき会社で負担すべき分があっていいか等の問題があります。
ただこの保険においても、取締役の故意による犯罪行為等は保険の対象とならないことは十分注意しなければなりません。

7. 実務上のアドバイス
取締役は、日々の企業運営について法令遵守(コンプライアンス)を心掛け、株主代表訴訟を提起されないよう事前の十分な留意をすることが必要となってきました。
そして、万一取締役が株主代表訴訟を提起された場合には、速やかに弁護士に相談して対処を考慮すべきです。その際、会社の顧問弁護士は、弁護士倫理上一般的には被告の取締役の訴訟代理人には就任することはできないと考えられるでしょう。

経営判断の原則
元来はアメリカの判例上認められた原則です(Business Judgement Rule)。会社の取締役の経営判断が結果として会社に損害を生じさせた場合においても、その判断が誠実性と合理性を有する一定の要件のもとで行なわれたときは、取締役の責任を問うべきではない、という考え方。
具体的には、次の諸点を考慮すべきとされることが多いと思われます。
(1) 事前に十分な調査研究及び情報の収集を行ったこと
(2) 当該経営判断をするに際して、取締役会等で十分な論議と検討を行ったこと
(3) 通常の経営者として合理性のある判断を行ったこと
(4) 上記(1)から(3)につき、後日の立証等のために資料を整備し、取締役会議事録にその詳細を記載しておき、さらに専門家(弁護士、会計士、弁理士、不動産鑑定士等)の意見書等をとっておく等の措置が必要となります。
8. 判例
(1) 大和銀行株主代表訴訟−大阪地判平成12年9月20日
「コンプライアンス」の判例をご参照下さい。
約830億円の損害賠償を命じたが、その後控訴審で旧経営陣が2億5,000万円支払う和解が成立。
(2) ダスキン株主代表訴訟
「食の安全と法」の「D社株主代表訴訟」をご参照下さい。
担当取締役に約53億円の損害賠償を命じた。
担当以外の取締役、監査役全員について、各5億5,805万〜2億1,122万円の請求を認容。
(3) 蛇の目ミシン株主代表訴訟−東京高判平成20年4月23日
元社長らに583億円の損害賠償を命じた。
この株主代表訴訟につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい
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