御器谷法律事務所

削除請求仮処分

1. 削除を求める仮処分とは
インターネット上に名誉を侵害する表現行為がなされた場合に、本案訴訟決着までの暫定的な措置として、その名誉毀損表現の削除を命じることをいいます。

2. 被保全権利・必要性
 名誉毀損にあたる表現の削除を求める場合、その法的根拠は、人格権としての名誉権に基づく妨害排除・予防請求権であり、これが仮処分の被保全権利となります。民法723条の名誉毀損における原状回復処分を法的根拠とすることも考えられますが、この場合には不法行為を前提とするため、加害者の故意又は過失が要件となり、人格権としての名誉権を根拠とする場合よりも、要件が厳しくなるとも言われています。
 名誉毀損を理由とする出版物の頒布等を差し止める仮処分が問題となった最高裁判所昭和61年6月11日の判決は、「人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価である名誉を違法に侵害された者は、損害賠償(民法七一〇条)又は名誉回復のための処分(同法七二三条)を求めることができるほか、人格権としての名誉権に基づき、加害者に対し、現に行われている侵害行為を排除し、又は将来生ずべき侵害を予防するため、侵害行為の差止めを求めることができるものと解するのが相当である。けだし、名誉は生命、身体とともに極めて重大な保護法益であり、人格権としての名誉権は、物権の場合と同様に排他性を有する権利というべきであるからである。」と判示しています。
 もっとも、表現活動の差し止めは表現活動に対する制約になることもあるので、被保全権利である差止請求権の成立および仮処分の必要性について、慎重な判断が必要となります。上記最高裁判所昭和61年判決は、問題となる表現が、公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等の表現行為に関するものである場合には、「その表現内容が真実でなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものでないことが明白であつて、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるときは、当該表現行為はその価値が被害者の名誉に劣後することが明らかであるうえ、有効適切な救済方法としての差止めの必要性も肯定されるから、かかる実体的要件を具備するときに限つて、例外的に事前差止めが許される」と判示しました。
 ただし、ホームページ上の名誉毀損表現は、公共の利害に関する事項とはいえないことも多く、また、掲示板等に記載された後に事後的に差し止めを求めることが多いと考えられますので、そのような場合には上記最高裁判決の基準よりも比較的緩やかに仮処分が認められるとの見解も存します。

3. 誰に対し削除を求めるか
 まず、掲示板等に名誉毀損表現を掲載した者を相手方として名誉毀損表現の削除を求める仮処分を申立てることが考えられます。しかし、匿名性が高いインターネット上では文章を掲載した者が誰であるのかを特定することが困難な場合があります。そのような場合には掲載者に対する削除を求める仮処分に実効性はあまりありません。そのような場合には、当該表現の掲載されたホームページ等のデータを自己のサーバーに蔵置させているプロバイダや掲示板等の管理人等に対して表現の削除を求める仮処分を申し立てることになります。

4. 主文例
一つの主文例としては、「債務者は、債権者に対し、インターネット上のホームページ(アドレス http:// 〜)における別紙発言目録記載の文言を削除しなければならない。」等との主文となるでしょう。

5. 問題点
 ただし、インターネット上での表現は比較的容易に行えることから、名誉毀損発言がいったん削除されても、再び掲載される可能性があるので、将来の差し止めを請求することが必要になる場合もあります。また、掲載者を特定するために「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(通称、プロバイダ責任制限法)に基づく発信者情報の開示請求の仮処分などが必要になることもあります。

 この削除請求仮処分につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい

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