御器谷法律事務所

離婚の法律相談

10. 子の引渡を巡る問題点
Q10. 夫婦の一方が他の一方に子を奪われた場合に、その子を取り戻す方法について教えてください。

A. 回答

1. 他方の親に奪取された子を取り戻すための法的手段
両親が離婚等で揉めている際に、一方の親が子を奪取することがあります。その場合、子を奪われた方の親が、子を迅速に取り戻すためにはどのような方法があるのでしょうか。以下概説します。

(1)調停前の仮の措置
調停申立後、手続き終了までの間は、調停委員会に対し、調停を円満に進行するうえで有効な仮の措置を申し立てることが出来ます。その仮の措置として子供を原状の監護状況に戻すように求めることが可能です。もっとも、この措置に執行力はありません。正当な理由なくして従わない場合に10万円以下の過料が科せられるにすぎません。
ですから、利用件数は一般的には少ないものとなっております。

(2)審判前の保全処分
1)概要
子の引渡を求める審判の申し立てがなされた家庭裁判所は、当事者の申立により必要な保全処分を命ずることができます。これは本案審判に付随する手続きとして緊急に暫定的に行われる方法です。
この対象として、子の監護に関する事件があるのです。
2)手続き概略
申立をする場合の申立の趣旨としては、「相手方は申立人に対し、事件本人を仮に引き渡せ」とか「相手方は申立人が子を引き取ることを妨害してはならない」等の書き方があります。
子の引渡についての保全処分の申立がなされると、審判官が直接申立人や相手方等を審訊する方式がとられる場合もあります。この審訊には家事調査官が立会って、その後、審判官からの調査命令が出され、調査官による面接調査等が行われる場合も多いようです。
3)判断基準
判断基準は、a. 本案審判が認容される蓋然性と b. 保全の必要性が挙げられます。
しかしながら、基本理念は子の福祉であります。すなわち、いずれに監護させるのが子の福祉に合致するのかという理念のもとに判断がなされることになります。
4)実現方法
審判前の保全処分には執行力があります。
履行勧告(調査官による勧告)、間接強制(引き渡さない場合の 1日の賠償金を定めます)の手段があります。直接強制が可能かどうかは争いがあり見解が分かれています。いずれにしても、しばらくの間子供と権利者との面接交渉を試みる等の工夫をして強制手段を回避することが望ましい場合もあるといわれております。

(3)人事訴訟手続法上の仮処分
人事訴訟手続法により離婚訴訟に付随して子の引渡の措置を求めることが出来ることになっています。その場合は、民事保全法が準用されることになりますので、子供および関係者に著しい損害または急迫の危険を避けるため必要ある場合に子の引渡の仮処分を地方裁判所へ申し立てることができるとされています。

(4)人身保護法による手続
人身保護法による救済請求手続は、地方裁判所もしくは高等裁判所の管轄であり、本来ならば他の方法では目的達成が出来ない非常手段でありますが、子の引渡については、迅速かつ効果的であるとしてかつて少なからず利用されてきた実態がありました。
しかしながら、平成 5年10月19日の最高裁判所第三小法廷判決は、別居中の夫婦間での子供の奪い合いの事案について、人身保護請求の認められる要件を厳格に制限する解釈を示し、さらにその中の補足意見において、共に親権を有する別居中の夫婦の間における監護権を巡る紛争は、本来、家庭裁判所の専属的守備範囲に属し、家事審判の制度、家庭裁判所の人的、物的の機構、設備は、このような問題の調査、審判のためにこそ存在する旨、及び、審判前の保全処分を活用するべきである旨説示しました。
従って、近時は、家庭裁判所における審判や審判前の保全処分が子の引渡の事例において多用されるようになっております。

2. まとめ
離婚件数は増加の一途をたどり、それに反比例して子の数は減っています。
夫婦間で離婚についての合意は成立しているにもかかわらず、子の親権、監護権を巡って争いになる例も多々見受けられるところであります。
子の奪い合いの事例においては、あくまでも子の福祉を基本理念に、子にできるだけ不利益が及ばないように、迅速かつ適正な手続をとることが肝要であると考えられます。

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