御器谷法律事務所

研 修 医

1.
研修医とは、
 一般的には臨床研修医のことを指します。つまり、大学の医学部や医科大学の医学部生が医師国家試験に合格した後、臨床実務を2年間、大学病院や民間の一般病院等で指導医の指導のもとにより専門的医学的知識と技術等を学ぶことを目的として研修している医師のことを意味します。
 この新人医師への臨床研修が平成16年4月より義務化されました。

2. 問題の所在等
 この研修医をめぐっては様々の問題があります。例えば、
(1)医療訴訟と研修医
 研修医が診療、治療を行った際のその内容が医療水準との関係から医療訴訟上問題となることがあります。また、指導医の具体的指導等に関して病院の使用者責任が問題となることもあります。
(2)研修医の労働者性
 研修医は低い給料のもとに過酷な労働を強いられているとの指摘も一部ではあり、その点から研修医の過労死や最低賃金法を下回る賃金の請求が問題となったことがあります。

3. 判例の紹介
 ここでは研修医の労働者性が問題となった判例を紹介します。

(1)大阪地方裁判所 平成13年2月25日判決−関西医科大学過労死訴訟
 被告病院における研修は、医師国家試験に合格した医師を臨床医に育成するという教育的側面があると同時に、他面において、医師免許を取得した研修医は、入院患者に対する採血・点滴、指導医の処置の補助など被告の業務の一部を研修の一環として担っており、奨学金名目で実質的にはその労働の対価と考えられる金員を受領していたことからすると、被告の具体的指揮・監督に基づき労働を提供していたと評価することもできるところである。研修医の研修は、その内容が高度に専門的であるため長期にわたってはいるが、一般企業でいうところの新人研修的な性格を有しているということができる。医師のような高度に専門的な職業の場合、医師国家試験に合格した後、臨床医に必要な知識・技術を修得するためには相当の研修を積まなければならないことは当然であり、その初期において教育的側面が強いとしても、研修医が将来的にも被告病院やその関連病院で勤務しようとすれば、どうしても被告病院の指導監督の下に行われる研修を忠実に遂行していく必要があるのであるから、臨床研修には徒弟的な側面が存することも考慮すれば、研修医と被告病院との間には、教育的側面があることを加味しても、労働契約関係と同様な指揮命令関係を認めることができるというべきである。

(2)大阪地方裁判所堺支部 平成13年8月29日判決−関西医科大学賃金請求訴訟
 甲の「労働者」性について
 「使用される者」とは、他人の指揮命令ないし具体的指示のもとに労務を供給する関係にある者をいうと解されるが、具体的に「使用される者」に該当するか否かは、(イ)仕事の依頼、業務従事への指示等に関する諾否の自由の有無、(ロ)業務遂行上の指揮監督の有無、(ハ)場所的・時間的拘束性の有無、(ニ)労務提供の代替性の有無、(ホ)業務用器具の負担関係、(ヘ)報酬が労働自体の対償的性格を有するか否か、(ト)専属性の程度−他の業務への従事が制度上若しくは事実上制約されているか、(チ)報酬につき給与所得として源泉徴収を行っているか等を総合的に考慮して判断されるべきである。甲ら研修医は、本来的には、臨床研修において、医学的知識と技術、医師のあるべき姿勢、態度等を学ぶことを目的としており、その意味においては、いかに研鑚を深めるか等につき、自らの自発性に委ねられるところがあることは否定できないところであるが、甲らは、指導医が診察する際に、その診察を補助するとともに、指導医からの指示に基づいて、検査の予約等をしており、指導医と研修医との間に業務遂行上の指揮監督関係が認められること、平日(月曜日から金曜日)の午前7時30分から午後7時までの研修時間中においては、甲らに指導医からの指示に対する諾否の自由が与えられていなかったこと、月曜日から金曜日は午前7時30分までに被告病院に赴き、入院患者の採血を開始し、午後7時ころに入院患者への点滴が終了するまでは被告病院におり、土曜日及び日曜日についても、午前7時30分までには被告病院に赴き、入院患者の採血や点滴をしており、場所的・時間的拘束性が認められること、業務用器具についてはいずれの作業も被告病院の器具を用いること、被告は研修医に対して月額6万円及び副直手当相当額の金員を支給していること、被告病院における研修内容及び拘束時間に照らせば、甲ら研修医は、事実上、他の業務への従事が制約されていること、甲が被告から支給を受けた金員は、給与所得として源泉徴収がなされていることが認められ、これらの事情を総合して検討すれば、甲ら研修医は、研修目的からくる自発的な発意の許容される部分を有し、その意味において特殊な地位を有することは否定できないが、全体としてみた場合、他人の指揮命令下に医療に関する各種業務に従事しているということができるので、甲は「労働者」(労働基準法9条、最低賃金法2条1号)に該当すると認められる。

(3) 最高裁判所 平成17年6月3日判決−関西医科大学最高裁判決
 研修医は、医師国家試験に合格し、医籍に登録されて、厚生大臣の免許を受けた医師であって(医師法(平成一一年法律第一六〇号による改正前のもの。以下同じ。)二条、五条)、医療行為を業として行う資格を有しているものである(同法一七条)ところ、同法一六条の二第一項は、医師は、免許を受けた後も、二年以上大学の医学部若しくは大学附置の研究所の附属施設である病院又は厚生大臣の指定する病院において、臨床研修を行うように努めるものとすると定めている。この臨床研修は、医師の資質の向上を図ることを目的とするものであり、教育的な側面を有しているが、そのプログラムに従い、臨床研修指導医の指導の下に、研修医が医療行為等に従事することを予定している。そして、研修医がこのようにして医療行為等に従事する場合には、これらの行為等は病院の開設者のための労務の遂行という側面を不可避的に有することとなるのであり、病院の開設者の指揮監督の下にこれを行ったと評価することができる限り、上記研修医は労働基準法九条所定の労働者に当たるものというべきである。
 これを本件についてみると、前記事実関係によれば、本件病院の耳鼻咽喉科における臨床研修のプログラムは、研修医が医療行為等に従事することを予定しており、乙は、本件病院の休診日等を除き、上告人が定めた時間及び場所において、指導医の指示に従って、上告人が本件病院の患者に対して提供する医療行為等に従事していたというのであり、これに加えて、上告人は、乙に対して奨学金等として金員を支払い、これらの金員につき給与等に当たるものとして源泉徴収まで行っていたというのである。
 そうすると、乙は、上告人の指揮監督の下で労務の提供をしたものとして労働基準法九条所定の労働者に当たり、最低賃金法二条所定の労働者に当たるというべきであるから、上告人は、同法五条二項により、乙に対し、最低賃金と同額の賃金を支払うべき義務を負っていたものというべきである。

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