御器谷法律事務所

医 療 訴 訟 

1.医療における紛争
 現代においては、医療技術、新薬の開発が飛躍的にすすみ、以前からは考えられないほどの高度の医療を多くの国民が受けられるようになりました。ところが、医療をうけようとする人が増加し、病院の混雑、医師、看護婦の不足などの弊害が生じました。また、一部では医療現場での意識の低下が問題とされ、更に、患者側の権利意識が高揚したことなど、さまざまな要素から現代においては、医療における紛争が増加の一途をたどっています。

2. 医療事故、医療過誤とは
 医療事故とは、およそ医療に関わりのある場所で、患者側に損害を生ずるような一切の事故を指します。
 医療過誤とは、主として、いわゆる医療行為において医師側に過失があり、法的責任が生ずると見られる場合をいいます。
 医療事故と医療過誤とは混同して使用される場合がありますが、両者は、その意味が違いますので注意する必要があります。
 医療過誤が起きた場合、医師、看護婦等の当該医療行為にあたっていた者は、場合によっては業務上過失致死傷罪(刑法211条)という刑法上の罪で処罰される可能性があり、また、損害賠償責任(民法415条・債務不履行、民法709条・不法行為等)が民事上も発生する可能性があり、さらに、業務停止、医師免許剥奪などの行政上の責任も発生する可能性があります。

3. 医療訴訟の件数と勝訴率の概要
 医療過誤訴訟の提訴件数は、平成元年に年間300件台後半だった件数が、最近においては1,000件前後位のこともあります。
 また、勝訴率については、かつては2割を切る数字であったこともありましたが、最近は3〜4割程度との指摘もあり、他の通常訴訟とくらべると患者側にとっては依然厳しい状況です。
 なお、診療科目別では、内科・外科・産婦人科等に関する訴訟が多いようです。
 また、訴訟のうち相当な件数が和解で決着しているとの指摘もあります。

4. 医療訴訟の困難性
 医療訴訟は、弁護士の中でも特殊な事件として位置づけられる場合が多いようです。
なぜなら、訴訟の最大のポイントである過失の主張、立証のためには、医学知識、医療現場についての知識が不可欠でありますが、弁護士は、この点については素人であるということであります。
 また、 2番目のポイントとしては、診療経過についての客観的情報が医療関係者に独占されており、ほとんど患者側の手元に無いということです。
 さらに、 3番目として、患者の立場で協力してもらえる医師の確保が困難であるということであります。これは、医療関係者の間の身内意識が、他の医師に対する意見や証言を行いにくくしているものと考えられるのであります。
 また、患者側の勝訴率が、他の一般的な民事事件に比較して高いとは言い難いという現実もあります。

5. 医療訴訟の流れ
 以上のような医療訴訟はどのような流れで提訴され判決が下されるのでしょうか。
 ここでは、医療訴訟の流れを概観します。

(1) 訴訟前の段階
医療に関する法律相談
(この時点で責任追及が困難であることが明らかなケースもあります。)
 
調査について弁護士に依頼
 
証拠保全手続き・裁判手続きとなります。
(カルテ、レントゲン写真等の入手)
 
証拠保全で入手したカルテ等の検討
協力医からの意見聴取等
(この段階で、責任追及できないと判断される場合もありえます)
 
責任追及可能と判断される場合
相手方の医療機関に対して、場合によっては釈明事項書等を送付し、回答を求め、交渉を開始します。
(この段階で示談で交渉が成立する場合もあります)
 
不回答、交渉拒否
 

(2) 訴訟提起後の段階
訴状を裁判所に提出し訴え提起をする
 
答弁書提出
 
準備書面の提出
 
証拠調べ
医師、看護婦、患者、付添人、家族等が法廷で証言します。
また、カルテ、看護記録等や医学上の文献も調べて、真実はどうであったのか明らかにします。
 
鑑定
医療に関して事故が生じた場合、医師、看護婦等に過失があったのかどうかについては、多くの場合専門家の鑑定をもとに判断されます。
 
和解
審理中に、裁判所から和解の勧告があることがあります。これは、話し合いによる事件の解決方法であり、双方が合意に達すれば訴訟は和解で解決することになります。もっとも、この場合は医師の責任は明確にならない場合がほとんどです。
 
判決
以上の経過をたどり、双方の主張、立証が出つくした時には、弁論が終結され判決が下されることになります。
勝訴率は、近時若干の上昇は見られますが、一般民事事件比較すると非常に低いものとなっております。
 
高等裁判所への控訴
(判決に不服のある当事者は高等裁判所へ控訴することができます)
 
最高裁判所への上告
(但し、憲法、法律、判例等に違反している場合に限られます)

6. 証拠保全手続き
 医療過誤事件において、カルテ等の証拠の重要性は言うまでもありません。しかしながら、そのほとんどが患者側の手元にはありません。また、診療についての記録などがいつまでも保存されているとは限りません。最も重要と思われるカルテでさえ保存期間はたったの 5年です。そこで、医師や病院の管理下にあるカルテ等の重要書類を廃棄、紛失、改ざん等される前に何としても確保する必要が生じます。そこで、これら重要書類を確保するために証拠保全(民事訴訟法235条以下)という裁判上の手続きを行い、証拠を患者側の手元に確保することが極めて重要になります。
 医療機関側からしても、証拠保全によって記録が確定されていた方が、かえって事実関係がはっきりし、また、改ざんの可能性などを否定しやすくなり結局医療機関側のためにもなることもあります。

7. 証拠保全で入手した資料の検討
 証拠保全で得た資料(カルテ、レントゲン写真、診療記録、看護記録等)を翻訳し、検討します。そして、協力医のアドバイスを得て問題となっている医療行為について検討し、医療関係者の過失や因果関係の有無等を検討することになります。

8. 鑑定とは
 医療訴訟は、非常に専門的な医学の知識を必要とするため、裁判官や弁護士にとっても医師の述べていることが正当なのか不当なのか判断が付きかねるものです。そこで、当該医療行為を専門家である第三者が検討して過失があったのかなかったのかの意見を述べてもらうことがよくあります。これを鑑定と呼びます。

9. 以上医療に関する紛争、医療訴訟を概観しましたが、
 医療と法律の絡んだ難しい問題が複雑に絡み合うことから、新聞紙上でも幾度も話題になっておりますが、提訴された場合の第1審の平均審理期間は通常の民事事件と比較して約2倍強の長期間(2〜3年前後位)となり、患者側にとっても、医師側にとっても非常に困難を極める場合が多く見受けられます。
 医療に関して紛争が生じた、若しくは生じそうだと考えた際には、速やかに弁護士に相談し、迅速且つ慎重な対応をとられることをお勧めします。

 この医療訴訟につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい

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