御器谷法律事務所

第一次指針―平成23年4月28日

原子力損害賠償紛争審査会は、平成23年4月28日、「東京電力(株)福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する第一次指針 (PDF)」を発表しました。
 その概要は、次のとおりです。
 なお、いわゆる風評被害については、どこまで賠償の対象とするかについては今後の検討課題とされました。

第1. はじめに
 このたびの指針(以下「第一次指針」という。)においては、政府による指示に基づく行動等によって生じた一定の範囲の損害についてのみ、基本的な考え方を明らかにする。
 具体的には、1)「政府による避難等の指示に係る損害」として、「避難費用」、「営業損害」、「就労不能等に伴う損害」、「財産価値の喪失又は減少等」、「検査費用(人)」、「検査費用(物)」、「生命・身体的損害」、「精神的損害」を、2)「政府による航行危険区域設定に係る損害」として、「営業損害」、「就労不能等に伴う損害」を、3)「政府等による出荷制限指示等に係る損害」として、「営業損害」、「就労不能等に伴う損害」を対象とした。
 なお、政府の指示等によるもの以外が損害賠償の対象から除外されるものではなく、第一次指針で対象とされなかった損害項目やその範囲、例えば、第一次指針の対象外となった者の避難費用や営業損害(いわゆる風評被害も含む。)、本件事故の復旧作業等に従事した原子力発電所作業員、自衛官、消防隊員、警察官又はその他の者が被った放射線被曝等に係る被害、本件事故により代替性のない部品等の仕入れが不能となった取引先のいわゆる間接損害、地方公共団体独自の財産的被害、政府指示等が解除された後に発生する損害などのうち、合理的な範囲内で原子力損害に該当し得るものについては、今後検討する。

第2. 各損害項目に共通する考え方
 本件事故と相当因果関係のある損害、すなわち社会通念上当該事故から当該損害が生じるのが合理的かつ相当であると判断される範囲のものであれば、原子力損害に含まれると考える。

第3. 政府による避難等の指示に係る損害について
[対象区域]
 政府による避難等の指示があった区域は、以下のとおりである。
(1) 避難区域
 政府が原子力災害対策特別措置法に基づいて各地方公共団体の長に対して住民の避難を指示した区域
1)福島第一原子力発電所から半径20km圏内(平成23年4月21日には、原則立入り禁止となる警戒区域にも設定)
2) 福島第二原子力発電所から半径10km圏内(同年4月22日には、半径8km圏内に縮小)
(2) 屋内退避区域
 政府が原子力災害対策特別措置法に基づいて各地方公共団体の長に対して住民の屋内退避を指示した区域
3) 福島第一原子力発電所から半径20km以上30km圏内
(3) 計画的避難区域
 政府が原子力災害対策特別措置法に基づいて各地方公共団体の長に対して計画的な避難を指示した区域
4) 福島第一原子力発電所から半径20km以遠の周辺地域のうち、本件事故発生から1年の期間内に積算線量が20ミリシーベルトに達するおそれのある区域であり、概ね1か月を目途に、別の場所に計画的に避難することが求められる区域
(4) 緊急時避難準備区域
 政府が原子力災害対策特別措置法に基づいて各地方公共団体の長に対して緊急時の避難等の準備を指示した区域
5) 福島第一原子力発電所から半径20km以上30km圏内の部分から「計画的避難区域」を除いた区域のうち、常に緊急時に屋内退避や避難が可能な準備をすることが求められ、引き続き自主的避難をすること及び特に子供、妊婦、要介護者、入院患者等は立ち入らないことが求められる区域
[避難等対象者]
 避難等対象者の範囲は、政府の指示により避難その他の行動を余儀なくされた者として、以下のとおりとする。
1 本件事故が発生した後に対象区域内から同区域外へ避難のための立退き(以下「避難」という。)及びこれに引き続く同区域外滞在(以下「対象区域外滞在」という。)を余儀なくされた者
2 本件事故発生時に対象区域外に居り、同区域内に生活の本拠としての住居があるものの引き続き対象区域外滞在を余儀 なくされた者
3 対象区域内で屋内への退避(以下「屋内退避」という。)を余儀なくされた者
[損害項目]
1 検査費用(人)
(指針)
 本件事故の発生以降、「避難等対象者」のうち、対象区域内で屋内退避し、又は、同区域内から同区域外に避難した者が、放射性物質への曝露の有無等を確認する目的で受けた合理的な範囲での検査につき検査費用及びその付随費用(検査のための交通費等)を負担した場合には、被害者の損害と認められる。
2 避難費用
(指針)
避難等対象者が負担した以下の費用が、損害と認められる。
Ⅰ) 対象区域から避難するために負担した交通費、家財道具の移動費用
Ⅱ) 対象区域外に滞在することを余儀なくされたことにより負担した宿泊費及びこの宿泊に付随して負担した費用
Ⅲ) 避難等対象者が、避難等によって生活費が増加した部分があれば、その増加費用
3 生命・身体的損害
(指針)
避難等対象者につき、以下のものが、損害と認められる。
Ⅰ) 本件事故により対象区域からの避難等を余儀なくされたため、傷害を負い、健康状態が悪化し、疾病にかかり、あるいは死亡したことにより生じた逸失利益、治療費、薬代、精神的損害等
Ⅱ) 本件事故により対象区域からの避難等を余儀なくされ、これによる健康状態の悪化等を防止するため、負担が増加した検査費、治療費、薬代等
4 精神的損害
(指針)
 本件事故において、避難等対象者が受けた精神的苦痛(ここでは、生命・身体的損害を伴わないものに限る。)について、そのどこまでが相当因果関係のある損害と言えるか判断が難しい。しかしながら、少なくとも避難等を余儀なくされたことに伴い、正常な日常生活の維持・継続が長期間にわたり著しく阻害されたために生じた精神的苦痛の部分については、損害と認められる余地があり、今後、その判定基準や算定の要素などをできるだけ早急に検討する。
5 営業損害
(指針)
Ⅰ) 従来、対象区域内で事業の全部又は一部を営んでいた者が、政府による避難等の指示があったことにより、営業が不能になる等、同事業に支障が生じたため、現実に減収のあった営業、取引等については、その減収分が損害と認められる。
上記減収分は、原則として、本件事故がなければ得られたであろう売上高から、本件事故がなければ負担していたであろう(本件事故により負担を免れたであろう)売上原価を控除した額(逸失利益)とする。
Ⅱ) また、上記のように同事業に支障が生じたために負担した追加的費用(商品、営業資産の廃棄費用等)や、事業への支障を避けるため又は事業を変更したために生じた追加的費用(事業拠点の移転費用、営業資産の移動・保管費用等)合理的な範囲で損害と認められる。
6 就労不能等に伴う損害
(指針)
 対象区域内に住居又は勤務先がある勤労者について、同区域内に係る避難等を余儀なくされたことに伴い、その就労が不能等となった場合には、給与等の減収が損害と認められる。
7 検査費用(物)
(指針)
 対象区域内にあった商品を含む財物が、1)当該財物の性質等から、検査を実施して安全を確認することが必要かつ合理的であり、又は2)取引先の要求等により検査の実施を余儀なくされたものと認められた場合には、被害者の負担した検査費用は損害と認められる。
8 財物価値の喪失又は減少
(指針)
 財物につき、現実に発生した以下のものについては、損害と認められる。なお、ここで言う「財物」は動産のみならず不動産をも含む。
Ⅰ) 政府の指示による避難等を余儀なくされたことに伴い、対象区域内に所有していた財物の管理が不能等となったため、当該財物の価値の全部又は一部が失われたと認められる場合には、現実に価値を喪失した部分及びこれに伴う追加的費用(当該財物の廃棄費用等)については合理的な範囲で損害と認められる。
Ⅱ) Ⅰ)のほか、当該財物が本件事故の発生時対象区域内にあり、
ⅰ) 財物の価値を喪失又は減少させる程度の量の放射性物質に曝露した場合 又は、
ⅱ) ⅰ)には該当しないものの、財物の種類、性質及び取引態様等から、平均的・一般的な人の認識を基準として、本件事故により当該財物の価値の全部又は一部が失われたと認められる場合
には、現実に価値を喪失し又は減少した部分及び除染等の追加的費用について損害と認められる。

第4. 政府による航行危険区域設定に係る損害について
[対象区域]
海上保安庁により航行危険区域に設定された、福島第一原子力発電所を中心とする半径30kmの円内海域
[損害項目]
1 営業損害
(指針)
 航行危険区域の設定により、1)漁業者が、対象区域内での操業の断念を余儀なくされたため、現実に減収があった場合は、その減収分、2)内航海運業又は旅客船事業を営んでいる者等が、 同区域を迂回して航行したことにより費用が増加した場合又は減収が発生した場合には、当該費用の増加分又は発生した減収分、がいずれも合理的な範囲で損害と認められる。
2 就労不能等に伴う損害
(指針)
 航行危険区域の設定により、同区域での操業が不能等となった漁業者又は内航海運業者等の経営状態が悪化したため、そこで勤務していた勤労者が就労不能等を余儀なくされた場合には、給与等の減収が損害と認められる。
 
第5. 政府等による出荷制限指示等に係る損害について
[対象区域及び品目]
第一次指針においては、差し当たって、政府による出荷制限指示又は地方公共団体が本件事故に関し合理的理由に基づき行う出荷又は操業に係る自粛要請等(生産者団体が政府又は地方公共団体の関与の下で本件事故に関し合理的理由に基づき行う場合を含む。以下「政府等による出荷制限指示等」という。)があった区域及びその対象品目に係る損害を対象とする。
但し、上記区域以外においても、また、上記品目以外についても、政府等による出荷制限指示等に伴い、返品、出荷停止、価格下落等の被害が生じているから、これらがどこまで賠償の対象となる損害に該当するかについては、今後検討する。
[損害項目]
1 営業損害
(指針)
Ⅰ) 農林漁業者が、政府等による出荷制限指示等により、同指示等に係る対象品目の出荷又は操業の断念を余儀なくされ、これによって減収が生じた場合には、その減収分が損害と認められる。
Ⅱ) また、上記出荷又は操業の断念により生じた追加的費用(商品の廃棄費用等)合理的な範囲で損害と認められる。
Ⅲ) 対象品目を仕入れた流通業者等が、政府等による出荷制限指示等により、当該品目の販売等の断念を余儀なくされて生じた減収分も損害と認められる。
2 就労不能等に伴う損害
(指針)
 政府等による出荷制限指示等により、対象品目を生産する農林漁業者等の経営状態が悪化したため、そこで勤務していた勤労者が就労不能等を余儀なくされた場合には、給与等の減収が被害者の損害と認められる。

 この第一次指針につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい

執務の方針| 弁護士のプロフィール| 取扱事件 | ご案内 顧問契約 |

弁護士費用 | 事務所案内図 | リンク| トップ