御器谷法律事務所

独占禁止法に基づく差止請求

1. 差止請求制度の導入

 従来、独占禁止法違反行為については、公正取引委員会のみがその差止めを行うことができるに留まっていました。
 しかし、不公正な取引方法による独占禁止法違反行為については、損害の発生が継続的なものとなる場合が多く、さらに、特定の市場から排除されようとしているものにとっては、事後的な金銭賠償だけでは被害者の救済が不十分となる場合も多く考えられます。
 そこで、平成12年の法改正(平成13年施行)により、初めて、独占禁止法違反行為(不公正な取引方法)による被害者が、自ら直接裁判所に対して同法違反行為の差し止めを命じることを求めることが可能となりました。
 このような差止請求制度の創設により、個々の被害の救済を可能とし、さらに、同法違反行為の事業活動を排除・抑制することがより一層期待できるようになりました。

2. 意義

 独禁法に基づく差止請求(法§24)とは、不公正な取引方法によってその利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者が、これにより著しい損害を生じるおそれがあるときに、当該独禁法違反行為を行っている者に対し、その侵害行為の停止又は予防を請求することができる権利のことです。

3. 趣旨
 公取委による独禁法の執行は、公正且つ自由な競争の促進を主眼とし、必ずしも被害者の救済を目的としない面もあり、又、比較的大規模な違反行為を規制の対象としています。
 これに対して、独禁法違犯行為に対して私人による差止請求を認めた趣旨は、先ず被害者の救済を目的とするものであり、又、公正且つ自由な競争を結果として促進し、私人による独禁法の実現(エンフォースメント)を確保することにあります。特にこの差止請求にあっては、不公正な取引方法を対象とした比較的小規模な独禁法違反行為に対しても行使できることが期待されています。

4. 要件

 1)差止請求の主体:不公正な取引方法によりその利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者(被害者)
 2)独占禁止法に定める不公正な取引方法の存在
 (独占禁止法8条1項5号、19条違反行為)
 この点については、原告である被害者がその主張・立証責任を負うこととなります。
 また、この場合被告である独禁法違反行為者の故意・過失は要件ではないと考えられます。
 なお、この不公正な取引方法の存在を認める限り、たとえ加害者側の行為が私的独占やカルテル(不当な取引制限)に該当する場合においても差止請求の行使は可能となるものと思われます。
 3)上記違反行為により著しい損害を生じ、又は生ずるおそれがあること
 この点については、原告である被害者がその主張・立証責任を負うこととなります。「著しい損害」とは、質及び量の観点からその損害が著しいことを意味し、例えば新規参入の阻止や、取引の停止、取引先の選択の自由を奪われる等回復しがたい損害が発生する場合等が考えられます。
 4)上記違反行為と上記著しい損害との間に相当因果関係が存在すること。

5. 効果
 利益を侵害し、又は、そのおそれのある事業者に対して、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
 具体的には、原告は、侵害が生じているときはその侵害の停止を請求し、又、侵害が将来生ずるおそれがあるときはその侵害の予防を請求することができることとなります。
 従って、差止請求の請求内容は、一般的には侵害の停止ないし予防という不作為となります。
 しかし、差止請求における被害者救済の見地から、侵害の停止ないし予防という不作為のみによってはその実効性をあげえない場合には、独禁法違反行為の抑止のため必要な作為を請求することが要請されることがありうるとの見解もあります。

6. 強制執行の内容

 差止請求の判決に基づき強制執行の申立をする場合には、一般的には不作為を命ずる判決の強制執行となると考えられますので、原則的には間接強制ないしは代替執行によるものと考えられます。

7. 仮処分との関係

 差止制度は、著しい損害の発生の継続、又は損害発生の蓋然性がある場合に、認められるものであることから、差止めを求めるにあたっては、仮処分命令の申立てが先行することが多く考えられます。
 この場合には、本案訴訟に比べて極めて迅速に決定が下されることがあります。

8. 担保(83条の2)

 不正の目的による差止請求訴訟が提起されたと考えられる場合、裁判所は、被告(債務者)の申立てにより決定で、相当の担保を立てるべきことを原告(債権者)に命ずることができます。
 これは、被害の救済という差止請求の趣旨を潜脱するような訴訟を防止するための規定です。

9. 裁判所と公正取引委員会との関係(83条の3)

 差止請求訴訟が提起された場合は、裁判所はその旨を公正取引委員会に通知し、当該事件に関する独占禁止法の適用等につき意見を求めることができ、また、公正取引委員会は、裁判所の許可を得て、当該事件に関する独占禁止法の適用等につき意見を述べることができるようになりました。

10. 管轄(84条の2)

 独占禁止法違反行為については、以下の@)A)B)のどの裁判所にも訴えを提起することができます。これは、原告の裁判を受ける利益を確保しつつ(下記@)、一方で、独占禁止法違反行為につき統一的判断を下すことを可能とするため(下記A,B)です。
@) 民事訴訟法第4条(被告の住所地等)及び第5条(不法行為地)により定められる裁判所
A) 東京地方裁判所(常に訴えを提起できます)
B) @)の裁判所の所在地が大阪高等裁判所の管轄区域内(例えば、堺市、京都市、尼崎市など)にある場合→大阪地方裁判所にも訴えを提起できます。
@)の裁判所の所在地が名古屋高等裁判所の管轄区域内(例えば、伊勢市、福井市など)である場合→名古屋地方裁判所にも訴えを提起できます。
 その外、広島、福岡、仙台、札幌、高松についても同様に、各高等裁判所管轄区域内の事案については、当該各地方裁判所へ訴えを提起できます。

11. 実務上のアドバイス

このように、独占禁止法に基づく差止請求により、被害者は、自ら、直接裁判所に対しての不公正な取引方法の差止命令を求めることが可能となりました。「侵害の停止又は予防」の内容については、違反行為の取りやめのほか、違反者に一定の作為まで求めることができるとの見解もあり、後者の見解によれば、差止請求が認められた場合の効果はより大きくなるものといえます。
 ただ、違反行為事実の立証、当該行為の「不公正な取引」該当性、著しい損害の立証等、差し止めを求めるにあたっては、いくつかの要件を充足する必要があり、必ずしも容易とはいえない面もありますが、差止請求の効果が重大であることに鑑みれば、著しい損害が発生している場合の救済手段としては、非常に有用な制度と考えられます。
 また、迅速な被害回復のため、仮処分の申立により、差し止めを求めることも十分に検討に値するものと考えられます。
 この独占禁止法に基づく差止請求の申立にあたっては、当事務所に遠慮なくご相談下さい。

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