御器谷法律事務所

証拠保全手続

1.証拠保全とは
 医療過誤事件においては、カルテ等の証拠の重要性は言うまでもありません。しかしながら、これらの証拠書類の大部分は、医療機関側が保持しており、患者側には診断書や領収書、診察券等があるだけであるという状況が一般的です。
 このような事情から、当該事件が直ちに医療過誤といえるものなのか、そうではないのかを見極めるためにも、これらの医療機関側に偏在するカルテ、看護記録、レントゲン写真等の医療情報を是非とも入手する必要があります。
 ところが、医療機関側からこれらの医療情報が患者側に開示されることは必ずしも多くはなく、また、カルテ等の重要書類の廃棄、紛失、改竄の危険がないとは言い切れないものがあります。また、医療機関側からすでに患者側がカルテ等を入手している場合が考えられますが、実は重要な書類が患者に渡されていないことなどもあり得ることからやはり裁判手続である証拠保全手続を利用し記録を保全することが必要となるでしょう。
 そこで、これらの重要書類を確保するために証拠保全(民事訴訟法235条以下)という裁判手続を行い、証拠を患者側の手元に確保することが極めて重要になると考えられます。
 もちろん、これは裁判手続であり、裁判所との打ち合わせ等も必要となりますので、法律の専門家である弁護士に依頼するべきであります。
 逆に、医療機関の側からしても、証拠保全によって記録が確定されていた方が、事実関係がはっきりし、改竄の主張も否定し易くなることもあり、結局、医療機関の側のためにもなることもあります。
 なお、証拠保全を行うに際しては、裁判所への予納金、申立から証拠保全立会に至るまでの弁護士費用、証拠保全に必要な諸経費(写真代、コピー代等)等少なからぬ額の費用がかかることになります。

2. 保全すべき証拠
 実際に証拠保全の手続において保全するべき重要書類は以下のものが考えられます。
 申立書に例示したうえで、その他一切の記録と記載することになります。これは、文書の名称が異なるなどの理由により、提示を拒否することを防ぐ意味であります。
(1) 診療録、手術録、処置録
(2) 問診票
(3) 看護記録
(4) 医師指示票、医師指示簿
(5) 診断書控え
(6) 処方箋
(7) 医師引継書
(8) 病院日誌、病棟日誌
(9) 解剖記録
(10)レントゲン写真、MRI写真
(11)麻酔記録
(12)諸検査の検査票、写真等
(13)レセプト控え
(14)手術承諾書
(15)その他診療に関しての一切の記録

3. 証拠保全にかかる費用
(1) 弁護士費用
 証拠保全は裁判手続きですので、弁護士費用がかかります。
 当事務所では証拠保全の手続につきましては、弁護士の手数料として原則的には金35万円(税別)とさせていただいております。
 なお、この手数料は証拠保全限りのものですので、記録検討後、相手方病院等との示談交渉の際には別途示談交渉についての着手金がかかることになります。
(2) その他の費用
 また、証拠保全においては業者に依頼して、一件記録をデジタルカメラで写真撮影等をいたしますので、その費用がかかります。かかる費用は事件によって異なりますが、写真が多くなれば、すなわち、一件記録の枚数が多ければ費用も多額になることになります。
 なお、裁判所への申立費用(印紙代等)は別途かかります。

4. 証拠保全後どうすればいいのか
(1) 協力医の意見を聴取する
 証拠保全後に、患者側としてはどのような動きを取ればいいのでしょうか。
 まず、保全した証拠のすべてを協力医に検討してもらい、その意見を聴取することが非常に重要です。さらに、可能であれば複数の協力医の意見を求めるべきです。
 複数の医師の意見を聞くことにより、当該事件の問題点が浮き彫りになるケースが多いのではないかと考えられるからです。
 その結果、協力医が医療機関側に過失を認めることは難しいのではないかとの意見を述べた場合には、弁護士と十分に相談のうえ、訴訟提起した場合の見通し等も踏まえて患者側の態度を決することになります。なお、この場合であっても医療機関側に質問書を送付し、回答を求めることは一つの方法であると考えられます。
 また、協力医の見解が、医療機関側に過失を認めることは可能なのではないかとの意見だった場合には、以下のように質問書を医療機関側に送付し、相手方の対応を見ることになります。
(2) 質問書の医療機関側への送付
 次に、協力医の意見を踏まえて、当該事件における問題点をピックアップした質問書を作成し、医療機関側に送付することが一般的です。
 この患者側からのアプローチに対して医療機関側がどのような対応をするのかによりその後の対処が異なります。
 すなわち、医療機関側の対応が回答しない等であった場合には、自らの弁明の機会を放棄したと考えて、速やかに訴訟提起の方向に進むべきですし、詳細に回答してきた場合でも、その回答を弁護士及び協力医と子細に検討し、医療機関側にさらに説明を求める等の対応をすることになります。
 その上で、弁護士から医療機関側へ連絡し示談交渉を行うことになります。
 示談交渉で解決する場合もありますが、主張の食い違いが大きい場合等、示談での解決が容易とは言い難い場合には速やかに訴訟を提起するべきです。

5. 結論
 このように証拠保全は、患者側の手元にはほとんどない医療記録を入手する非常に有力な方法です。そして、その記録を協力医に検討してもらうことにより、当該事案において、医療機関側がどのような対処をしたのか、それは正解だったのか、不正解だったのか等の問題点が明らかになることも多いのです。
 患者側は、当該医療機関に対し証拠保全手続を行い、当該事件の証拠を入手することが肝要ですし、証拠保全することにより改竄、廃棄、紛失等の危険を未然に防ぐこともできるのです。
 従って、医療事故における患者側は、弁護士に依頼して、速やかに証拠保全手続をとることをお勧めいたします。

 この証拠保全手続につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい

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