御器谷法律事務所

株式交換

1. 株式交換とは、
 株式交換とは、ある株式会社がその発行済株式の全部を他の株式会社又は合同会社に取得させることによって、両会社の間に完全親子会社関係(一方の会社が他方の会社の発行済株式の全部を保有している関係)を形成することをいいます(会社法2条31項)。
 具体的には、完全子会社(発行済株式の全部を他の会社に保有されている会社)となる会社の株主の有する同会社の株式の全部を、完全親会社(他の会社の発行済株式の全部を保有している会社)となる会社が取得し、完全子会社となる会社の株主が、完全親会社となる会社の株式、社債、新株予約権、新株予約権付社債、またはその他の財産の交付を受ける(同法768条1項2号、770条1項3号参照)というものです。
 株式交換は、完全親子会社関係を形成するための制度ですが、単純にある会社が他の会社を完全子会社化する場合に用いられるばかりでなく、複数の会社が1つの持株会社の下にぶら下がるいわゆる経営統合の場合にも用いられます。すなわち、まず、経営統合しようとする複数の会社のうちの1つが、会社を新設分割しその事業の全部を新設会社に移して、分割会社を新設会社の持株会社とし、その後、この持株会社が株式交換によって他の会社を完全子会社化するという手法によって経営統合がなされることがあります。
 株式交換と同様制度に完全親会社となる会社の株式を対価として完全子会社となる会社の株式を取得する制度に、株式移転というものがあります(同法2条32号)。両者の違いは、完全親会社となる会社が、株式交換の場合は既存の会社であるのに対し、株式移転の場合は新設会社であるという点にあります。

2. 株式交換のメリット
 子会社となる会社の株式を取得するためには、株式交換以外にも、市場買付、相対買付、公開買付などによって株主に直接売却を働きかける方法があります。それにも拘らず株式交換を選択するメリットとしては、以下のような点があげられます。
 まず、株式取得の対価としては自社株式などを交付すれば足り、買付のための現金を用意する必要がないということが挙げられます。これによって、十分な資金を有しない会社であっても、買収資金を銀行から借り入れるといった負担をすることなく、他の会社を完全子会社化することが可能となります。
 また、株式交換が実行されると、子会社となる会社の全株主が株式の交換に応じなければならなくなるということが挙げられます。公開買付や市場買付などの場合は、全株主から全株式を取得することは困難であり完全子会社化は事実上不可能であるところ、株式交換によれば、全株式の取得が可能となり、少数株主の意向にかかわらず完全子会社化が可能となります。

3. 株式交換の手続
 まず、完全親子会社関係を形成しようとする会社の間で、株式交換契約を締結します(同法767条)。この契約は、取締役会設置会社では、取締役会決議を経て、代表取締役が、株主総会の承認決議を停止条件として締結します。この契約で定めなければならない事項は法定されています(同法768条、770条)。たとえば、当事会社の商号及び住所(同法768条1項1号、770条1項1号)、対価に関する事項(同法768条1項2号、770条1項2号)株式交換の効力発生日(同法768条1項6号、770条1項6号)などがあります。
 株式の交換比率は、参入市場、事業計画、実績、財政状態、取引の性質などの諸事情を考慮し、株主、会社債権者などのステイクホルダーにも配慮した上で、慎重に決定されます。
 次に、各当事会社は、株式交換契約に関する書面を事前開示します。すなわち、一定の日から株式交換の効力発生日後6ヶ月を経過する日まで、株式交換契約の内容等を記載した書面等を、本店に備え置かなければなりません(同法782条、794条)。
 そして、各当事会社は、株式交換の効力発生日の前日までに株主総会の承認決議を受けます(同法783条、795条1項)。承認決議は、原則として、特別決議(当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上にあたる多数をもってする決議をいいます。)によらなければなりません(同法309条2項12号)。
 また、各当事会社は、株式交換の効力発生日の20日前までに、その株主に対し、株式交換をする旨並びに相手方となる会社の商号及び住所を通知ないし公告します(同法785条、797条)。
 さらに、完全子会社となる会社の株主に交付される対価が、完全親会社となる会社の株式以外のものである場合などには、債権者保護手続を取る必要があります(同法799条1項3号、789条1項3号)。
 以上の手続を経ると、株式交換契約に定められた株式交換の効力発生日(同法768条1項6号、770条1項5号)に、完全親会社となる会社は完全子会社となる会社の発行済株式の全部を取得し(同法769条1項、771条1項)、完全子会社となる会社の株主は完全親会社の株式等を取得する(同法769条3項)ことになります。
 そして、効力発生日後遅滞なく、当事会社は、株式交換により移転した株式数等法務省令で定める事項を記載した書面等を、効力発生日から6ヶ月間本店に備え置かなければなりません。

4. 株式交換制度利用の現状
 株式交換は、完全親会社が完全子会社の株主に対して自社株式を交付する場合には、自社株式の株価が高いほど同会社が有利な比率で株式を交換できます。
 そのため、一部では、株式分割によって自社株式の株価を一時的に上昇させたうえで、有利な比率で株式交換を行うという事例がみられました。このように、株価を上昇させるためには手段を選ばないという企業が出現すると、市場の公正さが阻害される危険が生じます。
 もっとも、このような弊害が生じることが囁かれているにもかかわらず、株式交換制度自体が問題との見方は少なく、制度の普及は進むとみられています。株式交換制度自体は、前述のような大きなメリットがある制度であり、M&Aの手法として重要なものですから、この制度によってM&Aが進み、日本の経済界の効率化が図られることが期待されるでしょう。

 この株式交換につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい

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