御器谷法律事務所

変額保険

1. 概要
 80年代の終わり頃から90年代前半に資産家の方々が相続税対策として銀行、生命保険会社から勧誘され、銀行から保険料の融資を受けて変額保険の契約を生命保険会社と結んではみたものの、バブルがはじけて株価も低迷の一途をたどったことから、保険金や解約返戻金の金額が当初に一括で支払った保険料を大幅に下回る状況になりました。
 この勧誘に際して、保険料の融資先である銀行の責任論が浮上しており、現在、保険会社のみならず銀行をも相手方とした訴訟が多数提起されました。

2. 訴訟
 すなわち、期待した成果が得られなかった資産家の方々は訴訟の中で保険契約及び銀行借り入れと併せて錯誤無効を主張したり、保険会社と銀行の双方に不法行為に基づく損害賠償を請求したりするようになってきました。
 このような状況の中で、銀行の責任を認める判決も数は大変少ないながらも見いだされるようになってきております。
 訴訟において特徴的なのは、銀行と生命保険会社の一体性です。
 つまり、資産家の方々としては、そもそもきっかけは銀行から話があったことであり、また銀行からの融資の申し入れがなければ変額保険契約をすることもなかったことから、両者は不可分一体であるし、共同して勧誘したのだから共同の違法行為があったのだと主張されているものと考えられます。

3. 結論
 もしも、現在、ご自身、ご親族が変額保険に加入されていて、銀行から融資の返済を迫られているような場合や、追加担保の差し入れを要求されている場合、または、変額保険に加入して守ろうとしていた不動産の任意売却を迫られている場合等お困りの場合には、ご自身のみで対応されることなく法律の専門家である弁護士にご相談され、ご対応を考えることをお勧めいたします。

4. 裁判例

東京高等裁判所平成15年12月10日判決
(1)上記二の認定事実によれば、戊田部長は、本件変額保険が被控訴人日本生命によるその特別勘定における株式投資等の資産運用の結果が変動保険金や解約返戻金の額に直結するリスクを含み、これを契約者に負わせる保険商品であり、かつ、戊田部長自身の作成に係る私製資料「ニューライフを創造する知的戦略」で想定する銀行からの一時払い保険料の払込資金等の融資受入れと一体として契約する本件変額保険に加入する方法による相続税対策ではAプランもBプランも相応のハイリターンが見込まれる反面、資産運用の利回りが見込みを下回る低利回りとなり、これが続く場合は多額の銀行からの借入金の元利金が増え続け、変動保険金又は解約返戻金が銀行からの借入元利金の累積額を大幅に下回り、この借入元利金を直ちに一括返済する自己資金の用意がないと銀行の担保権が実行されるのを防ぐことができず、所期の相続税対策が全く効果を収め得ないどころか相続税対策を講じてまで保全しようとした不動産を含めその資産をすべて失ってしまうという深刻な結果を招くハイリスクを伴うものであったにもかかわらず、相続税対策を講じるべきかどうかを深刻に検討していた亡花子及び控訴人一郎に対し、本件変額保険の正規のパンフレットや「ご契約のしおり」に記載されている本件変額保険の仕組みについての説明をするに止めないで、その説明の外にその説明の趣旨をかえって誤解させるような不確かな判断材料やこれに基づく断定的な判断を記載した私製資料を示して、被控訴人日本生命の運用のプロが年八ないし九パーセントという高い利回り実績を上げており、このような運用のプロが行う本件変額保険の特別勘定の運用益は右肩上がりであって銀行からの借入利息を上回るので亡花子は「自己資金を支払う必要がなく」、また「資金○で」運用益と借入金との差額を取得することができ、死亡保険金やこの差額によって相続税も支払えるなどと説明して、その相続税対策のスキームによるのが他の方法に比べ最も良い方法であると雄弁に説明し、何ら上記のようなリスクやハイリスクについては説明をしなかったものであり、亡花子及び控訴人一郎がこれによりそのようなハイリターンに眼を奪われ、かつ、そのようなリスクやハイリスクがあることについて判断を誤らさせられたものと認められるから、戊田部長の上記のような勧誘は、ハイリターン・ハイリスクの保険商品である本件変額保険の勧誘について条理上認められる説明義務に違反し、亡花子及び控訴人一郎に対し、そのハイリスクについての判断を誤らさせて損害を被らせる不法行為を構成するものと認めるのが相当である。
 これに対し、被控訴人日本生命は、戊田部長は、当時の一般的な認識を前提にした将来の経済状況に関する私見を述べたにすぎず、断定的な判断を下したとか、不当な予測を述べたとは評価できないものであり、亡花子及び控訴人一郎は、平成元年の経済状態から将来にわたり株価が高騰し、借入金利を上回る運用を期待できるものと自ら予測・期待して本件変額保険に加入したのであり、戊田部長には、説明義務の違反は成立しない旨主張するが、戊田部長自身の作成に係る私製資料「ニューライフを創造する知的戦略」で想定する銀行からの一時払い保険料の払込資金等の融資受入れと一体として契約する本件変額保険に加入する方法による相続税対策は、戊田部長が昭和六一年一〇月一日に変額保険販売員資格を取得した後に昭和六三年ころから本件変額保険加入の勧誘の際に説明方法として日頃から用いてきたスキームであり、これと合わせて戊田部長が説明する被控訴人日本生命のそれまでの運用実績の高い利回りと今後の運用益の高い見込みは、戊田部長による本件変額保険加入の勧誘の主要な材料であったと認められ、戊田部長が単に従来の経済状況に関する私見を述べたにすぎないなどと解することはできないから、被控訴人日本生命のこの点の主張は、採用することができない。
(2)戊田部長の上記の不法行為は、戊田部長が被控訴人日本生命の事業の執行につきなしたものであることは明らかであるから、被控訴人日本生命は、戊田部長の不法行為により亡花子及び控訴人一郎が被った損害について、民法七一五条に基づく使用者責任としてその賠償義務を負うものといわなければならない。

2 被控訴人銀行の乙山支店長、丙川代理、丁原推進役らの不法行為(社会的相当性を逸脱した違法な勧誘)の成否について
(1)上記二の認定事実によれば、被控訴人銀行の乙山支店長、丙川代理、丁原推進役らは、青山通支店開設準備業務である同支店の顧客開拓の方法として、亡花子及び控訴人一郎に対し、次の行為、すなわち、
1)丙川代理においては、亡花子方への戸別訪問を重ねるまでして、亡花子の資産の保有状況に立ち入り、亡花子に対し、「先行き、相続の点でお困りになることがあり得ますね」と指摘し、このまま何もしなければ相続税が多額に上る旨述べ、亡花子をして後に残される子の控訴人一郎らの大きな負担となるべき相続税に対する不安を抱かせて、相続税対策としての資産運用と被控訴人銀行からの融資受け入れの方向に動機付けをし、
2)丁原推進役においては、被控訴人銀行の専門的な担当者の立場を示して信頼させた上、亡花子の相続税がその当時の価額ではその税額が多くても一億二〇〇〇万円から一億三〇〇〇万円であるのにもかかわらずこれが三億円近い税額になると過大な数字を出して説明し、亡花子及び控訴人一郎をして相続税対策を講じる大きな必要性があると誤信させ、
3)丙川代理及び乙山支店長においては、かねて戊田部長から説明を受けていた戊田部長の融資一体型で本件変額保険に加入する方法による相続税対策について、戊田部長から要請を受けていたように戊田部長に亡花子を紹介することを通じて、戊田部長が自ら亡花子及び控訴人一郎に対し説明し勧誘する機会を設け、かつ、その戊田部長の説明と勧誘を介してその相続税対策の実行上不可欠な一時払い保険料の払込資金及びその貸し増し利息の支払資金の調達につき亡花子及び控訴人一郎に被控訴人銀行から融資を受け入れさせようとし、戊田部長が、融資一体型で本件変額保険に加入する方法による相続税対策を講じるには自己資金を支払う必要がなく、自己資金○で運用益と銀行借入金との差額を取得することができる旨を説明した際には、これに同席し、被控訴人銀行が当座貸越契約という形態で億単位となると予想される枠を取って本件変額保険の一時払い保険料の払込資金及び貸し増しの利息の支払資金を用立てすること及びそのための担保も亡花子の不動産で足りることを説明し、亡花子及び控訴人一郎をして一流銀行である被控訴人銀行が億単位の融資をすることを申し出ることによって被控訴人日本生命とともに融資一体型で本件変額保険に加入する方法による相続税対策を勧誘していると誤信させ、さらに、
4)丙川代理及び乙山支店長においては、上記の当座貸越契約については、これが法人など事業者に対する銀行取引の方法であり事業者ではない亡花子の場合にはこれを流用することになるのに、亡花子及び控訴人一郎に対しては、上記の用立てををすることの説明をした際には、亡花子及び控訴人一郎の融資一体型で本件変額保険に加入する方法による相続税対策を講じるかどうかの判断をするに不可欠な、その当座貸越契約により融資する一時払い保険料の払込資金の貸付金の弁済期、利息の利率、利息の支払資金の弁済期、この貸付金についての利息の有無等の当該当座貸越契約による融資に係る弁済条件について何ら説明をしないで上記のような用立ての申し出をした
などの行為をそれぞれしたものと認められるところ、乙山支店長らのこのような行為は、被控訴人銀行の銀行としての公共性及び金融機関としての専門性に照らすと、社会的相当性を逸脱する違法なものというべきである、
(2)乙山支店長、丙川代理、丁原推進役らの被控訴人銀行の担当者の上記の不法行為は、これらの担当者が被控訴人銀行の事業の執行につきなしたものであるから、被控訴人銀行は、これらの担当者の不法行為により亡花子及び控訴人一郎が被った損害について、民法七一五条に基づく使用者責任としてその賠償義務を負うものといわなければならない。
  (但し、結果としては時効の成立により損害賠償請求は否定)

 この変額保険につきましても、遠慮なく当事務所にご相談下さい


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