御器谷法律事務所

日栄との保証契約が無効とされた事例

商工ローン融資の限度根保証契約が法律行為の重要な部分に錯誤がありかつ保証人に重大な過失はないとして要素の錯誤があり無効であるとされた事例
高松高裁平成11年11月18日判決

1 事例

 甲が乙との間でなした主債務者B産業、保証限度額1,000万円の根保証契約に基づき乙に対し債務不存在確認請求をなし、乙が甲に対し、本件保証契約に基づき保証債務の履行としてB産業に対する貸付残元本557万円及び遅延損害金の反訴請求をなした事件

2 論点

(1) 限度額1,000万円の根保証契約自体の成否
(2) 200万を超える部分は錯誤無効(表示された動機の錯誤)
(3) 既貸し付け分返済後も貸し付けを継続拡大してこれを甲に請求するのは信義則違反

3 原審判決

 契約に際して相手方に適切な判断をさせるために行われるべき説明を怠り、信義に従って誠実に交渉を行うべき義務に違反したとして乙の請求は信義則に反し許されないとした。

4 本判決(高松高裁)

 被控訴人は、B産業が控訴人に対し本件取引契約に基づき平成8年12月10日から平成11年12月31日までの間の全ての取引及び契約日(平成8年12月10日)現在において負担する債務を、極度額1,000万円の範囲で連帯保証するとの意思表示をしたものではあるが、B産業代表者は、本件保証契約を締結する前日、被控訴人に対して、実際には本件取引契約に基づき550万円の既存債務を負っているにもかかわらず、これを秘し、控訴人から金員を借り入れるのは今回が初めてであり、借り受けるのは200万円だけである、今後、控訴人から借り受けることはないとの虚偽の説明をし、その場にいて右説明を聞いた日栄担当者も、B産業代表者の虚偽の説明を否定しなかったばかりか、今回控訴人がB産業に200万円を貸し付けることを告げた上、貸し付け金額(保証金額)を200万円とする公正証書作成嘱託の委任状を示し、これに署名捺印を求めるなど、保証の対象が本件200万円貸金のみであるとの誤信を助長するような言動に出ているのである。従って、同日の時点において、被控訴人が本件保証契約が本件200万円のみを対象としたものであると誤信したことは当然のことであると言わなければならない。

 そして、被控訴人は、その翌日、日栄担当者から保証契約書に、前記保証期間及び保証限度額金1,000万円と記載するよう求められた際、右記載に不審を感じて日栄担当者に確認したところ、同人から「一応1,000万円の枠ですので、書いてください」と言われ、前日に受けたB産業代表者及び日栄担当者の説明と併せて、貸付枠(保証枠)が1,000万円とされていても、保証の対象はあくまでも右200万円のみであって、将来、控訴人から右200万円以外の貸し付けがされたとしても、被控訴人の了解がない限り、これにつき保証の責めをおうものではないと理解したものと言うべきである。従って、右保証契約書の記載内容どおりの被控訴人の意思表示は、その重要な部分で被控訴人の真意とは合致しないものであることが明らかである。

 前記認定の本件保証契約締結の経緯に徴すると、被控訴人は、日榮担当者に対し、200万円について保証するものである旨を表明した上、日榮担当者が保証債務限度額欄への記入を求めたことについて釈明を求めており、これに対し、日榮担当者は1,000万円は単なる貸付枠にすぎないという程度の説明に止め、被控訴人が疑問を呈したにもかかわらず、詳細な説明を避けて、被控訴人の誤信を招いたと言うべきであるから、被控訴人が前記のとおり錯誤に陥ったことにつき重大な過失があったとは言えないというべきである。
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