御器谷法律事務所
抵当不動産の賃借人が取得する転貸賃料債権について、抵当権者が物上代位権を行使することはできない。
最高裁判所平成12年4月14日第2小法廷決定

1 事案の概要
Xは、昭和63年6月21日、甲との間で、甲の乙銀行に対する債務につき保証委託契約を締結し、同年10月21日に甲とその妻らとの間で、上記保証委託契約に基づき発生するXの甲に対する求償債権を被担保債権として甲ら共有の本件建物に根抵当権を設定し登記した。
Xは平成9年10月28日、上記保証委託契約に基づき、甲の乙に対する債務を弁済し、甲に対しては同額の求償債権を取得した。
丙は平成9年10月28日、甲らから本件建物を買い受け、同月31日、Yにサブリース目的で本件建物を転貸した。
Yは、第三債務者丁らに対し本件建物の部屋を賃貸した。
Xは根抵当権に基づく物上代位権の行使として、横浜地裁川崎支部にYの丁らに対する転貸賃料債権の仮差押命令を申立て、同裁判所は平成10年9月16日、債権仮差押命令を発した。
Yは上記債権仮差押命令に対し、執行抗告をしたが、原審は抗告を棄却した。そこで、Yは抗告棄却決定に対し許可抗告をした。

2 本決定
民法372条によって抵当権に準用される同法304条1項に規定する「債務者」には、原則として抵当不動産の賃借人(転借人)は含まれないものと解すべきである。
けだし、所有者は被担保債権の履行について抵当不動産を持って物的責任を負担するものであるのに対し、抵当不動産の賃借人は、このような責任を負担するものではなく、自己に属する債権を被担保債権の弁済に供される立場にないからである。同項の文言に照らしても、これを「債務者」に含めることはできない。
また、転貸賃料債権を物上代位の目的とすることができるものとすると、正常な取引により成立した抵当不動産の転貸関係における賃借人(転貸人)の利益を不当に害することにもなる。
もっとも、所有者の取得すべき賃料を減少させ、又は、抵当権の行使を妨げるために、法人格を濫用し、又は、賃貸借を仮装したうえで、転貸借関係を作出したものであるなど、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合には、その賃借人が取得すべき転貸賃料債権に対して抵当権に基づく物上代位権を行使することを許すべきものである。
以上のとおり、抵当権者は、抵当不動産の賃借人を所有者と同視するべき場合を除き、賃借人が取得するべき転貸賃料債権について物上代位することはできない。

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