御器谷法律事務所
夫婦同居の義務
妻が夫との同居を拒否する正当な理由はないとして、別居中の夫婦において、夫の妻にする同居を命ずる審判の申立が認められた事例
東京高等裁判所平成12年5月22日決定

1.事案の概要
 X (夫、申立人、抗告人)
 Y (妻、相手方、被抗告人)
 X と Y は昭和63年に結婚し、平成元年長女が誕生した。
 平成11年2月19日、Y が長女を連れ家を出て X の住居から10分程度の場所にあるアパートに転居し、以来、別居中である。なお、X は Y に対し、生活費を払い続けている。

2.原審(横浜家裁)
 Y との同居を求める X の申立に対し、夫婦共同生活体を維持することは困難であるとして却下した。

3.本決定
(1)結論(主文)
  1.原審判を取り消す。
  2.被抗告人は、抗告人の肩書住所において抗告人と同居せよ。

(2)理由
 民法752条は、夫婦は同居し、互いに協力し、扶助しなければならないと規定しているところ、夫婦の同居は、夫婦共同生活における本質的な義務であり、夫婦関係の実をあげるために欠くことのできないものであるから、同居を拒否する正当な事由がない限り、夫婦の一方は他の一方に対し、同居の審判をもとめることができると解すべきである。
 これを本件についてみると、被抗告人は、婚姻後、抗告人の言動を嫌悪していたものであり、現時点において抗告人と同居する意思はない旨を明言しているところ、抗告人において自己の言動を反省し、被抗告人の心情を理解しようとする姿勢が欠けていたことは明らかであり、結局、そのことが被抗告人の家出、別居の大きな原因であったということができる。しかし、抗告人の側に暴力等の非行は全くなく、被抗告人が嫌悪する抗告人の身勝手な言動というのは抽象的であり、具体的なエピソードとして被抗告人が指摘する点も、個別的にみれば夫婦間に深刻な影響を生じさせるようなものとは認めがたいし、抗告人において是正することも不可能なことではない。また、抗告人は、旅行や帰省に関する被抗告人の希望を聞き入れるなど、自分なりに家庭を崩壊させないように努めてきており、同居中はもちろん、別居後も被抗告人に生活費を送金している。
 以上の認定に加え、別居期間がそれほど長期に及んでいないことも考慮すると、抗告人と被抗告人との婚姻関係は、いまだ回復することができない程度に破綻しているということはできないし、被抗告人が抗告人の肩書住所で抗告人と同居することの障害となるような顕著な事情を見いだすこともできない。
 以上によれば、被抗告人において、抗告人の肩書住所で抗告人と同居することを拒否する正当な事由があると認めることはできないから、抗告人は、被抗告人に対し、同居の審判をもとめることができると解するのが相当である。
 事案の性質、審理の状況に鑑みると、当裁判所は、自ら事件について審判に代わる裁判をするのが相当であると認めるので、家事審判規則第19条2項の規定に基づき、被抗告人に対し、抗告人の肩書住所において抗告人と同居することを命じることとして、主文のとおり決定する。

4.強制執行の可否
 なお、本件においては審判が下されたとしても、一般的には同居については直接にも間接にも強制することはできないものとされています。
 ただ、決定に基づき家庭裁判所より履行勧告等を妻に対して行うことは可能であるものと考えられます。

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