御器谷法律事務所

大和銀行株主代表訴訟、第一審判決

大和銀行ニューヨーク支店で行員が簿外取引で約11億ドルの損失を与えた事件につき、当時の同行ニューヨーク支店長や頭取ら取締役に対し総額約829億円の賠償が命じられた株主代表訴訟
大阪地方裁判所 平成12年9月20日判決

判旨のポイント(抜粋)

(1)取締役としての任務懈怠について
 店内検査及び内部監査担当者による監査は、ニューヨーク支店長の指揮の下実施されるのであるから、取締役が支店長を務めている場合には、同支店長が業務担当取締役としてあるいは使用人兼務取締役として、財務省証券の保管残高の確認方法が適切さを欠いていたことにつき、任務懈怠の責めを負う。

(2)法令遵守経営について
 取締役は、会社経営を行うに当たり、株主利益の最大化を究極の目的としつつも、目的達成の過程では、須く、法令を遵守することが求められているのであり、法令遵守は、会社経営の基本である。商法266条1項5号は、取締役に対し、我が国の法令に遵うことを求めているだけでなく、外国に支店、駐在事務所等の拠点を設けるなどして、事業を海外に展開するに当たっては、その国の法令に遵うこともまた求めている。

(3)取締役の善管注意義務及び忠実義務違反について
 本件無断取引及び無断売却の事実を知りながら、米国当局に対する届出を行わなかったものである。また、FRBに対し虚偽の内容のコール・レポートを提出したり、ニューヨーク支店の帳簿と記録に虚偽の記載をすること等についても、明示ないし黙示の指示又は了解を与えていたか、又は、少なくとも、未然に防止しなかったことにつき、指揮系統の上位者としての監督責任を負う。そして、本件訴因1ないし7に係わる行為は米国連邦法典違反の行為であり、取締役の善管注意義務及び忠実義務に違反したことになる。

(4)経営判断の原則との関係について
 取締役に対し、過去の経営上の措置が善管注意義務及び忠実義務に違背するとしてその責任を追求するためには、その経営上の措置を執った時点において、取締役の判断の前提となった事実の認識に重要かつ不注意な誤りがあったか、あるいは、その意思決定の過程、内容が企業経営者として特に不合理、不適切なものであったことを要するものと解するのが相当である。もっとも、このように、取締役には広い裁量が与えられているが、前判示のとおり、取締役は、会社経営を行うに当たり、外国法令を含む法令を遵守することが求められているのであり、取締役に与えられた裁量も法令に違反しない限りにおいてのものであって、取締役に対し、外国法令を含む法令に遵うか否かの裁量が与えられているものではない。

(5)損害賠償額の算定について
 ニューヨーク支店担当の業務担当取締役あるいは使用人兼務取締役として、財務省証券の保管残高の確認を極めて不適切な方法で行い、また適切な方法に改めなかった点において、任務懈怠の責めを負うのであるから、ニューヨーク支店長に就任した時点で既に発生していた損害については賠償義務を負うものではない。そして、同被告がニューヨーク支店長に就任したのは昭和62年10月であり、証拠上認定できる、本件無断取引及び無断売却による就任後の時点における損害は、平成元年当時の約5億7,000万ドルである。したがって、同被告は、控えめに見て、総損害額である約11億ドルから約5億7,000万ドルを控除した5億3,000万ドル相当額の損害について賠償義務を負うものと認める。
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