御器谷法律事務所
敷金返還請求権と賃料との相殺の可否
賃貸人会社が更生手続開始決定を受けた場合、賃借人が将来発生する敷金返還請求権を自働債権とし賃料債権を受働債権とする相殺はできない
東京地方裁判所平成12年10月16日判決

1.事案の概要

 甲は、乙所有の7階建ての建物を借り上げ、これをテナントに賃貸するといういわゆるサブリース業を営んでいた。甲は、Y に対し、本件建物の2階から4階部分を賃料、共益費合計月約287万円余、敷金1902万7200円で賃貸していた。
 ところが、甲は、平成12年5月12日、会社更生開始決定を受けてしまい、X1 と X2 が管財人に選任された。X らは、Y が平成12年3月分以降の賃料等を滞納していたため、、同月分から同年6月分までの賃料合計金1148万円余及びこれに対する遅延損害金の支払を求めて訴えを提起した。
 これに対し、Y は、会社更生法162条ただし書きにより、敷金返還請求権と賃料債権の相殺を主張した。

2.判決

(1)結論:請求認容

(2)理由:敷金は、未払の賃料債務や賃貸借契約の終了に基づく原状回復義務から生じる債務の他、目的物の明渡義務履行までに生じる賃料相当損害金支払義務等賃貸借契約により賃借人が賃貸人に対して負担する一切の債務を担保するために授受されるものであり、敷金返還請求権は、賃貸借契約終了後、目的物の明渡完了のときにおいて、それまでに生じた右のような被担保債権を控除し、なお残額がある場合に、その残額について具体的に発生するものであって(最高裁昭和48.2.2)停止条件付債権であると解される。
 そして、更生債権者が更生手続開始当時会社に対して債務を負担する場合において、更生債権者に相殺が認められるのは、債権及び債務の双方が更生債権及び更生担保権の届け出期間の満了前に相殺適状にある場合に限られるところ(法162条1項)、停止条件付債権は未だ債権として現実化していないから、条件成就前にこれを自動債権とする相殺は許されないものと解するのが相当である。

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