御器谷法律事務所
貸出稟議書は文書提出命令の対象とならない
信用金庫の会員が、理事に対し十分な担保を徴しないで融資を行い損害を与えたと主張して損害賠償を求める会員代表訴訟において、融資に際して作成された貸出稟議書及び意見書につき申し立てた文書提出命令につき、民事訴訟法第 220条 4号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たり、特段の事情があるということはできない、として申し立てが却下された。
最高裁判所平成12年12月14日決定

判決要旨
信用金庫の貸出稟議書は、特段の事由がない限り、民訴法 220条 4号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たると解すべきであり、右にいう特段の事情とは、文書提出命令の申立人がその対象である貸出稟議書の利用関係において所持者である信用金庫と同一視することができる立場に立つ場合をいうものと解される。信用金庫の会員は、理事に対し、定款、会員名簿、総会議事録、理事会議事録、業務報告書、貸借対照表、損益計算書、剰余金処分案、損失処理案、附属明細書及び監査報告書の閲覧又は謄写を求めることができるが(法 36条 4項、37条 9項)、会計の帳簿・書類の閲覧又は謄写を求めることはできないのであり、会員に対する信用金庫の書類の開示範囲は限定されている。そして、信用金庫の会員は、所定の要件を満たし所定の手続を経たときは、会員代表訴訟を提起することができるが(法 39条、商法 267条)、会員代表訴訟は、会員が会員としての地位に基づいて理事の信用金庫に対する責任を追及することを許容するものにすぎず、会員として閲覧、謄写することができない書類を信用金庫と同一の立場で利用する地位を付与するものではないから、会員代表訴訟を提起した会員は、信用金庫が所持する文書の利用関係において信用金庫と同一視することができる立場に立つものではない。そうすると、会員代表訴訟において会員から信用金庫の所持する貸出稟議書につき文書提出命令の申立てがなされたからといって、特段の事情があるということはできないものと解するのがするのが相当である。したがって、本件各文書は、「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たるというべきであり、本件文書につき、抗告人に対し民訴法 220条 4号に基づく提出義務を認めることはできない。また、本件各文書が、「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たると解される以上、民訴法 220条 3号後段の文書に該当しないことはいうまでもないところである。

参考判例−最高裁判所平成 11年 11月 12日決定
銀行の貸出稟議書は特段の事情のない限り、自己利用文書に当たり、文書提出命令の対象とならない。


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