御器谷法律事務所
最先順位の抵当権者に対抗することができる賃借権者が該不動産に設定された抵当権の債務者である場合に引渡命令を発することができるか
最高裁判所平成13年1月25日第3小法廷決定

1. 結論

抗告棄却(引渡命令の申立を却下した原審の判断を是認)

2. 理由

執行裁判所は、最先順位の抵当権を有するものに対抗することができる賃借権により不動産を占有する者に対しては、この占有者が当該不動産に自己の債務を担保するために抵当権の設定をうけ、当該抵当権の実行として競売の開始決定(二重開始決定を含む)がされていた場合を除き、引渡命令を発することができないと解するのが相当である。その理由は以下のとおりである。

最先順位の抵当権を有するものに対抗することができる賃借権により不動産を占有する者であっても、当該不動産が自らの債務の担保に供され、その債務の不履行により当該抵当不動産の売却代金からこの債務の弁済がされるべき事情がある場合には、その賃借権を主張することは、当該抵当不動産の売却を困難とさせ又は売却価額の低下を生じさせて、当該抵当権者及び担保を提供した所有者の利益を害することになるから信義則に反し許されないというべきであり、かかる占有者は、当該不動産の競売による買受人に対してその賃借権をもって対抗することができないと解するのが相当である。当該抵当権の実行としての競売の開始決定がされている時は、その債務不履行の事実は民事執行法八三条一項但書にいう「事件の記録上」明らかであるから、執行手続上もその賃借権を主張することが許されない場合に該当するといえる。しかし、当該抵当権の実行としての競売開始決定がされていない場合には、執行事件の記録上は、その債務不履行の事実が明らかということはできす、当該占有は買受人に対抗することができる賃借権によるものというべきである。

本件においては、執行事件の記録によれば、相手方が最先順位の抵当権に優先する賃借権によって本件建物を占有しており、相手方が本件建物に自己の債務を担保するために抵当権の設定を受けていたものの、この抵当権に基づく競売開始決定はされていなかったというのであるから、引渡命令を発することができる場合に該当するということはできず、本件建物の競売による買受人である抗告人の相手方に対する引渡命令の申立を却下した原審の判断は、是認することができる。


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