御器谷法律事務所
貸金業法17条

(1) 貸金業法17条 1項の「契約の内容を明らかにする書面」は、原則として、1通の書面でなければならない

(2) 期限の利益喪失約款がある場合でも、債権者が宥恕していたと認められる事情がある場合は、あらためて期限の利益を喪失させる旨の意思表示をしなければ遅延損害金は発生しないとみるのが相当である、とされた事案
平成13年1月25日東京高等裁判所判決

《事案の概要》
原告(被控訴人)が、被告(控訴人:貸金業者)に対して、利息制限法所定の制限利息を超える約定利息部分は元本に充当されるべきであるとして、過払い金の返還を求めたのに対し、被告が貸金業法43条 1項のみなし弁済の適用を主張した事案。

《本判決の判断》

争点 1
貸金業法43条 1項が掲げる同法17条の書面(「契約の内容を明らかにする書面」)は 1通の書面でなければならないか。

(原則)貸金業法17条 1項の書面については、1通の書面により同条項所定の事項のすべてが記載されるべきである。
  ∵ 同条項の趣旨:成立した契約内容を明確にし、債務者に正確に認識させるため。
  cf. 原審 1通の書面によって、貸金業法17条 1項の事項すべてを記載すべき
   
(例外)複数の書面による場合には、基礎となる書面に記載のない貸金業法17条 1項所定の事項が、他のいかなる書面によって補完されるのかが明確にされていれば、同条項の書面の交付があったと認められる。

 本件では、各書面の記載から相互の補完関係が明らかとはいえず、したがって、17条 1項書面を交付したことにはならない(例外要件を厳格に解釈)。

争点 2
期限の利益喪失約款があり、その要件を満たす事由が生じた後、遅延損害金を請求するなどしなかった場合に、同損害金はいつの時点から発生するか。
  
 債務者が数回にわたり履行遅滞に陥ったにもかかわらず、債権者が遅延損害金を請求するなどしなかったという本件の事情からは、債権者は、債務者が利息の支払いを怠っても直ちに期限の利益を喪失したとして残元金の返済を求めたり、遅延損害金の請求をするという意思を有していなかったものと認められる。

 債権者は期限の利益の喪失につき、宥恕していたものと認めるのが相当である。
 したがって、あらためて債権者が債務者に対し、期限の利益を喪失させる旨の意思表示をしない限り遅延損害金は発生しないものと見るのが相当である。


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